第4話 デザイアストーンと黒騎士
「よし。全部倒したぞっと」
ちょいとばかりてこずったが何とか男達を食わせることなく全てのエビルジュールを倒した。
エルやカーミラが脈を取ったり瞳孔を調べたところどうも眠っているのだろうということ。
「サファイアブラスト」
アーサーの唱えた呪文で大量の水が出現。男達を飲み込み、全員目を覚ましたようだ。
もう少しましな起こし方はなかったのか。
「ぷはあ!?なんだあ!?」
「あー。君達、大丈夫?」
「って女の子!?何で俺ら全裸なの!?」
ああ。まあそりゃ動揺するよなあ。タオルをたくさん創造すると男達はそれを腰に巻いた。
つーか平然としてる初音やカーミラがおかしいんだよなあ、明らかに。
「初音やカーミラはいつも俺の筋肉を見てるからな。そんな貧相な体じゃ何も感じないだろう」
「「はいはい。そうですね」」
「あのう。俺達、帰ってもいいですか?」
「ああ。どうぞ・・・ってどっちも鍵が閉まってるようだけど」
屋外に出る扉と宮殿の中に出る扉は両方閉まっている。
ごぐしゃあ、と金属がつぶれる音がして見ると屋外に出る扉をエルが開けたようだ。
「南京錠がかかっていたようだな。これじゃあ女の細腕では開けられない」
そんなの開けられるのは喋る筋肉だけだよ。
中に入る扉もエルに開けさせ、宮殿の中にいる女性を捕まえて丁重に居場所を聞き出し、ようやく東雲明日香の部屋に到着した。
その部屋はかなり豪奢で調度品も整っており、若くてかっこいいあるいは可愛らしい男の人が彼女の周りに立っていた。
「あなたが東雲明日香?」
「そうだけど。あなたは誰?私、女と遊ぶ趣味なんてないけど」
「遊びに来たんじゃないわ。調教しに来たの。あなたのその曲がった根性をね」
「初音!左に飛べ!!」
アーサーの声に反応し、初音が左に向って飛ぶと彼女がいた辺りを白刃が宙を切った。
「いつからそこにいたのよ」
「いや。普通に走ってきて剣を振ったけど」
「うそお!?」
っておい。何で東雲が驚いてるんだ。
初音は目を見開いていたが「ああ」という顔をしてる。
「どうやらアーサーの予測はあなたを完全に捕らえているようね」
「そう・・・ようやく。ようやく現れたのね。私を見つけられた人が・・・それなら一緒に遊びましょ」
すると東雲の全身が瘴気に包まれ真っ黒い狼へと姿を変えた。
Guoaaaaaaa・・・!!
突然襲い掛かってきた狼のあごをエルが蹴り飛ばすも彼女は体を捻りながら4足で着地。
「サファイアスピン」
水が高速に回転して出来ている小さな円盤が13個初音を襲う。
「ダイアモンドシールド」
光の幕が発生して防いだようだが狼がいない。
「初音!上に向ってバールを振るんだ!!」
これがカウンターになったようで血を流しながら狼は距離をとった。
そして咆哮を男達に向けると固まっていた彼らがこちらに向かって来た。
目の色が正気じゃない。操られている?
「ふん」
エルとカーミラが男達と戦って狼はアーサーが予測して初音が戦っているのをはたで見て気づいたことが。
何でこいつの尻、光ってんだ?
やべえ。あの光ってるのと遊びてえ。
俺は一目散に狼の足元に行くとそいつの尻尾の付け根と肛門の間辺りにに右前脚を突っ込んだ。
ダアトを使って6次元を介せば取れるはず。
「ぐおああああ!?」
「フォルテ君。そんなばっちい所に手を突っ込んじゃ駄目」
あったあった。何か固い石の感触を見つけほじくりだすとそれは赤く光る瘴気を発する石。
「?・・・私は一体何を?」
すでにウェアウルフに戻った東雲は全裸のまま呆然としているようだ。
アーサーとエルは彼女を見ないようにしてる。
俺はタオルを創造して彼女に渡した。
「ありがとう。猫ちゃん」
おお。この子のなでなで気持ちいい。
「デザイアストーンを見つけ出したか」
声のしたほうを振り向くとそこにはあの黒騎士がいつの間にかそこにいるのが解る。
「お兄様?」
「人違いだ」
そう言うと黒騎士はデザイアストーンという瘴気を放つ赤い石を凄い速さで切り裂き、消滅させた。
「・・・黒騎士。君は何者?デザイアストーンって何?」
黒騎士が言うにはデザイアストーンとは人間の欲望が瘴気で結晶化したものらしい。
これに操られている人間がまだまだこの世界にいるということだ。
なので俺達にそれを破壊する手伝いをして欲しいそうだが。
「人に頼みごとをするならまず自分の素性を明かして相応の報酬を用意するのが筋じゃないのかしら?」
「カーミラが初めてまともなことを言った。明日はさくらんぼが降るな」
「さくらんぼ。大好き」
「あんたらねえ・・・」
この世界には地球と同じ食材も存在しています。
ただしラスクという食べ物はありません。




