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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第三章 Academy:2nd grade
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第34話 揺るがないカーミラとやっぱりうかつなオルテガ

「オルテガさん。カーミラを学園に送り込んでくれませんか?」


夜、久しぶりに集まって鳳凰亭で食事していたとき明日香がそう切り出した。

何があったのかを聞くと女子更衣室に意識をそらす布【メソラシ布】をかけた映像を記録する装置【ビデオカメラ】がこっそり設置してあったそうだ。そこでカーミラを更衣室に放ちあわよくば犯人を暴こうという腹積もりらしい。

両刃の剣過ぎるだろ、その作戦。カーミラの目がキラリと光った気がするし。


「何もその装置を前もって設置すればいいだろ」


「オルテガさん!?何を考えて……」


「犯人がいればその姿を撮影できるし、チェックは女の先生にしてもらえばいいだろ」


何なら盗撮対策に前もって映像を録画していることを女生徒に伝えてもいい。

例え犯人が女でも学院が対策をとっているとけん制することができる。


「あ!成程……では相葉先生に進言してみることにしますわ」


「え!?じゃあ私の学院行きは!?」


「却下だ」


カーミラをぬか喜びさせたことに満足した俺はワインで喉を潤した。

実際カーミラは「な!?」とか言って真っ白になっている。いい気味だ。


「カーミラ。まだ下着泥棒に拘ってるの?」


「いや。爆裂波動のお陰でいつでも鳳凰人の姿に戻れるし女の子にも普通に触れるから下着に拘りはもうないよ。ただ負けっぱなしはしゃくだし何より学院には可愛い女の子がいっぱいいるからねえ」


そう言ってカーミラは通りすがりのウエイトレスのお尻を触ろうとするも当のメグミに腕をつかまれ捻りあげられた。


「カーミラさん?ここはそういうお店じゃありませんよ」


「あだだあ!?悪かったよ!次は相手を選……ひぐう!?」


更に捻りあげられてる。メグミ、その辺にしないと腕折れるぞ。

と思ってたらペンギンに戻って事なきを得たようだ。

駄目だこいつ。早く何とかしないといつか騎士団に突き出さなきゃいけなくなるかも知れん。


「カーミラ。そういうのは特定の誰かを見つけてそいつとしっぽりやれ」


「つまりオルテガはバムアとしっぽりやってるわけだ」


「そりゃあなあ」


バムアに凍結胡桃を10個ぶつけられ翌日風邪で寝込む破目になった。そこまでやるか。

むくれながらもきっちり看病してくれたけどなんだかなあ。

しかもヒトが休んでる間に勝手に俺を販売員にすんなよ、クラスメートども。


学院祭当日。


「奥さん!ケチャップにソース、ついでにインク。子供がシャツにこぼしちゃった!これ、白く出来る?」


俺は主婦の皆さんの前でワイシャツにケチャップとソースとインクをぶっかける。

観客は苦笑しながら無理無理と声をそろえる。それが実はそうでもない。


「だが注目!ここに取り出したりますこの蒸留石を水に付ければ……これこの通り!!」


俺はそのシャツを水に付け、蒸留石も水で濡らしシャツの汚れた部分をそれで擦ると泡がもこもこでた。

それを水につけるとシャツの汚れはなくなり真っ白に。

皆さんは「おおーっ」と歓声を上げ、拍手してくれる。これ、けっこう気持ちいいな。


「オルテガ。蒸留石で衣服の汚れが落ちないかな」


学院祭の準備中にエルメンガルトがそう切り出した。

汚れた水をきれいに出来るなら服の汚れもきれいに落とせるのではとのこと。

食器類を石で磨くわけには行かないけど衣服なら行けるのではと言われて試してみたら落ちること落ちること。

うちのメイド達の前で試したものだから蒸留石のストックは結構あるのだ。すそに付いたしつこい汚れとかすっきりだもんなあ。

5000ラスクという決してお手ごろではないはずの蒸留石が50個完売し、販売予約まで取り付けてしまった。


「エルメンガルト。お前のアイデア勝ちだな」


「ふふ。大成功だね」


「もけ~!」


『この子は錬金術で造った生きてる作品です』と書かれたタスキをつけたもっくんが両腕に子供をぶら下げてくるくる回っている。

子供も楽しそうだし実は子供好きなのか、もっくん。


「スキンスーツを身に着けても身軽に動ける様でよかったわ」


初音はもっくんのために内臓が飛び出さない透明で伸縮性の高い素材でスキンスーツという全身タイツを作った。

実際カーミラと戦っても内臓が飛び出ることがなくなったが透明なので人体模型だと解るようになっているままだ。


「普通の猿人に見えるようにしたら「もけー」しかしゃべれない事が奇怪に映るかもしれないわ」


「それもそうだな」


そんな感じに学院祭は無事……。


「あの赤ペンギンがスカートめくりしているわ!」


「女子は後列に下がるんだ!」


「早い!?赤いペンギンは化物か!!」


……情にほだされて外出許可なんか出すんじゃなかった。

あんまりにもしょんぼりしてるからついな。


「モップ百烈拳!!」


「ひでぶ!?」


廊下が静かになり小脇に赤いペンギンを抱えたうちのメイド、ハルトヴィヒが顔を出した。

モップを持ったメイド姿で。


「初音さん。午後からお休みをもらったので来ちゃいました」


「いらっしゃい。カーミラ止めてくれてありがとうね、ハルトヴィヒ」


「うん。初音さんに喜んでもらってよかったよ」


主人の俺より初音かよ。かなり惚れてるみたいだな。よし、くっつけるか。

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