第28話 先約以前に明日香と暴力女じゃはかりにかけるまでもないだろ byオルテガ
[Side_Carmilla]
翌朝、私はもっくんと書庫にいた。
もっくんに波動柔術に関する本を持ってきてほしいと頼んだら駄目だと言う。
のぞきの協力は出来ないって?バカだねえ、そうじゃないよ。
私達は3年後にアイリーンっていう神言使いを倒さなきゃいけないのさ。
なのに私はペンギンだから修行できませんでしたじゃ足手まといになっちまう。
そうならないためにはアーデルハイトに対抗する力を得る必要があると思わないかい?
とどのつまり、桃源郷に行き着くのは自分へのごほうびに過ぎないのさ。
「もけ~」
私がそう説得するともっくんは本を探しにいってくれた。
ウソではないけれどこうも上手く引っかかるとは・・・しょせんは人体模型って言うことかねえ。
さて私は変身時間を少しでも長くするコツのヒントでも探そうか。
ふと何か獣の気配を感じた。
そちらの方を見るとそれはこちらをじっと見るスコティッシュ・フォールドが。
私を狩る気か?だがその猫は私に興味をなくしたかのようにどこかへと去って行った。
[Side_Carmilla END]
「フォルテ君を造ったあ!?」
「しー!しー!」
いくらなんでも研究内容を大声で叫ぶ奴があるか。
近くにある森で材料の採取をしていたらスコティッシュ・フォールドの死骸を見つけ、これも何かの縁かとそれをベースにホムンクルスを造って「フォルテ・ツヴァイ」と名づけたんだが・・・錬金術師とは言えつまるところは研究者だ。自分の研究はそう口外するものじゃない。初音ならいいかと教えたら叫ぶとは思わなかった。もっとも造り方までは教えないけどな。
初音もそれが解っているのか。慌てて口を押さえるも皆こっちを注視している。まずいな。
「無視するな。バカあ!!」
「へぶう!?」
だがジークリットがアーサーを殴ったことで皆の意識がそれ、結局事なきを得た。
あいつの暴力が役に立つこともあるんだな。
俺はため息をつくとジークリットが立ち去ったのを見計らい、アーサーの元へ向った。
[Side_Arthur]
また明日香がお弁当を作ってきてくれた。こっちは昼食代が浮くから助かるけど明日香は大変じゃないのかなあ。
1個も2個も変わりませんわと言ってくれるけど・・・。
「料理の練習にもなるから気にしないで下さいな」
さすがに教室で男女二人がお弁当なんてことをしたらあの二人できてるんじゃないかと誤解されかねない。
そんな噂がたって明日香に迷惑がかかったりなんかしたらもうお弁当作ってもらえないかもしれないしどこか屋上とかに移動する必要があるだろう。
教室を出ようとしたときジークリットがやってきた。
「私、お弁当を作ったんだけどどう?」
「そうなんだ。じゃあ3人で食べようか」
「「(・・・それはない)」」
なんて言ったんだろ?
すると近くにいた王子様が「彼女もあなたにお弁当作ったんじゃないの?」と言って来た。
「そうなの?」
「そうよ!・・・だから二人で・・・って彼女『も』?」
「うん。明日香がお弁当作ってきたから一緒に食べようって話を・・・」
「・・・で。どっちのお弁当を食べるのよ?」
ジークリット?何でそんな目が笑ってない笑顔で聞くのさ。
そんなの先約がある明日香のほうに決まってるじゃないか。
「フォルテ君を造ったあ!?」
「しー!しー!」
アーサーと初音がなんか騒いでる。何だ?
「・・・フォルテって・・・」
何でここでオルテガの前世の名前が出て来るんだ?ひょっとしてホムンクルスが完成したのか。
「・・・無視するな。バカあ!!」
「へぶう!?」
ジークリットは僕を拳で殴ると教室を出て行ってしまった。
オルテガがこっちに向ってくるしちょうどいい。さっきの話詳しく聞かせてもらおうか。
「アーサー。今、ハンカチを水で濡らしてきますわ」
「え?トイレ?」
「バカ!そのはれた頬を冷やさなきゃいけないでしょう!」
「アーサー君。セクハラは駄目だよ」
まさか王子様にたしなめられるとは・・・すみません。
[Side_Arthur END]
結局俺達4人で食事をすることになった。
バムア?あいつは同じ学年の友達と食事してる。
最後の学年ということで卒業制作の話とか色々立て込んでいるんだそうだ。
友達づきあいは大事だよな、うん。
「成程。ホムンクルスは造れるようになったんだね」
「もっくんやフォルテ・ツヴァイのように無生物に命を吹き込む実験は成功しているしホムンクルスもいけると思う。明日香が取ってきた生き物の体毛をベースに新種の生物を作れるだろう」
「お役に立てて何よりですわ」
「それでオルテガ似のホムンクルスを造るの?それともバムア似?」
それはそれで生々しいんだよな。もう子供を作ったのかとか言われかねん
「・・・誰に似せようかで悩んでる」
「カーミラに似せて清楚な女の子にしたら?自分とのギャップにカーミラも改心するんじゃないかしら」
その発想はなかった。
清楚なカーミラねえ。恥ずかしそうに頬を染めて「セクハラはいけないと思います」とささやくカーミラを想像してみた。
なんだこの脂汗。全身に鳥肌がたっているのが解る。この今の気分を一言で表現するとしたらあれしかない。
「気持ち悪い」




