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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第二章 Academy:1st grade
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第18話 ご都合主義だっていいじゃないか

今回はエル視点です。

「ぐ・・・」


勝てると思っていた。

だが真実はどうだ。指1本触れられず俺はアイリーンと錬金術師の前に一敗地に塗れているだけじゃないか。


「人間を殺すわけには行かないが実験動物にするぐらいは出来る。薬物で理性を壊して弟君たちを襲わせるのも面白い・・・」


「お巡りさんこっちです!!ライカンスロープが人間を・・・!!」


「これはまずいことになったわね。逃げるよブルギット」


「ふん。運がいい」


二人がそう言って去るも追いかける気力はない。

しばらくすると人影が現れた。警官を呼んでくれた人だろうか。


「・・・手酷くやられたようだな」


そいつはいつぞやのカイゼルひげだった。


「12号。こいつの傷口に軟膏を塗れ」


「はい。マスター」


メグミに似たロボットが俺の傷口に薬を塗り、カイゼルひげは俺に何かを飲ませた。


「何を・・・」


「ホスピタルジュースとヒール軟膏だ。中退したとは言え学院で錬金術を学んでたからな。レベル3までのアイテムなら作れるぞ。怪我はどうだ」


「問題ない。だが何で俺を助けた」


さっきの声は12号と呼ばれたロボットのそれだ。


「力量差のある相手にくじけずに立ち向かう者を見殺しにするほど腐ってはおらんつもりだ」


メグミに爆薬をしかけた男とは思えないな。

俺がそう言うとカイゼルひげは苦笑し、製造者には責任があるからの。と返してきた。

メグミが暴走したら止めなければいけないという理屈は解るが・・・。


「あのウェアラビットにボッコボコにされて病院で怪我を治して帰ったら13号がいなかった。もし、あやつがあの場におったらどんな言動をするかと思ったとき初めて寂しいと思ったのだ」


「いなくなって初めてありがたみに気付いたか。じゃあ取り返しにキオルトまで行くのか?」


「いや。俺はあやつを5万ラスクで売った。それにポンコツ呼ばわりしたり爆薬を仕込んだのに合わせる顔などない。俺はヨコファーマに戻ってまた人の心を持つ機械人形オートマータを作れるよう頑張るつもりだ。成功したら今度は優しく接することを心がけよう」


「なあ。あんた名前は?」


「俺か。俺は北条悟。ウェアカピバラだ」


「俺は人間のエルキュール・イスカンダルだ。Dr北条、助けてくれて有難う」


俺がそう言って頭を下げると悟はきょとんとした顔をしてすぐ気恥ずかしそうに微笑み一人の獣人を紹介してくれた。

ウェアカピバラの北条鈴奈ほうじょうれいな

神言使いを素手でぶちのめした伝説を持つ女傑がイウアーキの町にいるという。

そいつに話でも聞いたらどうかとのこと。

キオルトとは反対方向だが有益な話が聞けるかもしれないな。


一ヵ月後、俺はイウアーキの町にいた。港町だけあって潮の香りが強い。

北条鈴奈という女性を知らないかその辺の人に聞いて回ると彼女は3ヶ月前に流行り病で息を引き取ったらしいことが解った。


「・・・無駄足だったか」


「あんただね。うちの母さんのことを探しているのは」


振り向くとそこにいるのはウェアレッサーパンダの女の子。

母親がウェアカピバラなのに子供がウェアレッサーパンダなのは父親がそれなのだろう。

異なる獣人の子供がまぜこぜになることはないと村の長老から学んでいる。


「北条悟の紹介でな」


「ああ。悟おじさんの知り合いなんだ。じゃあ知らないのも無理ないか。葬儀はイウアーキにいる親族だけで密葬したし」


それなら北条に罪はないな。

親戚なら少しは顔を出せとは思うがあいつの場合は親戚よりも研究の方を重視するだろう。

第一俺も人のことは言えん。親戚の顔なんて見なきゃ思い出せない。

それより悟からの紹介状を見せると取りあえずうちに来てと家に案内してもらった。


「私。北条涼香ほうじょうすずか


「エルキュール・イスカンダルだ」


しばらく歩いていると彼女の知り合いだろう獣人達がこっちを指差しながら声をかけてきた。


「あ!涼香が人間と一緒に歩いてる!」


「うわあ。すげえ筋肉!」


む。筋肉をほめられたら魅せるしかあるまい。

俺は上半身裸になるとポージングしながら肉体美を周りの人たちに見せ付けることにした。


「・・・エルキュールさん。恥ずかしいからポージングしながら付いて来ないでくれる?」


初音みたいなことを言う女の子だ。まあ、嫌がってるのを無理に強行するのは良くないな。

俺は大人しく上半身に服を着て彼女の家にあがることにした。

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