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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第四章  conclusion
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第40話 友との再会 友との別離

「久しぶりだな。アイリーン」


本来なら俺は貴族だし相手は年上だ。礼を尽くすべきなんだろうが犯罪者に下げる頭はない。


「悪いけど、私は興味のない獣人のことは忘れることにしているの。どこかで会ったかしら?」


「気にするな。一方的に知ってるだけだ。で、招かれざる客人よ。当家に何の御用かな」


「アーサー・ラックスウェルは在宅かしら」


「ここにはいない。場所はこいつに聞け」


そう言って俺はアイリーンに導き石を投げ渡した。特定の相手の下へ導くアーサーから託されたアイテムだ。


「罠だ!アイリーン、ここはこいつに腕ずくでも……」


「ふふ。ありがと……導き石よ!我をアーサー・ラックスウェルの元へ導け!」


アイリーンは迷うことなく導き石を使い、光と共にアーサーのいる学院の屋上へと飛ばされた。


「悪いな錬金術師。お前の分はないんだわ」


「弟君などどうでもいい。僕はアイリーンの役に立てればそれでいいのさ」


すると筋肉の塊がこちらに向って来た。と言ってもエルじゃない。顔はかろうじてアトダーシ・ジョンケンだと解るがその体躯は最早全うな生物の規格をはるかに踏み越えている。一言で言うならば怪物だ。


「ようやく来たかアトダーシ。お前の力を見せ付けるときが来た。我らの邪魔をするあの虹を放つ兎人に爆裂波動砲を発射するのだ」


アトダーシは口から爆裂波動を大量に放射。ハルトヴィヒが初音の前に立って障壁を展開するも角度が違う。あそこはバムアの……。


[Side_Bamhua]


「まあま!」


おびえるヴィクトリアを抱きながら私は自分に言い聞かせるように言った。


「大丈夫よトリア。パパも初音もカーミラもみんな強いから大丈夫」


背中をなでて落ち着かせていると窓から強力な爆発音がして、そちらを見ると窓こそ無事だけどカーミラがペンギンになって落ちていくところだった。

かばってくれたの?死なないで、カーミラ。


[Side_Bamhua END]


「カーミラ!」


カーミラはアトダーシの正面に飛び込み、爆裂波動砲の直撃を受けてペンギンに戻って地面に自由落下したが死んではいないようだ。

ほっとため息がもれる。


「爆裂波動を受けすぎちまったねえ。もう鳳凰人に変身する余裕はないよ」


すまない。俺がふがいないばかりに。


「面白い。アトダーシ、さっきと同じで角度で爆裂波動砲を……」


させるかよ。


叢雲螺旋拳むらくもらせんけん!」


「ブラッドストーンブラスト!!」


アトダーシに螺旋を描く様に爆裂波動を収束させて放って直撃させ、それを肉塊にするのと同時に爆発音が聞こえた。

見るともっくんの胴体が吹き飛び、その頭がカーミラのそばに転がっている。


「ち。またこいつか。まあいい、これでようやく一匹死んだ。次は誰をご所望かな」


錬金術師はそう言うと闇の玉を周囲に侍らせた。


[Side_Hercule]


「メグミ、無事か!」


「はい。問題ありません」


エビルジュールをフライパンのふちでフルスイングするウエイトレス。シュールだな。

変な音がして空を見上げると黄色い機械が肌色の軟体動物に絡まれて飛んでいた。


「あれは何だ?」


「セスナ……マスター、完成させていたんですね」


「しかし様子が妙だ。メグミ、飛べるか?」


「はい。明日香さんに誕生日プレゼントとしてもらったものがあります」


それはヘリュックプターと言うリュックのように背負うタイプの一人用プロペラ飛行機だとのこと。

うむ。さっぱり解らん。

メグミはそれを背負うとレバーを引くと機械が露出し、二つのプロペラと言うものが高速で回り始めた。


「エルさんは飛べますか?」


「無論だ」


この義腕、爆裂波動を使用しているらしくこれをジェット噴射させれば飛べる様になっているのだ。

オルテガから爆裂波動を使えば飛べることを教えてもらったとき試しにやったら出来たからな。

二人で空を飛び、セスナとやらに着地すると肌色の軟体動物がこちらに触手を伸ばしてきた。


「ルビーブラスト」


機体に当たらないように放射系の火炎を放ってそれを焼く。時間をかけるわけには行かない。一気に決める。


「ウェイクアップ!クラッシュハンマー!!」


メグミが包丁で肌色のタコらしきものの触手を切りながらサポートする間を縫って本体にそれを叩き付けた。

化物め。灰燼に帰すがいい。

メグミが扉を開けて中に入り、続けて俺も入ると中には俺が友だと心から言える者がいた。


「久しぶりだな。Dr北条」


「ああ。久しぶりだなエルキュール。お前にはまた迷惑をかけた」


「気にするな。ささいなことだ」


その時、機体ががくんと大きく揺れた。何か引っ張られている感じさえする。


「魔力が急激に増大しているポイントがある。どうやらそこへ引き寄せられているようだ」


「む。ならばそこへ向かおう。きっとそこが決着の地だ」


「心得た」


[Side_Hercule END] [Side_Carmilla]


「もっくん……」


私の前にはもっくんの頭が転がっている。何で私なんかを助けた。私を生かしてもセクハラするだけじゃないか。

あんた、トリアの成長を楽しみにしてたのに何で私なんかのために身を挺してかばったんだい。

私は男なんかどうでもいいはずなのに……何で私は涙を流してるんだろうねえ!何で私は怒ってるんだろうねえ!!


頭に思い浮かぶのはもっくんとの思い出。

一緒に本を読み漁り、時には味方、時には敵。それでも楽しいと胸を張っていえる日々には確かにもっくんがそこにいた。


ごめん、もっくん。ごめん、鈴奈。

私はもう一度本気で怒るよ。理性は少しくらいは残すけどね。キオルトを火の海にしたらトリアに怒られちまう。


くけえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!


目の前が炎に包まれる。私の体にも炎が回り、それが晴れるとペンギンの頃とは違う視界がそこにあった。

これはあの時の15歳の私だ。


錬金術師がまとう闇の玉を波動柔術をこめた必殺技、真・アイアンメイデンでかき消す。

カーミラさん、完全復活だよ。こんな形になるなんて思いもよらなかったけどね。


「鬼子、カーミラ。……思い出した。沼竜鬼に魅入られた鬼子、カーミラ!」


「何!?なんであんたがそれを……」


錬金術師はあの村の名前を口にした。自分はあの村の生き残りだと。


[Side_Carmilla END]

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