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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第六章 New class
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第72話 多勢に無勢

一部にwikipediaを引用しました。

「申し遅れた。我が名はアリストクレス。アリストクレス・サンジェルマンだ」


男は改めてそう名乗った。


「私はヘルメス・トリスメギストスよ」


変態がそう名乗ると久保は「なっ」と声を上げた。


「ヘルメス・トリスメギストスだと……ヘルメス文書もんじょの著者を名乗るとは豪儀な」


「ヘルメス文書については触れないで!」


ヘルメスさんは妙に涙目になっているけどヘルメス文章って何?

義姉さんの話によると神秘主義的な古代思想の文献ということらしいけどよく分からない。


「占星術とか太陽崇拝とかいろんなものがまじりあって結構難解な内容になっているんだよねえ。あれを一口で説明するとそう言う抽象的な説明になっちまうのさ」


「黒歴史!あれは暇つぶしに書いた黒歴史!サンジェルマン様がたわむれに人間のふりをしていた時レスリングの師匠にプラトンと名付けられそれが定着しちゃったのと同じくらいの黒歴史なの!」


「ヘルメス・トリスメギストス。ギリシャ神話のヘルメスより自分の方が3倍偉いと言うペンネームは確かに厨二病っぽいよね」


「ほっといてよお!私にも名前が……本当の名前があったのにサンジェルマン様がヘルメス・トリスメギストスとしか呼ばないから自分の名前忘れちゃったんですよお」


それはきついなあ。フィーア先生の魂をいじったということはサンジェルマンは最低でも800万年生きているしこの人もそのぐらい生きててもおかしくない。

となれば唯一の相方がそうとしか呼ばなければ忘れるのも仕方ないだろう。私だってそんな気の遠くなるような長い時間ずっとそう呼ばれ続けたら自分の名前を忘れそうだ。

フィーア先生はこほんと咳払いをするとサンジェルマンを指さした。


「シェリダーを復活させたのはお前か。サンジェルマン」


「そうだと言えばどうする」


「魔王をこの世に復活させるなんて何を考えている!サンジェルマン!」


『お前が言うな!!』


私と兄さんと義姉さんの心が一つになった。あんた、自分が何をやったか忘れてない?

私たち以外にそのことを知る礼志君はと言えばヘルメスにビビッて私を盾にしている。


「何だフィーア・アリオン。お前も魔王を復活させようとしていたんじゃないか」


「若気の至りさ」


「あれから1年も経ってはいないが」


何だろう。黒幕が現れたって言うのに何かこう今一つ緊張感に欠ける。


「魔砲『グラビトンカノン』」


フィーア先生はサンジェルマンに魔法を放つも「へぶし!?」と吹き飛んだのはヘルメス。


「ちょ……」


「……!!全員、サンジェルマンを集中攻撃!」


一瞬ためらったが神聖波動をこめ、全員でサンジェルマンを袋叩きにするも彼は全くもって涼しい顔。

その代りヘルメスは小さく悲鳴を上げながらぼろ雑巾のように吹き飛んでいく。


「これで確信が持てた。お前、あやつに代償のルーンを刻んだな」


「ルーン?」


「ケルト神話に登場する魔法だ。あれはどちらかと言うとゲッシュだと思うが」


翔がその話をすると優一君はぴくぴくしてるヘルメスの頭をわしづかむとあさっての方向に投げた。

だがそれが彼の機転だと分かったのは「あ~れ~」と飛んで行った先で彼女の体が一本の槍に貫かれたためだ。


「楯があるなら矛もある。でなければおかしい」


「成程。是非もない」


そう言ったのはサンジェルマンでもなければヘルメスでもない。言うなれば化け物。

あごは頭くらいの大きさがあり、額から光線を発している。両目の間には瞳が七つ。左目は頭の内側に入り、右目は外側へ飛び出していた。手足の指は七本あり、両頬には黄・緑・赤・青の筋が浮かんでいる。電流のように逆立った髪は根本では黒いものの先端に向かうほど赤く変色し、そこから血が滴るほどの恐ろしい形相をした男。その名は。


「来たか。クーフーリン」


「ひっ」


礼志君。とうとう失禁しちゃったねえ。うん分かるよ。私もちょっとちびったし。


「サンジェルマン卿。まさかとは思うがこの子供たちと戦えなんて言うんじゃねえだろうな」


「そのまさかだ。彼らには魔王を消滅する力がある。それでは神を降臨することができない」


「いいだろう。だが俺には犬は殺せん。それ以外は……」


「私が相手だ」


そう言って前に立ったのは義姉さんだった。

無茶だ。相手は太陽神の御子だぞと久保は叫ぶも義姉さんは涼しい顔をしている。


「気になることがある」


「何だ娘」


「あんたがさっき放ったゲイボルグ。あれは偽物だね」


「ほう」


義姉さんはモーニングスターの形に発現した神聖波動を具現させるとクー・フーリンに向かって構えた。

義姉さんによるとゲイ・ボルグは投げれば30のやじりとなって降り注ぎ、突けば30のとげとなって破裂するらしい。

それなのにヘルメスを貫いた槍はあくまで一本の槍だった。ならば答えは簡単。


「あんた、形代だね」


「この俺が形代だと?笑止!」


クーフーリンはそう言って笑いながら槍を振りかざすもスピードは義姉さんの方が早い。

彼の周囲を旋回しながらそれを叩きつけた。


「秘技・アイアンメイデン」


クー・フーリンがいたところにあったのは何かの文字が書かれた木の人形だったもの。

どうやら木の人形に魔力をこめてあの化け物を出していたらしい。今までの時間を返して。

見るとサンジェルマンとヘルメスははるか向こうに逃げ去っていた。


「待てこら!」


そんな彼らを追いかけているのはケンタウロスの優一君とウェアライオンの涼介。そしてウェアグリフォンのヴィンセント君だ。

あれ?礼志君がいない?


「うわあああ!?」


ヴィンセント君が礼志君を空からヘルメスに向かって投げた。

何やってんの!?


「この子、さっき失禁して……10歳以下だからいっか♡」


受け入れたよこの変態。でも礼志君の体がヘルメスに触れる前に後ろに回っていたヴィンセント君がジャーマンスープレックスを決め、礼志君は地面に叩きつけられることなく涼介がキャッチ。

サンジェルマンは優一君が彼の体に飛び乗って動きを封じた。上半身が人間で下半身が馬である彼の体重は500kg近い。痛みを感じなくても重さは感じるはずだ。

こうしてバカ二人を捕まえることができた。

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