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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第三章 Academy:2nd grade
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第26話 明日香の誓いとアーサーの誤解

[Side_Hatsune]


部屋で一人、ベッドの上で横になっているとドアをノックする音がする。


「明日香ですわ」


「鍵、開いてるよ」


「では失礼します」


明日香が一人入ってきたので私はお茶を淹れることにした。

何の用件かと聞くと「解っているのでしょう?」とのこと。


「はっきりしておきましょうか。あなたはオルテガさんをどう思ってますの?」


「どうって・・・大切な友達だよ」


「でしたらバムアさんとの婚約を祝福できるはずですわ」


あなた、どう見ても怒ってらしたわよね。

言外にそう言っているのだろう。実際、目つきは明らかに責めている。


「オルテガがバムアと結婚することになったのってオルテガの失言が原因なんだよね?ジークリットと結婚するよりバムアと結婚した方がいいって・・・そんなんで婚約者とか決めるのって・・・なんか違わない?」


「きっかけなんかどうでもいいですわ。問題は結果ではありませんこと。バムアさんはオルテガさんとの婚姻を嫌がってはおりませんのよ。彼女からしてみれば相手は裕福な貴族で同じ学院生なのだから錬金術には当然理解があるし、むしろただで助手になってもらえますもの。彼女にとってこれほどの相手はいないでしょうね」


本来ならオルテガはジークリットの家のような金回りのいい家に婿入りしなければいけない立場だったんだからオルテガの現状は破格に好待遇と言っていい。解るけど・・・なんか納得できない。


「なんか・・・キオルトに来てから環境が変わりすぎだよ・・・」


「初音さん。オルテガとキスすることを想像してもらっていいですか?」


「なあに、それ」


明日香は意識調査ですわとしか言わない。

オルテガとキスねえ・・・・・・いやいや、さすがにバムアに悪いでしょう。

でも、想像だけならいいのかな?

オルテガと・・・キス・・・?

何か眉間にしわがよるなあ。フォルテに顔を舐められて目を覚ましたときのことを思い出したよ。


「・・・次はアーサーが私とキスするところを想像して下さいな」


アーサーと明日香がキス・・・・・・あ!ジークリットがアーサーを殴った。


「表情を変えましたわね」


「うん。アーサーが明日香にキスをしようとしたらジークリットがアーサーを殴ったよ」


「初音さんの想像の中でもしゃしゃりますの!?あの暴力女は!!」


むきーっと明日香は地団駄を踏んでるけど明日香、今は夜だよ。下の部屋に人いるよ?


「この際暴力女はどうでもいいですわ。初音さん、あなたはオルテガが好きとかではなくみんなが変わっていくことにやり場のない怒りを覚えてるだけですのね」


「そう・・・なのかな?」


「初音さん。あなた、オルテガやアーサーに告白される妄想とかしたことありますの?逆に振られる夢を見て涙で枕を濡らしたことがありまして?」


はっきり言って、ない。オルテガもアーサーもエルも私に優しくしてくれるけど故郷にいたときも男の子は私に優しくしてくれたしオルテガに再開した時だってフォルテが生き返ってくれたことが嬉しかっただけだ。カーミラは微妙だったけど。

誰しも変わる部分と変わらない部分がある。そう口にする明日香の言葉は解る。でも解りたくない部分もある。


「私、わがままなのかな」


「ようやく自覚しましたの?(アーサーがこの子に想いを寄せてる理由がさっぱりですわ)」


「・・・?後半なんて言ったの?」


「そこまで塩を送る積もりはありませんわ。オルテガはうかつではありますが頭は切れます。あなたが自分をフォルテの延長線上として見ていることは承知の上でしょう。決めました。私、諦めませんから」


そう言うと明日香はカップに入った紅茶を全部飲み干して「失礼しますわ」と言い、自分の部屋の戻って行った。

何のことだろう。私は明日香が何を考えているのかよく解らない。

でも、私は女の子として明日香に劣っている。そんな気がして仕方がないんだ。


[Side_Hatsune END][Side_Arthur]


「初音に告白する前に明日香とジークリットにちゃんとけじめつけろよ」


オルテガの一言がやけに耳に残っている。

何でその二人の名前が出てくるんだろう?

初音は僕がアイリーンから逃げるために協力を願った連中に利用されてた所を助けてくれた。

その強い背中に憧れたし、「なんか君、ほっとけなくて」と微笑んでくれた笑顔は今も脳裏に残っている。

明日香は誰かに気付いて欲しかった。人の和に憧れたから初めて自分に気付いた僕と一緒にいる。

初音に僕が思いを寄せるように明日香も僕に思いを寄せていると言うことだろうか。


「そんなバカな」


僕は女の子にモテルタイプじゃない。体力や魔力はそれなりだし、勉強だってアイリーンと比べられるのが嫌で必死に頑張っただけだ。顔にいたってはエルに女とからかわれるぐらいの女顔ときてる。

そういう理由じゃないのはジークリットと一緒くたにしてる所でも明らかだ。

ことあるごとに殴りかかる人が僕を好きなわけないじゃないか。

明日香は僕に先を越されるのが嫌。ジークリットは僕の幸せが大嫌いとかそんなだと思う。

それを解決しろと言うことなんだろうな。うん。

どうやって解決するんだよ、そんなもの。

頭を抱えたときオルテガに「知るか」と見放された気がした。


[Side_Arthur END]

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