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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第二章 Academy:1st grade
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第19話 北条の想い

今回もエル視点です。

どこかで見たような顔だなと思いながら北条鈴奈の肖像画に両手を合わせ涼香の方を向くと一杯の麦茶を出された。


「で。ウチの母さんに何の用があったんだい?」


「神言使いを素手で倒した伝説の真偽を問いたくてな」


俺は彼女にアイリーンとのことを話した。


「なるほどね。世の中にはとんでもない奴がいるもんだ。でも、その伝説はデマさ。母さんが神言使いを倒したのは確かだけど素手じゃない。それは悟おじさんが一番解っているはずだけど・・・でもそういう伝説があるのは確かだからウソをついてるわけでもないんだよね」


どういうことだ。俺は北条に一杯食わされたのか?それとも他に真意があるのか?


「まあいいや。私があんたを家に上げたのは頼みごとがあるからさ。実は・・・」


「大変だ涼香!!海竜が・・・フタハスルフィルーが出た!!」


涼香の知り合いらしき男が急に家の外から顔を出した。海竜・・・竜族だと?


「そんな!!父さんはまだ漁に出てるんだよ!?・・・ごめんエルキュールさん、私は海に行く!!」


「待て。俺も行こう・・・見捨てたくないと命を救ってくれた者の親戚を見捨てるなど俺の矜持が許さん!」


二人で外に出るとさっきまであんなに晴れていた空が暗雲に覆われ今にも雨が降り出しそうだ。

涼香によると海竜が出るときはこんな風に天気が荒れるのだとか。

魔力自動車に乗って港まで行く頃には雨がざあざあと降り注いでいた。


「涼香!?海は危険だ!!」


「父さんは!?」


「・・・まだ戻っていない。あいつが海竜の近くになんか行くわけがないから別の船の若いやつが暴走したんだろう」


「なら行く!身内を失うのはもう真っ平なんだ!」


小船に涼香が飛び乗り、俺も便乗した。


「力仕事は俺に任せろ」


「解った。こぎ方は・・・」


涼香に教わりながら船を動かしていると沖のほうで目的の船を見つけた。

確かに海竜らしきものに大きめの船がモリを打ち込んだり魔法を放ったりしているようだ。


「ルビーブラスト!!」


海竜が大量の水を吐こうとしていたのでそれに向かい火炎放射の呪文を唱え、一気に蒸発させる。

気付かれた。俺は涼香の体を抱え込むと船に向って跳躍し、その船の甲板に降り立つのと海竜が小船を破壊するのが同時だった。


「涼香!?どうして!!」


「父さんが私の立場だったら見捨てるかい?・・・ごめんエルキュールさん。もう下ろして」


「む。すまん」


「それはそうだが・・・この人は?」


「詳しい話は後だ!ルビーブレード!」


炎の刃はよけられた。すばしっこいなこいつ。

海竜は大波を起こし、甲板を襲う。

海に投げ出されないようみんなで連携をとる。


「俺のせいだ・・・俺が欲張って海竜の近くに・・・」


「嘆いているヒマがあったら戦え!!勝てば汚名を挽回できるぞ!!」


「エルキュールさん、汚名を挽回してどうすんのさ!?汚名は返上させてやってくれ!!」


「ポージングのときもそうだが君は初音みたいなことを言う」


「よく解んないけどその初音って人とはうまい酒が呑めそうだ!」


「そのためにも生きて帰らないとな。・・・テメエラ!!生きて帰って祝杯挙げるぞ!!」


甲板の猟師たちが一斉におおー!と声を上げた。

海竜は意外とすばしっこく中々魔法がが当たらない。

すると音楽が流れ、力が湧き上がっていくのが解る。


「悟ほどじゃないが俺の演奏を聴け!」


涼香父がヴァイオリーテを弾いている。あれには魔力を増幅させる力があるんだろう。


「これでも喰らえ!」


さっきの若い漁師が海竜の口に何かを放り込み爆発を起こした。

海にもエビルジュールが出るので持っているらしい。


海竜が船に身を乗り出してきた。ならばカウンターを叩き込むまでだ。

鼻っ面にワン・ツーを入れアッパーカットを決めると海竜は首の角度を変えた。


「エメラルドアイビー」


涼香が海竜を魔力のつたでがんじがらめにする。


「エルフィールさん!つたがあった方が燃えやすいはずだ!」


なるほど。それは道理だな。


「ルビーボール!」


火球を海竜の顔面に放ってやるとそいつは面白いように燃えた。

肉を焼く匂いが辺りにわずかに漂ってくる。

海が荒れてなければ濃厚な匂いになっただろうから何が幸いするか解らない。


海竜は大きく口を開けて涼香を飲み込もうとしていたのを見てとっさに彼女を突き飛ばすもよけきれず俺は海竜に左腕をくれてやってしまった。


「ルビーブラスト」


左腕に意識を送り魔力を海竜の体内にぶち込む。

Guaaaaaaaaa・・・。

正しく断末魔をあげて海竜は海底へと沈んで行った。


「海竜を・・・フタハスルフィルーを倒したぞお!!」


わあっと歓声が湧く甲板の上で俺は気が抜けたのか意識が遠のいていく。


「エルキュールさん!?」

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