第25話 オルテガは初音争奪戦をログアウトしました
「喜べオルテガ!お前の嫁さんが決まったぞ!」
朝食の席で父さんは妙に上機嫌だった。
そうか俺の婿入り先が決まったか。
「アスペルマイヤー銀行の長女、ジークリット・メルツェーデス・アスペルマイヤー嬢だ。しかも純人間だぞ純人間!」
最悪だな、おい。
どれだけの仕打ちを受けることになるんだよ、俺は。
「で、俺はいつこの家を出るんだ」
その前に全財産はたいてでもバムアから仮死状態になる薬を買って神を調教しに行かないとな。
「オルテガ!?お前、うちを出る気なのか!?」
どうして蒼ざめているんだ父さんは?俺の婿入りの話だろう。
「オルテガ。おじさんは嫁が決まったって行ったんだからオルテガが婿入りするんじゃなくてオルテガがお嫁さんとしてジークリットを貰うんじゃないの?」
「・・・。ちょっと待て!それはあり得ん。俺は次男だぞ!?」
「資金繰りなら気にするな。お前が生まれてからというものうちは金に困ったことがない。それまでは明日食う金にも困っていたのにだ。お前は我が家の福の神なんだよ。うちで婿入りさせられるとしたらきっと俺のほうさ」
そう冗談めかして言ったのは兄のレオナルドだった。
父が言うにはアスペルマイヤー銀行の頭取と賭けポーカーをしたらボロ勝ちし、最後の勝負として頭取が自分の娘をかけて敗北。彼女をいただくことになったんだとか。
人身売買でとっ掴まるぞ!?
「わが家に人間の子供が出来たら御の字だ。そうは思わないか、オルテガ?」
「だったら銀行の経営権を貰えよ!!バムアならともかく、ジークリットなんてポンコツ女要るかあ!!」
いくら人間の子供が出来るかもって言ってもその相手がプリティデビルとかあり得ん。
仮死状態の薬を貰うためバムアの家にお邪魔したことがあるんだが彼女の母親は純人間だったんだ。
ならばバムアと子供を作っても人間が生まれる可能性がある。
狙うならそっちの方が断然いい。
「んむ。ではそうするか」
お?やけにあっさりと引き下がったな。
「・・・オルテガの本命ってバムア?」
ん?アーサー、何を言って・・・あれ?確かにさっきの言い草だと・・・。
「時に友人のお二方、バムア嬢とは一体どちら様か解るかね」
「バムア・クーファンさんですか。僕達の先輩でウェアスクィラルですが母親は純人間です。共同研究のときにお会いしました」
そういえばバムアは助手を造るんだってホムンクルスの研究にアーサーを手伝わせていたな。
明日香とジークリットがそれに付き合って初音と俺も混じって研究していたが明日香とジークリットが張り合って失敗したんだっけ。
「ああいう女性を可憐というのでありましょうな」
エル。お前、他人を評価できるようになってたんだな。・・・じゃなくて!?
「クーファン・・・クーファン・・・聞かぬ名だが片親が純人間と言うのはポイントが高い。アーデルハイト、バムア・クーファンという女性を調べてくれ」
「承知しました」
はめられた。まさかと思うがこれ全部父の策略か?実際4人とも満足げな表情を浮かべてるし。
ん?4人?
「オルテガがさっさと身を固めてくれれば初音が僕を受け入れてくれる確率が上がるなんて考えてないから気にしないでよ。純粋に友人の幸せを願っているだけさ∑d(≧▽≦*)」
「仲良きことは美しきかな」
アーサー・・・お前なあ。
「初音に告白する前に明日香とジークリットにちゃんとけじめつけろよ」
「え?何でその二人の名前が出てくるのさ?」
・・・知るか。
一ヵ月後、アスペルマイヤー銀行はヤマモト銀行に名称を変更。
俺が経営陣の一角に入った途端業績が上がったことで俺はふと思い出した。
俺の魂に賢者の石が組み込まれていることを。賢者の石を手にした者は海の水と同量の黄金を得る、か。
第二学年になり、俺とアーサーと初音の3人は最優秀生徒のクラスに入り、明日香も2番目に優秀なクラスに入ることが出来たそうだ。
エルも冒険者ギルドに入って護衛の仕事に精を出しているらしいし、メグミとカーミラはいつも通り。
「えーと。・・・これからも、よろしくね」
「なんか、巻き込んじまったみたいで・・・すまん」
それとバムア・クーファンが俺の許婚になることが決定した。
しかもうちの父がバムアの母にほれ込んで意気投合。
両方片親なので親子でW結婚式をやろうじゃないかというところまで話が進んでいたりする。
胸こそ大きいがそれ以外は12歳くらいにしか見えない人にほれるとか・・・父よ。
「ふ~ん。そうなんだ」
初音さん?視線が冷たいですよ?
「オルテガと結婚しないで済んだものの、家の収入は激減するわ、ポーカーの賞品扱いされた上に袖にされるわ・・・踏んだり蹴ったりもいいところじゃないの」
ジークリット、解ったから愚痴ってないで自分のクラスに戻れ。
最下級のおんぼろクラスにな。
「・・・鬼」




