第13話 R-15タグはこいつのために。
夜が明けた。
僕は温泉から出ると素早く服を着て外に出る。
あいつは裏口から入る奴じゃない。正面で待機していればきっと現れるだろう。
「久しぶりね。アーサー」
吐き気がする。気安く人の名前を呼ぶな。
何の用だと尋ねると御厨初音を殺しに来た言う。
そんなことは解っている。
単なる実験なら初音にこだわる理由は無いはずなのに・・・。
「おおありよ、アーサー。あなた目の前で御厨初音を殺す。それが目的だもの」
「僕をそんなに絶望の淵に落としたいか」
「うん♥」
物凄くいい笑顔だな畜生。
「そうかよ」
そんなに僕のことが嫌いならお望み通り散ってやるよ。
お前を道連れにしてな。
「バルスゼー・・・」
術式が完成する前に衝撃が顔を突き抜けた。
誰だ。
「明日香のために君を死なせるわけには行かない」
なんでそこで明日香が出てくるんだよ成龍。
「バルスゼーレ。自分の命と引き換えに確実に相手を殺す神言か・・・アーサー、あなた何か誤解してない?」
そういうアイリーンは面白くなさそうな顔だ。
誤解・・・だと?
「私はね。あなたに睨まれたり蔑まれたり恨まれたりするのがたまらなく好きなのよ。あなたにあんなのは姉じゃないなんて言われたときは体中に電気が走ったわ♥」
恍こつとした表情で何言ってんだこいつ。
「アーサー。アイリーンは君のことを異性として愛しているんだ。それも救いようのないM」
「さっきとは別の意味でバルスゼーレで仕留めたい」
こんなクズの弟として生きるなんて嫌すぎる。
新たに知った真実は僕の頭を痛くするには充分なものだった。
そんなことのためにこのバカ姉は僕の恋路を踏みにじり、兎人を殺させたのか。
「そう!その表情!素敵よアーサー。あなたに憎悪を向けられてるのかと思うとそれだけで・・・溢れてしまいそう」
そう言って変態は顔を赤らめながら下腹部に手を置く。
公衆の面前でなかったらきっと自分を慰めているに違いない。
不意に体がふわっと浮き意識がホワイトアウトする。
「悪いな。アーサー」
成龍!?お前はいつか調教してやるよ!!
[Side_Authur END]
成龍は俺たちの部屋に来ると二人を近くの山に飛ばしたことを告げた。
「で。鳳凰人は一目散に逃げるとして貴殿らはどうする」
「私が逃げるのは確定なのかい?」
「相手は神言使いだぞ。幻想種を殺すことに長けている者と対峙するなど自殺行為だろう」
「フォルテ。初音さんのバトルバールは魔力で再現できますの?それと兎の耳が付いたカチューシャもお願いしますわ」
「初音に成りすますのか」
明日香は無言で頷いた。
「私も戦うわ。守られるのは性に合わない」
「アーサーはあなたの同族を殺してるんですのよ?その人をかばってどうするんですの。私なら気配を殺して彼女の息の根を絶てるかもしれませんわ。それに昼間の弱体化している兎人が勝てる相手だとでもお思いですの?」
「だから何?私を守るために餓死寸前の兎人を殺しただけでしょ。そんな獣人よりアーサーの方が万倍大事だわ。それに放って置いたらアーサーが自爆する可能性もあるんでしょ」
「決まりだな。カーミラはメグミと留守番していてくれ。成龍、俺とフォルテと初音と明日香の4人をその山まで頼む」
エルキュール。お前も行くのか?
「怪我が怖くて旅が出来るか。それに俺は人間だからな。命まではとらないだろ」
「ウェアゴリラと間違われなければな」
「ぬう」
[Side_Authur]
うっそうとしていた森は荒地へと姿を変えていた。
僕と奴の戦いの後だ。
くそっ。もう魔力も尽きかけている。これまでか。
「ふふ・・・私の勝ちね。来なさいアーサー。あなたの目の前で御厨初音と東雲明日香を殺してあげるわ。ああ。あなたはどんな表情を見せてくれるのかしら?」
化物め。こっちは半死半生だって言うのにぴんぴんしてやがる。
それどころか欲情する余裕まであるのかよ。
「何とか生きてるようね」
一陣の風が吹いた。
大の字に倒れた俺の視界に映ったのはキャボット柄のステキな布。
それはぷりんとしているおいしそうな初音の・・・ゴホッゴホッ。
「・・・あなたは寝てて。私があいつを調教するから」
「あ・・・あの・・・私のも・・・見ますか?」
見えてたのばれてる。あと対抗しなくていいよ明日香。
「初音?そうあななたが・・・。初めまして御厨初音。私がアーサーの姉のアイリーンです」
そういうと変態はスカートをつまんで恭しく挨拶をした。
「あなたがアーサーと旅に出たお陰で私は自分を慰めることしか出来なかったの。だからあなたには死んでもらう。あなたが死んだらアーサーがどんな表情を見せてくれるのか想像するだけで溢れてしまいそう」
「世間って言うのは案外広いわね。カーミラを変態だと思っていたけど・・・こいつを見て間違いだと解ったわ」
[Side_Authur END]
キャボットはにんじんです。




