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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第五章 New generation?
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第51話 実はアイリーンも生死の境をさまよってました

【オルテガ視点】


病院に着くとアーサーと明日香、それに両手を後ろ手に縛られた少年がいた。マテオより少し上だろうか。もっともあいつは同級生の中で一番背が低いから参考にはならんが。


「あら。このツーショットは結婚式ぶりねえ」


バムア、余計なこと言うな。気まずくなるだろ。


「結局3年弱で離婚したから僕としても懐かしいよ」


「バムアさん、ずいぶん冷静ですわね」


明日香が研究の方にかまけていたらアーサーがしびれを切らせて離婚したんだったな。


「なんかいろいろ入ってくる情報がありすぎて感情が一回転してる感じかしら」


そんなものか。俺は内心気が気じゃないんだが母は強しってやつだろう。

するとこちらをにらんでいた少年が俺の名前を叫んだ。


「何だ小僧。ここは病院だ。静かにしろ」


「お前のせいで母さんが……」


「その母親の名前は?獣人か?人間か?獣人だとしたら何の獣人だ。顔は?年は?性格は?」


「それは……」


明日香によると人間の東雲明日香と言う女だとのこと。明日香とそんな関係になったことは断じてないし大体こいつは狼人だ。

もっともバムア以外の女とそういう関係になったこともないがな。


「ブルギットはアイリーンとカーミラを匿っているヤマモト家を調査しておりました。それを調べたのがジョセフィーヌと言う女ですわ」


ジョセフィーヌ。数年前に辞めたメイドの一人だ。一身上の理由により辞めていたがスパイだったとはな。

この少年といいジョセフィーヌといいブルギットってひょっとして人脈作るのうまかったりするのだろうか?

だったら復しゅうなんてやめてその人脈で事業でも起こせよ。


「でも考古学研究所勤務のあなたがなぜそんな情報を?」


「全くの偶然ですわ。落ちてた鞄を拾ったので持ち主が解るものがないかと調べていたところヤマモト家の見取り図やら家族構成やら書かれたメモを見つけまして探しに来た本人を問い詰めたら白状しましたの」


なるほど。あいつが作れる人脈はあほうだけか。じゃあダメだな。

それよりトリアだ。


【オルテガ視点 了】


黒い昏いそんな世界に私はいた。パパの隠し子だって言う男の子におなかを刺されたんだっけ。

そんなこと信じたくないけど本当だったらどうしよう。


「お姉ちゃん。何してるの?」


見るとそこに立ってたのは時々家に果物を送ってきてくれる御厨さんに似た兎人の男の子がそこにいた。


「えーと。解らない。自分はどこに行くのか。それとも行かないのか」


「何言ってるのかさっぱり」


「生死の境をさまよってるからよ」


声の方を向くとそこには髪をツインテールにした人間の少女が小舟の上で座っていた。

肩にかけている大きな鎌は死神を連想させる。


「乗ってく?」


「小町。乗ったら死ぬよね、それ」


「私の仕事は橋渡しだからねー。つまんないけど」


そのとき、ふら~っと女の人がこっちに来た。見たことある気もするけど気のせいかな。


「あれ?トリア、あんたが何でこんなところにいるの?」


「え?どこかでお会いしたことありましたっけ?」


「ここ思いっきり三途の川じゃない!早く戻らないと死んじゃうよ!」


だからあなたは誰ですか!?何で私の名前知ってるの?ひょっとしてあの子の……。

するとその女の人は今はペンギンをしてるアイリーンだと答えた。

アイリーンってもしかしてうちのペットの?でも魂は猿人ってどういうこと?


「ペンギン?ひょっとしてお姉ちゃんってオルテガさんの娘さん?」


少年の言葉にうなずくとそれは夢見が悪いなあと少年はため息をついた。


「夢見も何もあなたたちが油売ってる間に船は定員なんだけど。私が戻ってくる前に向こうの光へ向かっちゃダメよ」


小町さんとか言う人が指差した先を見ると確かに何か光を放ってる。ひょっとしてあれが戻る道?


「ありがと。小町」


「何のこと?友達だからってお仕事に反することはしないよ。いい?あの光に向かっちゃダメだからね」


そう言って小町さんは舟をこいで向こう岸へと向かっていった。


「よく解らないけど助かった。帰るよ」


「ねえ、アイリーン。パパはあの子のママに酷いことしたのかな」


ずっとそれが気になっていた。するとアイリーンさんは私と目線を合わせる。


「あんたのパパは誰かをわざと傷つけて平気な顔してられるやつなの?」


ないよ。それだけはない。


「そんなわけない!パパは強くて優しくていつもママ思いで!!」


「ならそういうことでしょう。小町とやらが戻ってくる前にあの光に行くよ!少年も!」


「あ。僕は自由に行き来できるから大丈夫。僕の名前は御厨 礼志みくりやれいじ。お姉ちゃんは?」


「私はヴィクトリア。ヴィクトリア・フォン・ヤマモト。またどこかで会おうね!」


「うん。きっと」


私はアイリーンと一緒に光に向かって走りその光に視界が包まれ、それが明けると見覚えのない天井が広がっていた。見渡すとここは病室だと解る。

あれは夢だったんだろうか。


「トリア!トリアの意識が戻ったわ!!」


喜ぶママの姿を見られたから別にいいかな。

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