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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第四章  conclusion
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第39話 キオルト決戦開始

翌朝、防犯サイレンが鳴り響いた。城壁を大量のエビルジュールが乗り越えたという。

やりやがったな、アイリーン。

明日香からもらった双眼鏡で窓の向こうをのぞくとこちらに向ってエビルジュールの群れが向かってくるのが解る。


「よし!じゃあ手はず通りに行くぞ。初音はダイアモンドメルトで上空のエビルジュールを吹き飛ばしてくれ。フォルテⅡとオルテガは亜空間ゲートへ。俺と親父とカーミラとアーデルハイトは家の防衛。ハルトヴィヒは呪文詠唱で無防備になる初音を守れ!」


おのおの了解する意志を示しているとアーデルハイトがメイド達を集めた。


「オルテガ様の指示通りだ!メイド隊、気合入れるよ!!」


「え?……アーデルハイトとハルトヴィヒ以外も戦えるのか?」


『そりゃあ。メイドですから』


「……そうか。死なない程度に頑張ってくれ」


まだまだ俺の知らないことってあるんだなあ。


[Side_Arthur]


僕は明日香と一緒に学院の屋上にいた。あの馬鹿姉が解るのはヤマモト邸と学院くらいだろう。

眼下では学生達が錬金術学部、魔術学部、考古学部に分かれて点呼を取っている。

エビルジュールを自力で倒すつもりらしい。錬金術学部の面々にとっては貴重な素材の大量ゲットのチャンス、魔法学部にとっては錬金術学部を出し抜くチャンス、考古学部にとっては科学技術を世に広めるチャンスといった所か。

学生たちはおのおのの武器を手に町の中へと消えて行った。


「少し。いや、かなり罪悪感があるな。主犯が僕の身内だと解ったら皆僕をどう思うだろう」


「どんなときでも私はアーサーの味方……だから。アーサーはアーサー。アイリーンはアイリーンよ」


「有難う」


[Side_Arthur END] [Side_Hatsune]


「天上に王冠、天下に王国を配し、知恵と理解を手に、慈悲と峻厳を両立し、美しき勝利と栄光を我が手に、基礎たる知識を暁に変えんことを。願わくば悪しきものを打ち払う大いなる槌として!ダイアモンドメルトお!!」


空にいるエビルジュールの群れに虹色の光を放つ一度に8割程吹き飛ばせるのはいいけど消費する魔力が尋常じゃない。

しかも遠慮なくどんどんやってくるし。

魔力を回復するツクヨミリングも念のため10個用意してあるけどできるだけ急いで。フォルテⅡ、もっくん。


「モップ百烈拳!!」


「必殺!真・アイアンメイデン」


ハルトヴィヒとカーミラが私の防衛をしてくれてるけど二人の負担もあるからね。


[Side_Hatsune] [Side_ForteⅡ]


亜空間ゲートを通り、賢者の石の導きにあわせて出た先は城の中のようだった。

だが間違っていないのは目の前に間欠泉のように瘴気を放つ存在がいることで解る。


「ホムンクルスを送ってくるとは用心深いわね。ヤマモト家の者は」


「おや、これはこれは美しい方だ。我輩の名はフォルテⅡ。以後お見知りおきを」


正直まともにぶつかるのはごめんだがな。なにしろこの女性は立ち姿からして既に只者ではないと解る。

何しろ隙がない。そしてこれほどの瘴気に負けず劣らず圧倒的な存在感をかもし出しているときた。

なるほど。ご主人が死ぬなと念を押すわけだ。


「アイリーン・ラックスウェルよ。面白い力ね」


アイリーンは既に我輩を見てはいない。彼女の目に映っているのは窓に映る七色の光。


「私はあの虹のたもとに行くわ。あなた達はその機械人形と遊んでなさい。行くわよブルギット」


「ここを離れるのは愚策中の愚策だ。ここは作戦の要、こいつらを殺してからでも……」


余計なことをいうな山猫人ウェアリンクス


「本命はアーサー。それは変わらないわ」


そう言うとアイリーンは神言らしきものを唱え、空を飛んでヤマモト邸へと向かい、それを見て舌打ちするも山猫人の男も恐らく付いて行った。


「もけー!」


残るはメグミ嬢を思わせる機械獣人。姉妹機だろうか。


「お嬢さん。キオルトの危機なのだ。デザイアストーンを除去する邪魔をしないでもらえるかな」


「マスターとお姉さまに会うためにはそれを護らなければなりません。邪魔するならば全力で排除します」


やはり駄目か。


「すまん!もっくん、そのお嬢さんを取り押さえててくれ。その間に我輩はこの者からデザイアストーンを取り出す!」


「もけ~!」


[Side_ForteⅡ END] [Side_Siegrid]


私の生まれ育ったキオルトをエビルジュールなんかにめちゃくちゃにされてたまるもんか。

ゲオルグが魔力を込めたシルクハットに投げてエビルジュールを切りつけたり、私が魔力を込めた拳で殴ったりと順調にエビルジュールをなぎ払っていたときだった。

筋肉の塊としか言えないものがこっちに向ってくる。そいつは口から何か光らしきものを吐き私の意識はそこで途絶えてしまった。

何なの……あれ。


[Side_Siegrid END] [Side_ForteⅡ]


最後の一つを取ろうとすると宿主の抵抗にあった。

どうやら名のある騎士らしい。我輩をこともあろうにエビルジュールと誤認し刀をふるってくる。

リーチ差が痛すぎるな。どうしようかと途方にくれていると一人の血まみれの騎士がその騎士を羽交い絞めにした。


「猫殿!隊長のデザイアストーンを!」


「心得た」


我輩が最後のデザイアストーンをみぞおちからほじくり出して破壊するとその騎士はぐったりと倒れた。

羽交い絞めにしていた騎士が脈を取ると無事を確認。ほっとしてもっくんの方を見るとメグミ嬢もどきの首を肩で担ぎ両足首を両手で固定して立っていた。もっくんの両脚に爆裂波動が集中しているのが解る。勝ったな。


「行くのだ!もっくん!」


「もけー!」


そのまま高く舞い上がり、猛スピードでメグミ嬢もどきの股間が天井に叩きつけられた。

屋内限定ではあるがこれがもっくんの必殺技『もっくんバスター』だ。


「君はメグミ嬢の姉妹機か?」


「メグミ……お姉さまを知ってるんですか!?」


「もけ」


ひょっとしてこう切り出せばよかったのか?もっくん、そんな目で見るな。


[Side_ForteⅡ END]

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