Prologue『予兆』
記念すべき初作品です。
この小説は、今後投稿予定の犯罪シリーズ第1作目になります。
「所詮、人の構想は人の構想。人が解読できるのは当たり前。」
「君も、そう思わないか」
「・・・・・・」
また、始まった。
警部は大きい事件を前にすると、自信を持つためにこう言うのが癖だ。
今、向かっているのは、ある山奥に位置する別荘だ。
そこで1ヶ月間住むことを決めた6人のうち1人に、指名手配中の連続殺人犯からの殺害予告が来た。
それを受けて、殺害を未遂で終わらせると共に指名手配犯を逮捕すべく、
こうして警部と別荘へ車で急いでいるのだった。
しかし、今日の足取りは非常に重いものだった。
『この事件を解決できなければクビにする』と、上から直々に言われたのだ。
ここ5年程はずっと、この警部と2人組で事件捜査をやってきた。
だがここ最近は、犯人に対しての負け戦が続いていた。
それを見かねた署長が、こうして準・解雇宣言をしたわけなのだ。
窓から見える単調な景色も相まって、心は暗くなるばかりだった。
そうして窓の外をただ淡々と眺めていると、急に開けた場所に出た。別荘に着いたのだ。
「おい、着いたぞ」
そう言われるまで、ここが目的地であるのを忘れていた。
駐車場に止められている車は自分たちの車だけだった。
初め、その事は気にしていなかった。
「さっさと行くぞ。今度の事件も生半可なものじゃないんだ。」
「あ・・・はい。」
警部に急かされて、足取りをはやめた。はやめ過ぎたか、今度は警部にゆっくり歩くよう言われた。
車から見たときには綺麗な別荘も、いざこうして近づいてみると補修の跡が多く見られる。
別荘の壁を気にしている間に、警部はインターホンを押した。
しかし返事がない。誰かが迎えに出る気配もない。ドアの鍵もしっかり閉められている。
ここで、先ほどは気にしなかった『家主の車が1台もない』ことが気になった。
警部もそれに気づいたようで、
「ここの6人は出かけちまったのか?」と放った。
その時、山道の方から1台の車がこちらに向かってきた。
その車は別荘の駐車場に止まり、中から別荘の住人と思われる人たちが降りてきた・・・。