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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第97話 揺れる和田、動き出す影

和田義盛が沈黙を選んで二日目。


──鎌倉の空気が変わった。


昨日までの“静かな割れ目”が、

今日は“見えない圧力”へと形を変えていた。


「和田殿は……まだ決めていないらしい」

「京の影が動いている」

「義時殿は……大丈夫なのか」


(鎌倉は今、

 “音のしない崩れ方”をしている)


義時が政子の屋敷へ現れた。

その顔は、昨日よりもさらに険しい。


「姉上……

 和田殿の家臣の一部が、

 “京と通じている”という噂が……」


私は即座に言った。


「噂じゃないわ。

 京はもう“和田の周囲”を固め始めている」


義時は息を呑んだ。


「姉上……

 和田殿は……

 京につくのでしょうか」


「まだよ。

 でも──

 “周り”が先に動く可能性はある」


義時の表情が変わった。


(そう……

 義時はようやく気づき始めた

 “裏切りは本人ではなく、周囲から始まる”)



──和田義盛の屋敷。


義盛は、

京からの密書を前に、

深く息を吐いていた。


「……政子様は、

 私を信じると言った」


そこへ、

家臣の一人が駆け込んできた。


「殿……!

 京の使いが……

 “再び”鎌倉に入ったとの報せが……!」


義盛の目が揺れた。


「またか……

 院は……

 どこまで私を揺らすつもりだ……」


家臣は言った。


「殿……

 京につくべきだという声が、

 家中でも増えております」


義盛は拳を握った。


「……私は……

 まだ決めていない」


家臣は静かに言った。


「殿。

 “決めない”というのは、

 最も危うい選択にございます」


義盛は言葉を失った。


(和田義盛……

 あなたの迷いは、

 もう“家中の迷い”になっている)



──政所。


御家人たちが集まっていた。

しかし、昨日までのような議論はない。


代わりに──

“視線”が飛び交っていた。


「和田殿は……どう動く」

「義時殿は……大丈夫なのか」

「政子様は……何を考えている」


義時が前に出た。


「皆。

 和田殿は裏切っていない。

 疑うのは早い」


しかし──

その言葉に反応したのは、

昨日とは別の御家人だった。


「義時殿。

 和田殿が裏切っていないのは分かる。

 だが……

 “和田の家臣”はどうだ」


空気が止まった。


義時は言葉を失った。


(義時……

 あなたは“本人”しか見ていない。

 でも今揺れているのは“周囲”)


私は前に出た。


「皆。

 和田殿の家臣が揺れているのは事実よ」


御家人たちがざわつく。


「だが──

 それは“和田殿が揺れているから”ではない」


空気が変わった。


「和田殿は、

 “まだ決めていない”。

 だからこそ、

 周囲が勝手に動き始めているのよ」


義村が息を呑んだ。


「つまり……

 和田殿を支えれば、

 家臣たちも戻る……?」


「ええ。

 “揺れる主”には、

 “支える仲間”が必要なの」


御家人たちの表情が変わった。


義時は深く頭を下げた。


「皆……

 和田殿を信じてほしい。

 彼は鎌倉を裏切らない」


(義時……

 あなたの声が、

 ようやく“鎌倉の空気”を変え始めた)



──その頃、京。


後鳥羽院は報告を聞き、

静かに笑った。


「和田の家臣が揺れ始めたか。

 良い兆しだ」


侍従が言った。


「鎌倉は政子様と義時殿が

 和田殿を支えております」


後鳥羽院は扇を閉じた。


「ならば──

 “家臣”から崩す」


行成は息を呑んだ。


(政子殿……

 京は本気で“和田家”を奪いに来る)



──夜。


政子は灯りの下で筆を取った。


(頼朝さん……

 鎌倉は今、

 “見えない線”で分かれ始めている)


筆が走る。


「……和田義盛。

 この男の周囲が動き始めた」


政子は筆を置いた。


静かに、

しかし確かに──

鎌倉の底が、またひとつ鳴った。


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