第23話 オルテガ痛恨の失言
「カーミラは幼女みたいな神に会ったんだよな」
俺は残虐超人のエピソードから話をそらしたくてカーミラに話を振った。
断言しよう。俺は今酔っている。でなきゃ翌日後悔する破目になることを口にしたりするものか。
「幼女みたいな神?・・・ああ!あの子ね。神様とは思わなかったけど可愛い女の子だったよ」
「俺もその幼女神に会ったんだが鳳凰人って変身能力があるのか?」
俺はフォルテとして死んだとき神に変身能力を持つ鳥にならないかと持ちかけられたことをカーミラに話した。
「変身能力?・・・聞いたことないねえ」
「そう「オルテガ!?」・・・何だ初音?」
初音の顔を見ると顔を引きつらせていた。一体どうしたんだ・・・待てよ。俺は言っちゃいけないことを言ったんじゃないだろうか。
実際カーミラは黙ったまま考え事をし始めてる。
もし仮にこいつに変身能力があったら・・・頼むぜ神様、これ以上こいつをチートにするな。
「げ、ゲオルグとか言ったな!決闘ってどういう意味さ!」
「え・・・ああ。二人の女性を弄んでるから?」
今度はアーサーが話題をそらすため話を戻した。
話が二転三転したせいでこいつのテンションが下がってるな。
俺もこいつのことすっかり忘れてたし。
「お客様。店内で荒事は控えてください」
休憩時間を終えたメグミが早速釘をさしに来た。
「心配するな。酒場での決闘なんて一つしかないだろ」
「ナスティーデビルの股間をどっちが多く蹴り上げられるか、ですわね」
「そうそう。ジークリットの股間をどれだけ蹴り上げられるか・・・じゃねえよ!?それはもう忘れろ!!飲み比べだよ!!一気呑み厳禁でどっちが多く酒を呑めるかだ。負けたほうは代金を支払う。いいな」
明日香、何で不服そうなんだよ。あとナスティーじゃなくてプリティーだ。
ジークリット、涙目でため息つくな。ガキのときならいざ知らずそんなことしねえから。
「ではここで一番強いお酒、デモンズマーダーを用意しますね」
デモンズマーダー。聞いたことないな。この店のオリジナルか。
メグミに聞くとバムアが調合した酒らしい。
「錬金術師ってお酒も調合できるんですのね」
「何でもありなんだろ。きっと」
二人は別の席に移りサシで呑み比べをすることにしたようだ。
俺も試しに一口飲ませてもらったがかなり強い酒だった。
大丈夫かあいつら。
[Side_Megumi]
閉店間際になったので私はゲオルグさんを揺り起こした。
「んあ。・・・何だ?」
「お会計お願いします」
勝者はアーサーさん。呑んだ量こそ少ないけれど寝オチしたらアウトでしょう。
「・・・げえ!?」
領収書を見てゲオルグさんは青ざめた。何しろオルテガさんたちが横で飲み食いした分も入っているからです。
そのからくりをこっそりオルテガさんから教えてもらったので慌ててゲオルグさん用のお酒にバムアさん特性の粉末アルコールを入れて酔いやすくした・・・なんてことはしてませんよ。ええ、してませんとも。
仮にしたとしてもアーサーさんはゲオルグさんが来るまでにお酒を呑んでたんですからハンデです。
「こんな額、いくらなんでも払えないぞ・・・」
貴族とは言っても、いえ、貴族だからでしょうか。一日に使えるお金は決まっているそうです。
「大丈夫です。お皿洗い、楽しいですよ?」
「あは・・・あはははは・・・」
これからゲオルグさんは私や店のみなさんと一緒にお皿洗いです。
あ、ゲオルグさん。お皿を洗う前にお皿の汚れを拭いてくださいね。
[Side_Megumi END]
翌日、俺は頭を抱えることになった。だが断じて二日酔いじゃない。
「誰か助けてえ!?」
「フリーダアム!私は今最高に輝いているわあ!」
燃えるような赤い髪。切れ長の目、背中には鳳凰の翼。
カーミラ・アインシュテルンはバムアに鳳凰人の姿で抱きついていた。
3分間だけ変身可能。ただし、5分後にまた変身できると言うことが解っている。
神よ。何考えてるんだお前は。
「いい加減に・・・しなさあい!!」
初音が強化ゴム製のバールでカーミラの額を打ち抜き事なきを得た。
「酷い目にあったよ・・・」
「バムア、仮死状態になる薬はないか?」
「あるけど、どうするの?」
「神様の所へ殴りこみに行こうかと」
「・・・無料であげるから私も連れてって」
神様への殴りこみは成功し、カーミラは魔法が使えなくなり、変身しないと喋れなくなった。
いや、変身能力をなくしてくれよ。それかカーミラの性癖を修正してくれ。
「セクハラせんカーミラなどカーミラではあるまい?」
「納得するな!納得するな俺!!」




