第8話 可愛い女の子がいたら先ず口説くのが礼儀 byカーミラ
満月が中天に差しかかった頃、武闘大会は開かれた。
参加者は初音とエルとカーミラとメグミだ。
アーサーはこういうのが好きじゃないという理由で辞退。
俺は「猫はちょっと・・・」と断られた。
明日香も「あの人達と戦うほど命知らずじゃありませんわ」とか言っているが本当はアーサーと一緒にいたいだけじゃないか?
はぐれないようにとか言いつつ腕をからめてるし。
因みに俺は明日香の頭の上に乗っかっている。
これなら先ず俺に気づくので明日香が座っている上に誰かが座るという珍事が起こることを防げるだろう。
さて第一回戦は早速カーミラの登場だ。
対するはウェアスクィラル(栗鼠人)のバムア・クーファンという目がくりっとしていてリスの耳と尻尾が可愛い小柄な女の子。
何か嫌な予感がする。
「カーミラは初戦で敗退だね」
アーサー。俺もそう思うよ。
「仲間の勝利くらい信じましょうよ。アーサー」
「違うんだよ明日香。仲間だから解るんだ。カーミラが負けるって」
戦いのゴングが鳴るなりカーミラはバムアの両手を握り私と付き合わないかと口説きだした。
お前、初音に惚れてるんじゃなかったのか?
彼女は青ざめた顔でその手に噛み付くとカーミラに10個くらいのクルミを投げつけるとそれらは全てカーミラに直撃。
氷漬けになったところをバムアにドロップキックで蹴り倒され10カウントで敗北した。
魔力をくるみに変換するのは栗鼠人が持つスキルだそうだ。
「いやあ。負けた負けた」
氷を解かされた誰かさんが何故かこっちに来やがった。
「「「あ。すみません。仲間だと思われたくないんで話しかけないでもらえますか?」」」
「みんな酷い!!」
奇しくもアーサーや明日香と全く同じ文言でバカーミラを拒絶したのだが仲間って感じがするなあ、これ。
メグミがデコピン一発で勝ったりするなど他の参加者が勝敗を決めていく中エルの出番が来た。
すると観客席、特に女性達が黄色い悲鳴を上げる。
エルの対戦相手はウェアタイガー(虎人)のアトダーシ・ジョンケンだ。
確かに顔は整ってて美形だがもう少しましな名前はなかったのか?
「アティ様あ!そんな筋肉ダルマやっつけちゃってえ!!」
「アティ様に不細工がもっと不細工にされちゃうのお!?かわいそう(笑)」
「アティ様かっこいい!!抱いてえ!!」
アトダーシは前髪をたくし上げると右手の人差し指を空に向って突き立てた。
「この会場にいる子猫ちゃん達に誓おう!彼を一分以内に僕にひれ伏せさせると!!」
会場がきゃあああっと黄色い声で支配され・・・がっぺむかつく。
「エル!!顔だ顔!!その後出しジャンケンの鼻っ柱へし折ってやれ!!」
思わずそう叫んだ俺はきっと悪くない。
実際それを皮切りに男達がエルを応援する声を上げ始め、女達はそれに反発し、男の嫉妬醜いとかアティ様に暴言吐くなとか騒ぎになりかけ、予定より早くゴングが鳴った。
あ、そうそう。明日香とカーミラはちゃんとエルを応援してるぞ。
ん?アトダーシがエルに何か小声で話しかけてる。何だ?
「スーパーウルトラグレートゴージャスエレガントスペクタクルハイパワーアルティメットデラックスアトダーシアッパーカーット!!!」
アトダーシのアッパーを上体をそらしてよけ、彼の体がまだ伸びきってる状態でエルは鼻っ面に右ストレートをぼかあん!!と決めた。
体ごと吹っ飛びアトダーシは両方の鼻の穴から豪快に鼻血を出している。
すっきりしたぜエル!
「は、話と違うじゃないか!?」
何の話だ。
「戦いの場に立つ者が手加減・・・ましてわざと負けるなど屈辱以外の何者でもないだろう」
「ぼ、僕はジョンケン家の御曹司だぞ!こんなことしていいと思ってんのか!?」
殴られるのが嫌なら戦いの場に出るなよ。
明日香によるとジョンケン家はここら一帯を治める貴族で自分をアピールするために貴族の自分に逆らわないように脅したうえで勝とうとしたんだろうとのこと。
だがあの喋る筋肉にそんな配慮が出来るはずがない。
「強いものが勝つ。それがルールだ」
エルはそう言うとまだ寝そべってるアトダーシの顔面を蹴り飛ばし、失神させた。
勝者はもちろんエル。
因みにあれに黄色い声を上げていた女達だが顔がボコボコになった彼を見て冷めたらしく「八百長持ちかけるとか最低」とか「あの顔見て。キモーイ」とか「あんたあいつに抱いてとか言ってなかった」という問に「やめてよ。あんなの趣味なわけないじゃん。空気読んだだけよ」とか言いたい放題。
なんだかなあ。
そして1回戦最後。初音の出番になった。
対戦相手は手足の生えたカプセルに乗ったあのときのカイゼルひげ。
「イーヴニット」
あれがメグミの言ってたやつか。




