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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第五章 New generation?
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第54話 トリアとロベルトは挨拶をかわす仲になりました

カランコロン。ドアベルを鳴らし私と久保さん、それにロベルトは近くの喫茶店『珈琲中毒』に入った。

もう少しましなネーミングはなかったのかなあ。


「落ち着いて話をする必要があるかと思ってね」


久保さんはそう言って私とロベルトを対面させるようにして席に座った。

彼のおごりだと言うのでメニューを開く。珈琲は種類がいっぱいあるのに紅茶は『紅茶』だけ。

やたら安いしティーパックっぽいなあ。フルーツパフェとかあるけどロベルトがいる手前アメリカンにしよ。

久保さんはブレンドコーヒー、ロベルトはオレンジジュースを注文した。


「さて。君がヴィクトリア嬢でいいんだよね」


「はい。久保さんってひょっとして学院に通っている弟います?眼鏡をかけた」


「いるよ。翔は僕の弟だ」


やっぱり。世間って狭いなあ。にしてもあの失礼な男とこの紳士的な騎士さんが兄弟だなんてね。

ロベルトの方に目をやるとこちらをじっと見てた。


「なあヴィクトリア。オルテガってどんな男なんだ?」


こいつ、本当にどんな教育受けてるのかしら。そう言えばこいつの父親ブルギットってうちに強盗しに来たんだっけ。じゃあしょうがないのかな?


「お父様は厳しいところもあるけど強くて優しくてママ思いで隠し子を作る人じゃないわ。絶対」


生死の境をさまよっていた時は悩みもしたけど私の知るパパはそういう人だと胸を張って言える。


「……ファザコンかよ」


失礼ね!私のどこがファザコンなのよ。お父様は顔はパッとしない感じだけどそれでもお父様よりかっこいい人を知らないのよ。

そのせいか彼氏ができないことを友達に相談したら同じこと言われたけど私は断じてファザコンじゃない。でもファザコンってなんだろう。


「でも娘がファザコンになるぐらいの魅力はあるってことか」


「私はファザコンじゃないわ。お父様がかっこよすぎるのが悩みのごくごく普通の女の子よ!」


「俺のオリジナルなら顔は大したことないだろ」


「パパのかっこよさは顔じゃなくて……そう、生き様なの!」


何よ2人してその「わかったわかった」と言いたげな顔は。

久保さんはこほんと咳払いをすると口を開いた。


「君の前でこんなことを言うのは悪いが僕はこの子もブルギットの被害者だと思っている」


そう言われれば確かに私とロベルトの立場が逆だったら私はこいつを刺さなかったという保証はない。

ブルギットは行方をくらましているしこのまま彼が現れないならこの子を養子にすることも考えているそうだ。なんでもブルギットがリライト団に入団もしくは協力しているならばすでにキオルトにはいない可能性もあるとか。


「お待たせしました。ブレンドとアメリカン。それとオレンジジュースでございます」


マスターらしき人間の男性が注文の品を置き、ご注文の品は以上でしょうかと聞き、それに応じるとレシートを置いて一礼しカウンターに戻った。


私が入院中にママが毎日傷口に永琳印の軟膏を魔力をこめて塗ってくれたお陰もあってか傷口は全く見えなくなったし何よりお父様のクローンだけあって見てると憎めない感じではある。

お母様の話を聞いたときは「可哀そうな子ね」とか言ってたし。別に赦してあげてもいいんだけど……。


「久保ロベルトは変」


「うっせ。……でもまあ事実を確かめないで刺したのは悪かったよ。ごめん」


頭の一つも下げられたことだし私も豪快な一撃(二撃?)を入れたしご破算ってことでいいかな。


「解った。赦す。でも条件があるわ。お父様よりかっこよくなりなさい」


私はそう言い放ちアメリカンを口に含んだ。たまにはコーヒーもいいわね。

そのあとはちょっとした雑談。お父様とお母様のエピソードとかブルギットがロベルトをどんなふうに育てたか。久保さんの弟が関わってる変な女子(要は私)の話などで盛り上がり会計を久保さんに任せ「ごちそうさまでした」と彼に告げて店を出た。


とにかくこれで分かったことはブルギットはロベルトを虐待してはいなかったということ。ただお父様に捨てられた女の子供だと嘘を言っただけで一緒にお風呂に入ったり釣りをしたりと普通に親子関係を保っていたそうだ。だからこそあの嘘がロベルトの中で真実味を帯びたのだろう。私はブルギットという獣人がよく解らなくなった。


【翔視点】


「あの……私、ステファニー・ハセガワと言います!私とお付き合いしてください!」


またか。正直辟易する。俺は学年でトップの成績を誇り、顔も整っていて背も高くて大人しそうだからか僕に告白する女子は少なくない。

正直恋愛より錬金術の研究がしたいんだよな。恋人を作るとその時間を削る必要があるし、何より相手のペースにあわさなきゃいけないのが邪魔くさい。想像するだけで気疲れするから遠慮したいのが正直なところだ。


「悪いが今はそんな気にはなれん」


「ヤマモトさんですか?」


は?何を言ってるんだこの子は。


「久保君はヴィクトリア・フォン・ヤマモトさんが好きなんですね」


すまない。ここは笑うところだろうか。あさっての方向を指摘されてどう返していいのかさっぱり解らない。


「私、あきらめませんから」


女の子は俺を一瞬キッとにらむとどこかへと走り去った。これってまたあいつに災難が襲うってことか。

退院したばかりで面倒事とかふびんなやつだな。注意くらいはしておいた方がよさそうだ。


【翔視点 了】

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