第66話 神聖波動で新設クラス
【オルテガ視点】
「久しぶりじゃの」
そう言って現れたのは着物を着た幼女。誰だっけこいつ。
「日常が充実しているようで大変結構じゃの。誰がお主を生き返らせたと思うておる」
「冗談だよ。で?まだお迎えには早すぎるだろ?」
「わしはそんな下っ端ではない。神託に来たんじゃ」
神のお告げってやつか。こいつがこのタイミングで来たと言うことは魔王か金色の波動のことだろう。
「うむ。残り9体の魔王がアクゼリュス解放を機によみがえるぞい」
魔王側も対策を練っていたらしい。一体でも自分の肉片が解放されたら連動して自分の封印が解けるように。
対策と言うよりは最後の悪あがきじゃがなと神は唾棄するがどの道それが実を結んだことに変わりはない。
全ての魔王が復活するまで3年から5年かかるそうだ。ならばその間にセフィラ達を鍛える必要がある。
ついでに神に金色の波動について聞いてみるとそれは神聖波動というものだと言う答えが返ってきた。
「神聖波動とは神が使役する波動さね。その使い方を教えてやるとしようぞ。もっともそれをまともに使えるのはセフィラや神獣人ぐらいのものじゃがの。賢者の石を魂に取り込んだお前やホムンクルスでも可能じゃがそのぐらいがせいぜいじゃろ」
「神獣人?」
「例えばカーミラ・フォン・ヤマモトのような鳳凰人がそれにあたる」
カーミラをペンギンにした際、いろいろ特典がついていたがそれはこいつが付けたものではなく彼女にもともと備わっていたそうだ。
神獣人としての潜在能力がそうさせたのだろうと言うことらしい。
「つまり神獣人とは空想上の幻獣がヒト化した者か」
「そう思ってよい。彼らはセフィラに準ずる神通力を持っておる」
魔力に対抗する力。それが神通力らしい。となると魔法も使えなくなっているのか。
だとしても神言を使えれば問題はなさそうだが。
「たわけ。神言とは『神を討つ言霊』。魔法とは『神の子ではない者が起こす悪魔の法』。両方ともその属性が魔である以上使えるわけがなかろう。魔の属性そのものが消えうせるはずじゃからのう」
成程な。アイリーンの神言を受けたカーミラが消滅したのはそういうわけか。
だがそれなら魔王の瘴気が発端で生まれた獣人が神聖波動を使ったら人間に戻るってことにならないか。
「それは確認できんかったの。獣人は獣の遺伝子がすでに人間に組み込まれておるからやも知れぬ」
魔法の属性が消え、神聖波動だけが残るか。
もっとも下手な魔法より神聖波動の方が強力らしい。神は俺に神聖波動の使い方を常識として組み込むと達者でなという言葉を残して消えた。
目が覚めるといつもの寝室。夢か?いや、それにしては夢の内容をしっかり覚えている。
本物の神託とみていいだろう。掌に波動をこめると見慣れた蒼い波動ではなく金色のそれが出たことで確信した。
「世界の絶望が始まるのか」
「あなた……それ」
俺は波動を消すとバムアの頭を撫でた。大丈夫だ。問題はないと。
【オルテガ視点 了】
「神聖波動?」
「そうだ」
朝食の最中、お父様がそう口を開いた。今日神様からお告げを受けたと言う。
お父様の言った夢の内容は正直半信半疑だけど、でも他にすがるものもない。
「お前、まだ波動は出せないのか」
「ええっと」
波動を掌に込めると波動が出た。でも色は蒼ではなく金色のそれだ。
「これが……神聖波動」
「恐らくは魔法も使えなくなっているはずだ。俺自身使えなくなっているからな」
そんな。今までやって来たことは何だったのよ。
神聖波動は波動柔術の応用で何とかなるにしても魔法が使えなくなるのは痛い。
「俺にもできた」
「私もだ」
兄さんは賢者の石を使って作られたホムンクルスであり、義姉さんは神獣人ウェアフィニックスだ。
でもそれに当たらないお母様やマテオ。それにラファエラは使えないようだった。
「さて。問題は神聖波動に目覚めた者たちにどうやって情報を広めるかだが」
すずなネットワークを使って大々的に伝えるにしても下手をしたら魔王復活のことまで伝えなければならない可能性も出てくる。
どういう対策を練るか皇室に伺いを立てるからお前らは学院に行けということになった。
「何の騒ぎだい?これは」
学院に登校した私達の目の前に広がっていたのは見慣れない人たちの集団。
それも竜人やウェアユニコーンと言った神獣人がやたら目に入る。
「礼志君?何であなたがキオルトにいるの」
「ああ。お姉ちゃん」
その中で見慣れた顔が一人いたので声をかけるとどうも新設されるクラスに入ることになったのだそうだ。
でも礼志君10歳じゃなかった?
「応募条件は年齢に関係なく神聖波動を出せる者、もしくは発現する者だ」
そう説明したのは誰あろう魔女・フィーア・アリオン。
なんでも一週間前に天皇が神様のご神託を受け、神聖波動についての苦情・相談が殺到した皇室が学院と協議して出来たそうだ。
「君はセフィラだから発現するのは分かってるが形式上のことだからな」
「はいはい」
当然のように棒は金色に光り、私は新設クラスに移ることになった。




