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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第98話 和田家、最初の崩れ

和田義盛が沈黙を選んで三日目。


──鎌倉の空気は、昨日よりもさらに重かった。


「和田殿の家臣が……動いているらしい」

「京の影が、和田家の中に入り込んでいる」

「義時殿は……どうするのだろう」


(鎌倉は今、

 “音のしない崩壊”の真ん中にいる)


義時が政子の屋敷へ駆け込んできた。


「姉上……!

 和田家の家臣が……

 “勝手に兵を集め始めた”との報せが……!」


私は即座に立ち上がった。


「義盛の命令ではないわね」


義時は苦い顔で頷いた。


「はい……

 和田殿は“知らぬ”と言っています」


(来た……

 “裏切りは本人ではなく、周囲から始まる”

 その典型)


「義時。

 これは“和田家の内部崩壊”よ」


義時の表情が変わった。


「姉上……

 和田殿は……

 もう止められないのでしょうか」


「まだよ。

 でも──

 “時間”はもう味方ではない」



──和田義盛の屋敷。


義盛は、

家臣たちの騒ぎを前に、

ただ立ち尽くしていた。


「殿!

 京は義時殿を朝敵と見ております!」

「鎌倉が滅びる前に、

 和田家は動くべきです!」


義盛は怒鳴った。


「黙れ!

 私はまだ決めていない!」


しかし──

家臣たちは止まらなかった。


「殿が決めぬなら、

 我らが決めます!」


義盛の顔が青ざめた。


「お前たち……

 私を差し置いて……

 勝手に動く気か……!」


家臣の一人が言った。


「殿。

 “決めない”というのは、

 最も危うい選択にございます」


義盛は拳を震わせた。


(義盛……

 あなたの迷いが、

 家臣たちを“暴走”させ始めた)



──政所。


義時が報告を伝えると、

御家人たちの空気が一気に変わった。


「和田家が……勝手に兵を……?」

「これは……裏切りでは……?」

「いや、義盛殿はまだ……!」


義時は声を張った。


「皆!

 和田殿は裏切っていない!

 動いているのは“家臣”だ!」


しかし──

その言葉に反応したのは、

昨日とは別の御家人だった。


「義時殿。

 家臣が動けば、

 それは“家”が動いたのと同じだ」


空気が凍った。


義時は言葉を失った。


(義時……

 あなたは“正しさ”で戦おうとしている。

 でも今必要なのは“空気を変える力”)


私は前に出た。


「皆。

 和田家の家臣が動いたのは事実よ」


ざわめきが広がる。


「でも──

 それは“和田義盛が裏切った”からではない」


空気が止まった。


「義盛は迷っている。

 迷っている主の周囲は、

 必ず“暴走”する」


義村が息を呑んだ。


「つまり……

 和田殿を支えれば、

 家臣たちも止まる……?」


「ええ。

 “主を支える”ことが、

 “家を守る”ことになるのよ」


御家人たちの表情が変わった。


義時は深く頭を下げた。


「皆……

 和田殿を信じてほしい。

 彼は鎌倉を裏切らない」


(義時……

 あなたの声が、

 ようやく“鎌倉の空気”を変え始めた)



──その頃、京。


後鳥羽院は報告を聞き、

静かに笑った。


「和田家の家臣が動いたか。

 良い兆しだ」


侍従が言った。


「鎌倉は政子様と義時殿が

 和田殿を支えております」


後鳥羽院は扇を閉じた。


「ならば──

 “家臣”から崩す」


行成は息を呑んだ。


(政子殿……

 京は本気で“和田家”を奪いに来る)



──夜。


政子は灯りの下で筆を取った。


(頼朝さん……

 鎌倉は今、

 “静かな崩れ”の真ん中にいる)


筆が走る。


「……和田家。

 この家の揺れが、

 鎌倉の未来を決める」


政子は筆を置いた。


静かに、

しかし確かに──

鎌倉の底が、またひとつ鳴った。


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