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Lapis philosophorum   作者: 愛す珈琲
第八章 to be torn asunder
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第101話 彼らに出会わなければ自ら死を選んでたわね byフィオナ

今回はフィオナ視点です。

私が生まれたのは、スフォットランドにある小さな片田舎の町。雪が降り積もる朝、赤ん坊の私は教会の前に捨てられていたの。私は生まれつき足が弱くて、まともに歩けなかった。だから、私は捨てられたんでしょうね。それを知っても、神父さんは私を大事に育ててくれた。それには感謝してる。でも……。


「がらくたフィオナが来たぞ!」


町の男の子達はそう言って私を囃し立て、足が悪いのがうつるから近寄るなと泥をぶつけられることもあった。私は彼らを見返してやろうと、運動はできないから勉強を頑張ったわ。でも、彼らは私より成績が下回ると私の教科書を破り捨てた。欠陥品より頭悪いなんて、獣人の恥なんだよって。女子は女子で、最初は私をかばってくれた。ドッヂボールで、重点的に足を狙う男子を叱ってもくれたけど、中学になると女子のリーダー格の子が私のおなかを殴ったの。あんたのせいで、好きな男子に振られたって。その彼は、私のことが好きだったらしいんだけど、私がその男の子を振ったことで振られたんだって。男の子なんて、乱暴で無神経で自己中なのしか知らないから、付き合うなんて気は起きなかったのにね。でも、それからその子主体で、私は女子全員からいじめられることになった。挨拶しても無視する癖に、こっちが挨拶しないと生意気だって全員で私を包囲して責め立てるわ。トイレに入ったら、バケツの水をぶっかけられるわ。そうそう、はさみで無理やり髪を切られたこともあったわね。先生に話しても、みんなで口裏合わせてそんなことは知らない。あの子はそんなことしないってかばって、先生がいなくなると集団リンチするの。「何ちくってんだよてめえ」って。本当に辛かった。神父さんに心配をかけたくなかったから一念発起して、主犯の取り巻きの一人を待ち伏せて石を握った拳でそいつを殴ったら、「あの子に逆らったら、ひどい目にあわされる。私達だって、好きでやってるんじゃない」って泣かれたわ。主犯の子はそれを知ると、私を騎士団に訴えた。私は何もやってないのに、あの子が私の友達を傷つけたって。私は留置所に入れられ、騎士団に今までのいきさつを語ると、あの子の家は貴族だからなあと苦笑された。釈放されて学校に行くと、教室には私の机はなかったわ。犯罪者は、うちのクラスに要らないって主犯が涼しい顔で言ったのよ。私は思わず主犯の顔を叩いた。でも、それ以上に私は殴られたわ。主犯の命令でね。ぼろぼろに殴られて、これは教育だって服をはさみで刻まれたわ。全裸同然の格好で、私は校舎の外へ放り出された。


「明日から、あんたは下着で登校しなさい。それなら、私のクラスに入る権利をあげる。サボっても、迎えに行くから。あんたに服なんて、上等なものは必要ないのよ。欠陥品」


そう言って笑い飛ばす主犯の周りには、10数人の女生徒がいてもう近づくこともできなかった。どうしよう。どうすれば、私の問題は解決できる?


「お嬢さん。君に、サンプルを依頼したい」


「うわあ。いかにも、レイプされましたって格好ですね」


そう言って私に話しかけてきたのは、二人の人間。男性の方はアリストクレス・サンジェルマン、女性の方はヘルメス・トリスメギストスと名乗った。彼らが言うにはある実験のサンプルになってほしいと言う。


サンプル?新薬の治験か何かだろうか。でも、それで死ねるのならそれはいいかもしれない。私は二つ返事で受け入れると、その恰好ではなんですからとヘルメスさんはポンチョをくれた。ありがたくそれをもらい、着いた先は魔王ケムダーが封印されている地、エリンヴァラ。そこには、10人ぐらいの男女が集められていた。


「君も一人なのか?」


私の隣に立っていた男は、私にそう聞いてきた。彼の名前はキム・ジョンファン。身寄りがなく、その日暮らしをしているそうだ。友人を殺され、生きる希望をなくして死のうとしたところをスカウトされたとか。ふうん。


マーリンと名乗る男が、魔王の力で世界を変えるために私たちを魔王化させると宣言して、魔法らしきものを行った。世界はどうでもいい。私は、平穏が欲しいだけだ。でも、そのために力が必要なのなら私は、力が欲しい。


いつのまにか寝ていたらしく、私は夢を見た。それはフィン・マックールの記憶。起きると、13人の少年少女が雑魚寝しており、ジョンファンも寝起きの顔でこちらを見ていた。


「すげえぜ。この力があれば、もう誰かに頭を下げる必要はないんだ」


「ジョンファン?」


「フィオナ。俺は、ダイクヮンミン国に帰る。そして、この力で全ての国民を俺の前にひれ伏せさせてやるんだ!」


私にも力が宿っているのは、気のせいではないらしい。私はポンチョのまま、学校に登校すると主犯はそれを脱がさせるよう命令をした。が、甘い。私はガンドを撃って取り巻きを全員吹き飛ばすと、主犯の目の前に立った。


「何で欠陥品が普通に歩けるのよ。しかも、今のは……魔法?」


「教育してあげる」


そう言って主犯の腹を殴ると、彼女はごぼっと大量に吐血した。そう言えば、マーリンはヒトと魔王では基本的な能力が違うとか言ってたわね。感触からいって、内臓が破裂してるわ。失敗失敗。私が、水をすくって彼女に飲ませると、一命を取り留めたようだ。


「誰か、助けて」


「そう言った私に、あなた何をした?」


「悪くない。私は何も……皆、あんたが悪いのよ。欠陥品のくせにきれいで頭がよくて……親指をなめる変な癖があるくせに、あの人を振るなんて……私と同じ名前のくせに……あんたなんか……あんたなんか死ねばいいんだあ!!」


そう言って、彼女は拳銃を構えて私を撃った。わざわざ、当たってやる義理はないので弾丸を見切ってかわす。


「あんたみたいな奴は生かしておいてもろくなことをしないでしょう。殺してあげる」


距離を詰めて彼女の頭をわしづかむと徐々に力をこめ、頭がい骨を生きたまま砕いていく。その途中で担任の先生が入ってきた。


「助けて先生。私は、何もしていないのに……」


「いじめは犯罪よ、フィオナ。あなたがやったのは暴行罪、名誉棄損罪、器物損壊罪、強要罪。4つも罪を犯してるじゃない。犯罪者はこのクラスには要らないんでしょう?」


「フィオナさん。話し合いを……」


「先生。その段階はすでにもう、終わりました。私たちにあるのは、殺すか殺されるかだけです」


その言葉を最後に、私は主犯の子フィオナの頭を握りつぶしたってわけ。




笹木君は私の話を黙って聞いていた。そして、彼が出した結論は『ヤマタノオロチを倒しに行く』。

ちょっと聞いてた?私の話。


「いじめはダメだ。それは常識だよ。だから、ヤマタノオロチを倒すんだ。あれは、町の人たちをいじめてるからね。大体、復しゅうしたいなら本人だけにするべきだろ」


成程、それは言えてるわね。そこまで言うなら仕方ない。手伝ってあげるわよ。でも、私の望みも聞いてもらうからね。男2人が、渋い顔してるけど今は無視させてもらうわ。


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