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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第五章 New generation?
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第47話 後にカーミラ係にされることをまだヴィクトリアは知らない

主人公がオルテガからヴィクトリアに代わりました。

私の一番古い記憶はフォルテⅡの死。黒い血を吐いてピクリとも動かなくなった。

もうフォルテⅡとお話しできないと泣き疲れて眠るまで泣いた。

だから私は命を軽く扱う人を許せない。




「行ってきます!」


私はヴィクトリア・フォン・ヤマモト、15歳。今日は都立錬金術養成学院の入学式だ。てゆうか遅刻遅刻!

パンをくわえながらってのは貴族としてははしたないけど今は火急の用なんだ。看過してほしい。

曲がり角を待った時私は何者かぶつかってしりもちを着いちゃった。何なのよ。

すると目の前にも私と同じ学院の制服を着た兎人の男の子がびっくりした顔で棒立ちしてるじゃないか。


「いった~い!」


「いきなり飛び出して来るやつがあるかよ。曲がり角ではいったん止まれ」


何よ、お互い様でしょ!?


「……あとパンツ見えてる」


「!?」


慌ててスカートを抑える。最低!教えてくれただけかもしれないけど最低!!

最悪な気分のまま入学式を終え、指定された机に座ると隣の男子が今朝のあいつだった。


「あ!今朝のパンツのぞき魔!!」


「お前が勝手に見せたんだろうが!パン食いながら道走ってんじゃねえよ!!」


「だってママが朝は絶対何か食べなきゃダメって怖い笑顔で言うんだもん!!」


あの笑顔には逆らえないよ。パパはため息つくだけだし。

私とこいつでしばらく火花を散らしていると黒板を爪でひっかく音がした。

うわあ!!この音嫌いいい!?

見ると教壇にはアーサーさんが立っているのが解る。


「アーサーさん、どうしてここにいるんですか?」


「僕はこの学院の教員で君の担任だからだよ。学院にいるときはラックスウェル先生って呼んでくれると嬉しいな」


時計を見るともうHRの時間らしい。失礼しました。

学院での決まり事やら注意事項やらがラックス……アーサー先生から報告があった後、自己紹介をすることになった。

ウケ狙いのものから淡々としたものまでいろんな自己紹介がされていく中とうとう私の番に。


「ヴィクトリア・フォン・ヤマモトです。これから1年間よろしくお願いします」


そして順番があいつに回ってきた。


久保翔くぼかけるよろしく」


よろしくなんて誰がするかバカ。

そして順番は周り、


「カーミラ・フォン・ヤマモトだ。女子の皆、よろしく頼むよ」


「何故に女子だけ」


カーミラ義姉ねえさんがモイセス兄さんにハリセンでつっこまれていた。


「やだねえ。あんたって旦那がいるんだから男と仲良くしたら浮気じゃないかい?だから女の子とだけよろしくしようってことさね」


「友達づきあいなら問題ないから」


返す刀でもう一回ハリセンでたたかれてるけどそういうことじゃなくて。


「なんでモイセス兄さんとカーミラ義姉さんが学院にいるの!?そして同じクラスなの!?」


「いや、何か面白そうだったからこっそり受けたら受かっちゃったんだよねえ」


「父さんにカーミラだけだと何かと不安だからお前も試験を受けろって言われて受けたら受かった」


私と同じクラスになったのは偶然?ずいぶん出来すぎだと思うけど……。

ふとアーサー先生の方を向くと頭を抱えていた。

僕がカーミラの尻拭いをするのかってところかな。なんて言うかお疲れ様です。


【ブルギット視点】


ようやく住所封鎖の刑期を終えた。いや、それは3年前に切れていたんだが生活費をねん出するために漁に出て魚を捕り、その上亀の甲羅と化した胴体を治療するのに手こずって13年という歳月を費やしてしまったのだがまあいい。沼竜鬼事件は過去のものになり、地方と都市部を交流させるために地下にネットワークを張る《すずなネットワーク》が国家プロジェクトとして進行していることも十分承知している。沼竜鬼事件の悲劇を起こさないため情報や物資を届けやすくするためあの鬼の名前「鈴奈」からとったというのが気に食わんがな。鬼は鬼だ。名前なんかあるか。いや、そんなことはどうでもいいか。どのみち俺には復讐しかない。それ以外の道なんか知らなかった。俺はカーミラ・アインシュテルンと決着をつけなければならないんだ。口論ではなく血で血を洗う決闘で。


「導き石よ!我をアイリーン・ラックスウェルの元へと導きたまえ!」


導き石を使いアイリーンの元へ。カーミラを打倒するにはアイリーンは絶対に必要な人材だ。一人逃げおおせたようだが今度はそうはいかない。

導き石の光が消え、俺の目の前には黒い毛並みのペンギンとかいう鳥がいた。鳥とは思えぬ鈍重な見かけだがそれは置いておこう。問題は……。


「アイリーンはどこだ?」


「くけ~」


まさかこの鳥がアイリーンという名前だとでもいうのか。低い品質のものを仮に作ったのだとしてもこれはないだろう。

するとペンギンはマジックペンとスケッチブックを取り出しきゅっきゅっと何やら文字を書いている。まさかな。


ペラ。(1枚目)『久しぶりねブルギット』


ペラ。(2枚目)『アーサーの呪いでペンギンにされたのよ私』


最悪だ。考えうる限り最悪に位置づけできる状況じゃないか。


「待ってろ。今その呪いを力ずくで破ってやろう」


「要らんことをするな。侵入者」


拳大の光の球が無数に僕に迫っていた。

なすすべなく直撃し、吹き飛ばされるとその声の主がいつかの猫人と解る。


「とりあえず不法侵入者としてつまみだしてやろうかブルギット。あの時みたいに騎士団はエビルジュール討伐に動いてないからいつでも待機状態だしな」


「ふははは。また会おう」


こんなところで捕まるわけにはいかない。僕はランダムフェザーでこの場を逃げ出した。

行き先の指定はできないが空高く飛ばしてくれるから逃げるにはちょうどいい錬金術アイテムなのだ。


どぼおん!!

ピア湖に落ちるとは思わなかったがな。

は、は、はくしょおん!!


【ブルギット視点 了】

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