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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第五章 New generation?
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第57話 君、死ねと言い給うことなかれ

今日はピア湖で錬金術の素材採取をする日だ。

班こそ違うけどステファニーも同じ場所に行くとか頭の痛いにも程がある。

いなきゃいないで何やらかすか解らないやつではあるんだけどね。


「久保くーん。一緒に薬草探してえ」


「えー。私が先よー」


「私薬草と毒草の違い解らないから教えてほしいなあ」


久保は女の子に囲まれ困った表情で薬草の解説をしてる。復習になるからいいんじゃないの。

だからちらちらこっち見ないでくれる?うっとうしいから。


「あれほっといていいの?ヤマモトさん。『久保君はあなたの彼氏』なんじゃないの!」


ステファニー。これ見よがしに『』内を強調するな。そんな事実はないし取り巻きの女子が一斉にこっちをにらんだじゃないか。


「そんな事実はないし!男の子って『女につらくあたる女は嫌い』なんだって知らないの!」


私も『』内を強調してみた。取り巻きの女にまでいわれのない嫉妬を受けてたまるか。


「あー。確かに」


「女に冷たい女はひくなあ」


「男のいじめより女のいじめの方が陰湿なイメージあるよな」


周りにいた男子が頷いてくれたおかげで取り巻きの女たちをけん制することが出来た。

実際久保の周りにいる女たちは気まずげに目をそらしてくれたし。


「ちっ」


舌打ちしやがりましたよ、この女。あ、リラッ草発見。


「エメラルドフォール」


ステファニーの魔法で丸太を背中に叩き落されている間にリラッ草を採られた。


「あら、ごめんなさい。グリズリーと間違えてしまいました」


私のどこをどう見たら熊に見えるのよ虎女。


「……希少種保護法って知らないの?」


「わざとではありませんので」


私も勉強会をやるようになってから知ったんだけどね。私のような人間や義姉さんのような鳳凰人は希少種なので保護しなきゃいけないという法律がある。

詳しいことは知らないけど私や義姉さんが生まれる確率はびっくりするほど低いんだとか。だから守りましょうってことのはずだけど何でこいつは決まり事を無視するのかな。

森の方にキュアマッシュルームがあるわね。ちょっと向こうまで行こうか。


「エメラルドアイビー」


今度はつたで私を拘束しステファニーはそれを取りに行き、落ちてきたスライムの下敷きになった。私が取りに行ったらああなっていたのか。私は爆裂波動を使ってつたを破り、呼吸を整える。


「ステファニー、今助ける。天上に王冠、天下に王国を配し、知恵と理解を手に、慈悲と峻厳を両立し、美しき勝利と栄光を我が手に、基礎たる知識を暁に変えんことを。願わくば悪しきものを打ち払わんがため収束して弓矢と化せ。ダイアモンドメルトアロウ!!」


高まる魔力を制御しながらそれで弓を作り七色の極光の矢を放つ。これならスライムが緩衝材になってステファニーにもそれほどダメージはないはず。


「ブレイク!!」


矢がスライムに的中するや否や私は魔力を暴走させる。スライムは大爆発を起こし、ステファニーは爆風に吹き飛ばされながらどっぽおんとピア湖に落ちた。


「よっしゃあ!じゃない、大丈夫?ステファニー」


「……先生」


「スライムは触れたものを溶かすから魔法で倒すしかない。それも一刻も早くね。でももっと軽い魔法でも倒せるはずだけど?」


「あははは」


アーサー先生に治癒魔法をかけられたステファニーは私が攻撃魔法でスライムごと彼女を吹き飛ばしたから助かったはずなのに暴言を吐いてきた。


「……殺してやる。あんたなんか死ねばいいんだ!」


「今、なんて言った。あんた?」


自分でも1オクターブ声が下がったのが解る。何だろう頭に血が上りすぎて酷く冷静になってる感じ。

こいつ命を何だと思ってるの。私の脳裏には黒い血を吐いて倒れているフォルテⅡの映像がフラッシュバックする。

マテオが生まれて皆がかかりきりになってもフォルテⅡだけは私のそばにいてくれた。そのフォルテⅡが死んだ。

もうお話しできないんだ。一緒に笑うことはできないんだっていうあの空虚な気持ちがよみがえってくる。命を粗末に扱うやつは赦せない。


私は爆裂波動を拳に込めると一気に距離を詰めてステファニーを殴り飛ばした。ピア湖に再び落ちたので足に波動をこめて湖面に立つ。


「殺すってことがどういうことか。死ぬって言うことがどういうことか……身をもって教えてあげる」


「ひっ……」


「まずい!止めるよもっくん!ターコイズフォール!!」


「応!」


ステファニーの頭をわしづかんでいる私のすぐそばを雷が落ち、そっちに意識が行ったすきに義姉さんに胸をもまれ、同じく湖面を波動で走ってきた兄さんに水をかけられた。

これは……催眠水。睡魔が私を襲い、あっさりと意識を手放した。


【礼志視点】


「御厨礼志だな。私の名はフィーア・アリオン。君を人質にして御厨初音を呼ぼうかとも思ったが気が変わった。私と一緒に来てもらおう」


フィーアと名乗った銀色の髪を持つ赤い眼の人間の女が僕を命ある鎖で拘束し、ディラックの海を介して連れて来た場所はスィンジュ・クーだった。

神魔戦争叙事詩カタストロフェサーガに登場する死の都にして十魔王が一角アクゼリュスが封印されている地だ。


「君にアクゼリュスの封印を解除してもらう。出来るだろう?君の持つ『不可能を可能にする程度の能力』さえあれば」


「そんなことをしてどうするつもりだ。魔王が復活したらあんただって死ぬかもしれないんだぞ!」


「死にたいんだよ。私は」


そう言ってフィーアは自嘲するように笑った。


【礼志視点 了】

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