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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第五章 New generation?
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第55話 ヴィクトリアの宿敵

翌日、登校すると久保が私の机をいじっていた。


「何やってるの?」


「君の机の中に画びょうが仕込まれていたぞ」


「ええ!?」


何でまた。あんたが仕込んだんじゃなくて?

久保によると昨日ステファニーという子に告白されて断ったら私のせいで振られたと誤認し逆恨みしているらしい。そこで少し早めに登校して調べてみたらこのありさまだったとか。


「タイミング的に彼女の仕業とみて間違いはないだろう。あきらめるまで気を付けた方がいい」


ある意味こいつのせいだけど責めるのはさすがにお門違いか。


「あんたに告白する奴なんているのね」


「トリア以外の女子の間じゃ久保君って結構ポイント高いよ。その久保君と仲良くしてるんだからトリアに逆恨みの目が行くこともあるよね」


イヴォンヌ。悪いけど信じられない。


【アーサー視点】


クラスのみんなの学力を調べるため抜き打ちで小テストをやらせてみたんだがちょっと頭の痛い結果になった。



《問》「殺気」の読み方を書きなさい。


《翔の答え》さっき。


《ヴィクトリアの答え》ころっけ。


コロッケなんか感じてるから刺されるんだよ。ちゃんと「さっき」を感じてくれ。



《問》台形の面積を求める公式を求めなさい。


《翔の答え》(上辺+下辺)×高さ×1/2


《ヴィクトリアの答え》上辺×下辺×高さ×2/1


全部かけるな。あと2/1は2だ。



《問》I have a child を日本語に訳しなさい。


《翔の答え》私には子供がいます。


《ヴィクトリアの答え》私は(爆裂波動を使えば)冷凍庫が持てます。


爆裂波動は普通の人は使えないから。childをチルドって読むな。



《問》赤いリトマス試験紙を石鹸水につけたらどうなるか答えなさい。


《翔の答え》青くなる。


《ヴィクトリアの答え》おどろきの白さになる。


洗濯すんなあ。紙だって書いてあるじゃないか。



《問》すずなネットワークが展開された利点を一つ書きなさい。


《翔の答え》情報が流通することで生贄などの悪習を絶つことができた。


《ヴィクトリアの答え》御厨さんが果物を送ってきてくれる。


間違いじゃないけど個人的なことはふせようか。

全く、ヴィクトリアがここまであほの子だとは思わなかった。

オルテガに自宅学習させるようにそれとなく言っておく必要があるな。


【アーサー視点 了】


昼休み、私はステファニーに呼び出された。

机に画びょうを張り付けてくれたバカが直接会いたいとか上等じゃないか。

だが両腕を二人の女の子に押さえられ虎人の女に腹パンされた。

こいつがステファニーか。


「何その目。私あなたのせいで振られたんですけど。責任取ってくれない?」


そう言って私の髪をつかんだ。


「は。あいつに女を見る目があったって言うだけでしょ。私に八つ当たりしてる時点で」


ぱあん!顔に痛みが走る。叩かれたのか。


「ふざけんな!」


私はステファニーの琴線に触れたらしい。襟首をつかまれ締め上げられた。く、苦し……。


「ねえステファニー。こいつ縛って男子トイレに突っ込んじゃおうよ。私を犯してくださいって張り紙つけてさ」


「じゃあ服脱がしちゃおうか。ナイフ持ってるよ私」


「それはシャレにならないねえ」


ナイフを取り出した女の手をつかむと義姉さんはあさっての方向に捻じ曲げた。


「あああ!?腕が……腕があ」


女のナイフがかららんと地面に落ちたとき片方の手が自由になったので私を未だに拘束してる女の喉に水平チョップをかますとステファニーは走り去った。


「待ちなさいよ!」


「一人だけ逃げるのはマナー違反だとは思わないか?レディー」


出口から兄さんが現れステファニーの股間を蹴り上げた。


「…………!!」


「おいたをする女子の股間を蹴り飛ばすのはヤマモト家の伝統だ」


ちょっと兄さん。そんなことを言ったらお父様も女の子の股間蹴ってたみたいじゃない。

それにしてもこの2人が学院に入学したのってひょっとして私が心配だったから?


「ちょいとした野暮用で女子更衣室に忍び込んでもっくんにシバかれてたらあんたが屋上に上がっていくのが見えてね。こっそりついて来てよかったよ」


なんだ。もののついでか。お陰で助かったからいいけどね。

ただ私はまだ知らなかった。本当の困難はこれから始まるということを。


夜。夕食を終えお父様が突然妙なことを言い出した。


「トリア。祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。に続く言葉を言ってみろ」


「へ?」


何その呪文。


「古池や蛙飛び込む水の音?」


「沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらわす」


お母様。それは何の暗号でしょうか。


「スィンジュ・クーに封印されている十魔王の名前は?」


「アク……とぱす?」


「くけー」


アイリーンがアクゼリュスと書いたスケッチブックを私に見せた。

ああ。そうだった。そんな感じの名前だった。


「May I use your name?」


「め……めない?私の名前って中古品なの?」


「I'm Mateo von Yamamoto」


マテオまで!?何これ?何の遊びなの。

でもお父様によると打ち合わせは一切してないと言う。正直マテオが答えられたことに驚いたとか。


「ヤマモト銀行で働くなら英語は覚えないとな」


「そうか。がんばってるな、マテオ。これからもしっかり励め。そしてトリア。お前の学習レベルはよおく解った。なので明日から夕食が終わったらみっちり勉強会だ。……異論はないな」


「…………はあい」


こうして私の苦難は幕を開けたのだった。お勉強嫌いいい。

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