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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第五章 New generation?
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第60話 お勉強はカクテルを飲んだ後で……無理無理

夜。夕食を終え勉強会をしていた頃、義姉さんがどこかで見た女の人と共に帰ってきた。

確かこの人は……。


「トリアは知らないかもね。こいつはうちのペンギンの中身さ」


「アイリーン……なんかその姿で会うのは久しぶりだね」


「三途の川以来だからね。こうして会うのは」


三途の川で猿人のアイリーンに会ったのって夢じゃなかったんだ。

三途の川でのことを話すと皆なんて言っていいのか分からないって顔をした。

私も聞き手だったら似たようなリアクションとってたんだろうなあとは思うけど。


「……俺、今日は飲むわ」


「じゃあ勉強会は」


「少しぐらいじゃ酔わないし、モイセスもいるから大丈夫だ」


見ると兄さんはハリセンを素振りしていた。うん。分かってたよ。

ふとダイニングにあるミニカウンターに目をやるとそこには鳳凰亭のウエイトレスさんがいた。

えーと誰だっけ?


「メグミ。何やってるんだ?」


「鳳凰亭の店長が盲腸炎のため入院したので休業中なんです。だから遊びに来ました。何をお作りしますか?」


あ。そうだメグミさんだ。

でもどうしてうちに来たのか聞くとお母さんにお菓子を習いに来たらしい。

確かに美味しいけどね、お母様の焼くお菓子。


「モヒートを頼む」


「あたしにはブラッディーメアリーをお願い」


「メグミちゃん、私はアプリコット・コラーダね」


「私、オーガズム」


お前は勉強する気あるのかと一斉につっこまれた。

皆飲むのに私だけ黙々とお勉強はつらいです。


「解ってるからショートドリンクにしたんじゃない」


「分かった分かった。根の詰めすぎはよくないよな」


お父様大好き!お陰で私もお酒にありつけることになった。

名前はちょっと過激だけど好きなんだよね、これ。


「そんなわけでステファニーは救えなかったよ」


ブラッディーメアリーでのどを潤した義姉さんはまるで独り言のようにぽつりと漏らした。

義姉さんが闇の中に飲み込まれ着いた先は魔王の腹の中であり、ステファニーもそこにいたらしい。

救出に来てくれた人たちのおかげで助かったけどステファニーは自ら外に出るのを拒んだんだとか。

なんでも魔王の力があれば私を超えられると。

あいつの中で私はどれだけ大きくなっているんだろう。


私はオーガズムをあおるとメグミさんに告げた。


「すみません!リンチバーグ・レモネードをください!」


「今日は勉強会は中止ね」


「真面目に睡眠学習セットの購入を検討しようか」


お父様。ため息をつきながら不穏なこと言わないで。




「ちょっといいかしら」


放課後、後ろから声をかけられて振りむくとそこにいたのはいつぞやのステファニーの取り巻き二人。


「話があるの」


今度は誰が待ち受けてるのか聞くと自分たちだけだと言う。虎穴に入らずんば孤児を得ずって言うし(※虎児です)行ってみますか。

体育館の裏まで着いて行くと女の子二人はあのときはごめんなさいと頭を下げた。

さすがにこれには面食らったかも。


何でもステファニーには身寄りはなく子供のいない今の両親に引き取られたもののその後で実子が生まれたため家ではかなり微妙な立場なんだとか。

そのため自尊心が高くなりはたから見ていてかなり危うい精神状態だったそうだ。

なので好きな男子が出来たことで少しでも心の安定が出来ればいいと思っていたが振られた。

自分に価値がないから振られたと思ってしまったと判断したくない一心で私のせいで振られたということにすり替えたのだろうということ。


いや、事情は分かったけどどうしてその話を私にするのか解らない。


「ステファニーが闇にとらわれたまま戻ってこないのよ」


あー。そういうこと。私は義姉さんから聞いた話をすることにした。


【とある騎士視点】


アクゼリュスの柱に誰も近づかないよう警備をする。閑職もいいところだがある意味見回りで給料が入るならそれもいいかなと思い始めていた矢先のことだった。

柱に亀裂が走ったと報告が入り、現場に急行すると確かに柱が崩れていくのが見える。

亀裂から瘴気が放たれ柱は見る見るうちに瓦解。中から巨大な肉の塊が這い出てきた。


「アクゼリュスだ!皆の者、魔法を一斉に浴びせろ」


俺も含めその場にいた騎士全員で魔法を放つも応戦するも効いた様子はなく、肉塊は液状化しながらビルの森を焼いていく。


「腐っている。いや、腐らされたのか」


「神の柱は魔王の肉を腐らせるために在ったようですね」


「何でもいいわ。キオルトに……私たちの怨敵を討ちに行きましょう」


上から声がして仰ぎ見るとそこには化け物がいた。

男二人の顔と女一人の顔を持つ腕を6本生やした半陰陽アンドロギュノスが。

しかもそのうちの一人の顔は第3皇太子のそれではなかったか。

キオルトに……キオルトに連絡しないと。

だがそれが俺の最期の思考。

呆然とそれを見ていたせいで逃げ遅れ、魔王の肉に飲み込まれたのだ。


「しまっ……うああああああああ!!!」


【とある騎士の視点 了】

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