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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第三章 Academy:2nd grade
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第29話 ジョンケン家に明日はない

[Side_Irene]


アーサー達と別れて2年半。再開の日まで折り返し地点となった。


「アイリーン。キオルトにはアーデルハイトがいる。波動柔術は神言使いにとって天敵のようなものだろう。組まれたら厄介だぞ」


「私は既に組まれたと見ているわ。アーサー達と戦ったとき神言を使ってドリルちゃんを生き返らせたスコティッシュ・フォールドって猫がいたでしょう」


ブルギットは要領を得ない顔をしていたがようやく思い至ったようだ。


「キオルトのヤマモト家はスコティッシュ・フォールドの毛並みだったな。あれはあそこの猫のホムンクルスだったのか」


そういうこと。あそこは猫人を自分の家系に入れる場合はスコティッシュ・フォールドにこだわる傾向がある。

となるとスコティッシュ・フォールドのホムンクルスはヤマモト家の手のものである可能性が高いのだ。


「だから砲台がいるの」


私の目の前にいるのはかつて獣人ヒトだったモノ。確かアトダーシ・ジョンケンとかいう貴族だ。

金に糸目はつけないから筋肉ダルマよりも強くしてくれとかいうので電気と薬で肉体改造をして外なる気を使えるよう色々と脳みそをいじくったら理性が壊れたので今は呼吸が可能な液体タンクの中で拘束している。

母親は薬漬けにして私の言いなりだし父親はキメラにしてある生き物を復活させるための土台にした。

よってこのジョンケン邸に理性ある形で生息しているのは私とブルギットのみ。

もっとも私達の理性なんて他人から見たら狂気でしかないだろうけどね。


「フタハスルフィルーだったか。竜族と虎人を組み合わせて飛竜として生き返らせるとは神をも恐れぬ所業だ」


獣人ヒトは神にも悪魔にもなれるということよ」


「そのごう慢を誇った旧史以前の人間は当の神と悪魔に滅ぼされかけたがね」


「違いないわ」


私はブルギットの言葉に頷くとフタハスルフィルーの封印を解いた。

フタハスルフィルーにはアトダーシの父親の頭脳を移植している。


「元の体に戻してほしかったらキオルトを火の海にしなさい」


「妻と息子も元に戻してくれるか?」


「そうね。考えてあげるわ」


フタハスルフィルーは翼をはためかすと空高くキオルトへと飛び立って行った。


「君が嘘をつくとは思わなかったな」


「・・・考えるだけよ」


「元の体に戻せないのに元の体に戻すと行ったのは嘘だろう。ミックスジュースからどうやってオレンジだけを取り除くんだ」


「確かに気分のいいものではないわね。ブルギット、私は2年半後にキオルトを火の海にしようと思うの。逃げるなら今よ」


正しくありたいのなら私の共犯になるべきではない。だが彼はそれを否定した。俺は君と共にあると。

そう答えられるのを解っていて聞く私はきっと最悪なのだろう。でもそれで構わない。

私にとって大事なのはアーサーが私を殺してくれるかどうか。それとも私がアーサーを殺すのか。

どっちみち私を溢れさせてくれることには違いはないだろう。

私はほとばしる自分を慰めるためバスルームに向った。


[Side_Irene END]


バムアとの研究でようやく賢者の石を介したディラックの海への連結原理を把握し、トランクの中を亜空間にすることで大量の物を持ち運べるようになったこともあり、初音と採取に行くことを二つ返事で引き受けた。

ああ。アーサーも誘わないとな。

明日香は同級生達と共同研究の日で手が離せず、ジークリットは来たとしても縄で縛って転がしておけばいい。

初音とアーサーをふたりきりにする機会がようやく訪れたと言うわけだ。

まあ、エルぐらいは連れて行っていくか。冒険者がいた方が自然だしな。

目的地であるフィエイ山につくとトランクからメグミやテントや調理用具を取り出した。

そのときの皆の顔はなかなか見ものだったよ。


山頂付近で採取をしていると、明日香にもらったと言う望遠鏡を覗いていたアーサーが飛竜を発見した。

続いて望遠鏡をのぞいたエルによるとイウアーキで戦ったフタハスルフィルーに似ているがあれは水竜だし顔が虎人ではなかったという。

エルは確かに倒したといっているが神言には生命体を生き返らせるものがあるし何より虎人というのが引っかかる。

エルを恨んでいるアトダーシ・ジョンケンは虎人ではなかったか。


「アーサー!アイリーンにキメラを作る技術はあるか?」


「・・・得意中の得意だ」


「となると小手調べにキオルトを襲わせる気なんだろう。どうする!?」


すると初音が山頂に立ち、やってみると呟いた。

一体何を・・・?


「天上に王冠、天下に王国を配し、知恵と理解を手に、慈悲と峻厳を両立し、美しき勝利と栄光を我が手に、基礎たる知識を暁に変えんことを。願わくば悪しきものを打ち払う大いなる槌として!!ダイアモンドメルトおおお!!!!!」


初音の前に生命の樹が浮かび上がり、虹色の光がキメラをあっという間に飲み込みその姿を完全に消し去った。


「リビングデッドとは言え竜族を一瞬で灰にしただと!?」


俺が前に初音に光属性の本をくれたことがあったがそこに書いてあったのはこれだったのか。

初音も成長しているらしいな。良かったかどうかは解らないが。

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