第21話 図書室ではお静かに
今回はバムア視点です。
フィエイ山からそろそろ帰らないと学期末テストに間に合わない。
それは解っているんだけど何で山の中腹に亜魔族がいるんだろ。
純魔族じゃないから物理攻撃も効くっちゃ効くんだけどやたら耐久力が高いんだよね。
こっちに向って突進してきた亜魔族に手製の爆弾を投げてやり過ごすも大してダメージはなさそうだ。
「純魔族でないだけましだが一体何がどうなっているんだ」
「迷子かそれとも魔界からこぼれたか」
護衛をしている人達も愚痴をこぼしている。デザイアストーンなんて厄介なものもあるしね。
そのときがさがさと草が動いた。風じゃない。明らかに生き物がいる。
現れたのはどこかで見覚えがあるやたら筋肉がある人間だ。
「ぬ。デミデーモンか」
「早く逃げなさい!!人間に死なれちゃたまらないわ!!」
「問題ない。俺はこんなのに負けるわけにはいかないんだ」
そう言うと彼は義腕を天に掲げた。
「ウェイクアップ!!クラッシュハンマー!!」
彼の義腕の拳の部分が青く光り、大きな槌のようになっていく。
Guooooooo・・・。
雄たけびを上げ、デミデーモンが突進して来るのにタイミングを合わせ、そいつの脳天に槌を叩き込んだ。
「灰塵に帰すがいい!!」
デミデーモンは四肢を残して粉々になった。
「助かったわ。ええっと・・・」
「エルキュール・イスカンダルだ」
ああそうそう。そんな名前だった。
確か1年位前の武闘大会できざったらしい貴族をぶちのめしてた人だ。
「私はバムア・クーファン、錬金術師見習いよ。お礼がしたいところだけど私は学院に帰らなきゃいけないの」
「俺はキオルトに行きたいのだがその学院はキオルトにあったりしないか?」
「そうなんだ。じゃあ一緒に行こうか」
彼は護衛としては優秀でエビルジュールを倒しながらキオルトに着いた。
取りあえず酒場・鳳凰亭に行くことにしよう。
「昼間っから酒か?」
「違あう!ここは昼間は喫茶店なのよ。長旅で疲れたでしょう?」
体休めたくないのかなこの人。
「気を使ってくれてすまんな」
「いえいえ」
鳳凰亭の扉を開けるとカウンターにはマリアンヌがいた。
私はロイヤルミルクティ、エルキュールさんはカフェオレを頼み、依頼の品目リストに目を通す。
めぼしいものはないなあ。1年生か2年生用って感じだ。
取りあえず依頼品である鉱石を彼女に渡し、報酬を受け取った。
「バムア。学院って学院生じゃなくても入れるのか?」
「1階部分なら大丈夫だよ。主婦の人がたまに売店で買い物してるし」
「なら行ってみるか」
カフェオレを飲み干すとエルキュールさんはそう言って席を立ち・・・って場所解るの?
「すまない。学院とはどこにあるんだ?」
取りあえず採取したものを自分の工房に運ばないと。
私の工房にそれらを置いてから学院に彼を案内すると図書室の方がなにやら騒がしい。
行ってみると人間の女の子がマウントポジションでアーサー君を殴っていた。
「何してるの!?」
「おしおきよ!」
エルキュールさんはそれを聞くと彼女をを持ち上げた。
「事情を話せ」
「ヒイッ!?」
相手が同じ人間。それも筋肉隆々の男の人に低い声でにらまれては怯えるのも無理はない。
とはいえはマウントポジションはやりすぎだしかばうつもりはさらさらない。
アーサー君がそこまでの事をされるようなことをするとは思えないしね。
彼女が言うにはアーサー君が知らない女の子と仲よさそうに喋っていたのでお仕置きしたとのこと。
「・・・エルキュールさん。一発だけならこの子、殴っていいよ」
「どうしてそうなるの!?だって、驚いたんだから仕方ないでしょ!!」
「あなたはアーサー君の何なの!?アーサー君もやられっぱなしになってないで反抗しなさい!!」
「でも人間を怪我させるわけには・・・」
「・・・何なのって・・・(///o///)ゞ テレテレッ」
「何故照れる?」
アーサー君はその時ようやくエルキュールさんに気付いたらしく「エル・・・」と声をかけた。
「ああ。久しぶりだなアーサー」
「心配したじゃねえか馬鹿野郎!!」
そう言ってアーサー君はエルキュールさんにドロップキックを・・・ってええ!?
「アーサー君!?人間を傷つけるわけにはいかないんじゃなかったの!?」
「こいつはいいんだ!!」
「何を騒いでるの!?」
騒ぎを聞きつけてツインテールの兎人、御厨さんだったかな、が赤い生き物と一緒に入って来た。
頭にブラジャーをかぶった赤い生き物がエルキュールさんのみぞおちに突撃し、御厨さんが「エルのバカあ!!」とシャイニングウィザードを決めた。
「御厨さん!?この人、人間だよ!?解ってるの!!」
「「こいつはいい(んです/のよ)!!」」
赤い生き物が喋った!?・・・じゃなくて誰か事情を説明して・・・。




