第11話 行き当たりばったりの旅じゃあ反対されるよなあ byフォルテ
俺と明日香は二人で舞台の上で対峙していた。
「白馬に乗った王子様が私に向ってこう囁くんですの」
「姉ちゃん。何色のパンツはいてんの?」
「最悪ですわ!!」
会場はどっかんどっかん盛り上がっている。
一発芸大会の出場者が少なく飛び入りで参加させられる破目になったが猫で腹話術をするドリルツインテはなかなか好評のようだ。
夢見がちな女の子を演じる明日香の妄言を毒舌を吐く猫つまり俺がつっこむという漫才形式の腹話術(ということにしてある)はみんな新鮮なようで老若男女が俺達に注目しているのが解る。
優勝するとは思わなかった。俺、生きる道見つけたかも。
いや、待て。
こんなのは一時的だ。いつかはあきられる。
自分を見失うなフォルテ。
「10万ラスク・・・武闘大会には及びませんが中々の収入ですわね」
「ああ。もう少し芸を磨けば旅芸人一座としてやっていけるな」
「誰が旅芸人一座か」
見ると初音たちがいた。
「違うのか」
「違うよ。私達は・・・私達は・・・」
おい。そこで黙りこくるな。まさか。
「そういえば旅の目的ってないなあ」
初音は家を継ぐのが嫌だから「世界を見てくる」と旅立ち。
カーミラは初音と敵対していたがその内ほれて仲間入り。
アーサーは初音に助けられて仲良くなりたくて同行。
エルは女だけの旅は見てて不安だからと同行。
メグミや明日香に目的なんてあるわけがない。
「何だこの主体性のないパーティ!?」
『えっと・・・すみません』
「デザイアストーンを探しているのではありませんでしたの?」
「もしくは魔王を倒すためとかな」
「魔王って魔法効かないらしいよ。物理攻撃も無効だとか」
それなんて改造コード使ってるんだよ。
でもまあそうだよな。機械文明を崩壊するならそのぐらいの力は無いと・・・。
これからどうするかは宿屋に戻ってから考えようということになりそこに戻ると部屋で明日香の兄、成龍がくつろいでいた。
「あら?お兄様」
『何でお前がここにいる!?』
「明日香さんのお兄さんですか」
成龍がここにきたのは俺達に渡し忘れていたものがあるらしい。
見た目は海中時計だが彼によるとデザイアストーンの探知機だそうだ。
前にとある人物がデザイアストーンを宿した人間を倒した際それを譲り受けこの時計に仕込んだのだという。
これがあればデザイアストーンを宿した者を探せるとか。
そういうものは先によこせ。それと何でアーサーの方をじっと見てるんだ。
まさかそいつを倒したのがこいつとか言わないよな。
とはいえこれで目的が出来たな。
デザイアストーンを宿したものを探してシバくという。
「あとこんなものを倉庫で見つけたので進呈しよう」
それはガントレットらしきもの。
なんでも成龍と明日香の祖父が兎人から貰ったものだとか。
見た感じ手入れがされてないからぼろぼろで使い物にはならないが魔力で再現すればいいだろう。
生地は伸縮性の高い記事で筋肉が増えたり減ったりする兎人に合うものであり、手甲と爪に使われている金属は鋼だ。
金属はメグミのATM鋼を使うが生地はこれでいいだろう。
アーサーにメグミを分解してもらい、ガントレットを新品の状態て具現化する。
成功した。叩いても投げても消える様子はない。
「このガントレット。おばあ様のだ」
「御厨ビスチェ。って名前が刻まれてるね」
ビスチェ。それが初音のばあさんの名前か。
「こんな武器持ってたなんて思わなかったよ」
そう言って愛おしそうに古ぼけたガントレットを撫でる初音を見ると本当に大好きな人なんだろう。
「自分だって戦ってたのに私が旅に出るって言ったら真っ先に反対するとか何考えてるんだろ!」
そう言って初音はそれを握り締めた。
自分と同じ苦労させたくなかったんじゃね。
「ガントレットが出来たけど要らないか?」
「貰うよ。さすがに素手で戦ったら拳痛めるしね。有難うフォルテ君」
「魔法の水だけあって汚れはないね。これなら一晩乾かせば明日には動くんじゃないかな」
「そっか。組み立て頑張ってねアーサー」
「やっぱり手伝ってはくれないんだね」
今度はメグミの口から水が入らないようにしないとな。




