第3話 脳筋本領発揮
「フォルテ君。フォルテ君」
「ひよこは嫌だあ!!」
「ひよこって何?」
体を揺すられて目を覚ますとそこは寂れた町だった。
取りあえず死は免れたようだがここは一体どこなんだ。
「そこの男。名をなんと言う」
「フォルテだ」
「猫には聞いてない!ってゆうか猫が喋ったあ!?」
5、6人の見知らぬ女性が目の前に立っている。
何の用だろうか。
「アーサー・ラックスウェルだ」
「エルキュール・イスカンダルだ」
「ではアーサー。我らが宮殿へ案内しよう」
アーサーだけ?何で?
彼女達の本意がつかめない。
「私達は東雲明日香様の使いの者です。若くて美しい男は全て明日香様のために存在します。よってあなたも今日から明日香様の持ち物として宮殿に仕えるのです。いいですね」
「お断りします」
「何ですって?・・・明日香様に逆らう積もりですか?なら、力ずくでも来てもらいますよ」
「給金をいくら出すかによるな」
あんたには聞いてないと思うぞ、エル。
「あなたはお断りします」
「何でだよ」
そりゃあなあ。
俺はエルの体に飛び乗ると肩を叩いた。
「だってお前、美しい男じゃないだろ」
「俺の肉体美が美しくないというのか」
「決まってるだろ。お前は男じゃない。喋る筋肉さ」
「・・・昨日今日あった奴にそんなことを言われるとは・・・」
やばっ。さすがに冗談がすぎたか。
「感動したぞフォルテ!!目からうろこが落ちるとはこのことか!!お前は俺の一番の理解者だあ!!!」
受け入れられた!?しかも喜んでるよ。
もう、うっそぴょん☆とか言えねえ。
「明日香様に逆らうとどうなるか教えてあげます!ルビーブラスト!!」
女の一人が俺達に火炎放射系の呪文を放った。
俺は思わずよけたがエルは直撃を食らったようだ。
あれが奴の今生の言葉とか切なすぎるだろ。
「はっはっは。はっはっはっは」
炎の中、エルは涼しげな顔で立っていた。
直撃を受けた上半身こそ服が焼け、裸になったが火傷一つ負ったようには見えない。
「心頭滅却すれば火自ずから涼し。熱いと思うから熱い。涼しいと思えば涼しい!!」
俺は喋る筋肉を侮っていたらしい。
こいつは本物のバカだ。
「ば・・・化物」
女二人の襟首を両手で掴み放り投げるとエルは呪文を唱えた。
「ルビーハンマー」
炎のハンマーが自由落下する二人を打ち抜く。
彼女らは背中を焼きながら地に伏した。
エルに魔法が使えるとはな。
「筋肉を避けてアーサーを捕まえなさい!」
「「は、はい」」
その発想は間違ってねえよ、あんた。二つの意味でな。
「別に男が減ってもいいけどあんたらは気に入らないね」
カーミラは向ってきたうちの一人を鎧ごとモーニングスターで殴り飛ばし、初音は残る一人の額に戦闘用のぶっといバールをフルスイングしていた。
「エメラルドアイヴィー」
残るリーダー格の女の子は地面から生えてきた蔓で拘束され口にもそれは巻きついた。
どうやらアーサーが唱えた呪文らしい。
「さて。東雲明日香とか言う子のところに案内してもらいましょうか。男の人を独り占めにして町の女の子が恋愛できなくしてる不細工ちゃんを調教しなきゃいけないから」
ということで俺ら5人は宮殿に着いた。
中に案内されるとそこには十数匹のエビルジュールがいるのが解る。
後ろのドアが閉められ鍵をかけられたということはむざむざ罠にはまったということなんだろう。
「あいつらは倒していいのよね」
「答えがないしいいんじゃない」
カーミラは人型のモンスターの周りを回りながらモーニングスターで色んな方向から殴りつけ、それは微動だにせず全身穴だらけになって倒れた。
「必殺。アイアンメイデン」
拍手をしたが肉球がぷにぷにするだけだったよ。orz
くっ。初音が可愛いと言いたげな顔でこっちを見てる。
コホン。倒したエビルジュールの瘴気が抜け、残ったのは全裸の青年だった。
その彼が口から黒曜石を吐き出したところをみるとどうやら宝石を男に飲ませ、エビルジュール化させているようだ。
「!!・・・こうなったら皆フルスロットルでよろしく!戻った男の子を食べられないようにフルスピードでこいつらをシバくよ!!」
「はいよ。それじゃあ俺から行くぜ!ラピスラズリレイン!!」
セフィロトの樹の知識によって呪文を唱えると大量の金属の刃がエビルジュールの群れの頭上に現れ、一斉に降り注いだ。
「俺達の戦いはこれからだ!」
「フォルテ君。それ、何かが終わりそうだからやめて」




