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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第90話 揺らぎの種、鎌倉の土に落ちる

頼朝が逝って七日目。

鎌倉はまだ喪に沈んでいた。


しかし──

その静けさの底で、

確実に“何か”が動き始めていた。


「京からの密命……」

「北条義時を糺問せよ……?」

「鎌倉は……どうなる……?」


町の声は震え、

御家人たちの表情には不安が浮かんでいた。


(そう……

 京の刃は、鎌倉の“心”に刺さる)


義時が政子の屋敷へ現れた。


その顔は、

これまでで一番強張っていた。


「姉上……

 御家人たちの間で……

 “義時殿は京に睨まれている”

 という噂が広がっています」


私は静かに頷いた。


「広がるわよ。

 京の密使が“わざと”言い残していったのだから」


義時は拳を握った。


「姉上……

 私は……

 鎌倉のために働いてきたのに……

 なぜ……!」


私は義時の肩に手を置いた。


「義時。

 あなたが“鎌倉の柱”になり始めたからよ。

 京はそれを恐れている」


義時は息を呑んだ。


(義時……

 あなたはまだ気づいていない。

 あなたの存在が、京にとって“脅威”になり始めていることに)



──政所。


御家人たちが集まっていた。

その空気は、

昨日よりもさらに重かった。


義村が口を開いた。


「義時殿……

 京の密使が言っていた“糺問”の件……

 本当に無視してよいのか……?」


義時は強張った声で言った。


「無視するしかない。

 鎌倉は京の命令で動かない」


しかし──

その言葉は空気に吸い込まれ、

誰の心にも届かなかった。


(そう……

 義時はまだ“光”ではない)


別の御家人が言った。


「だが……

 京が本気で義時殿を疑っているなら……

 鎌倉は……

 朝敵と見なされるのでは……?」


空気がざわめいた。


義時の顔が青ざめる。


「私は……

 何もしていない……!」


義盛が低く言った。


「義時殿が潔白なのは分かっている。

 だが……

 京が“そうではない”と言えば……

 それが事実になる」


(来た……

 京の“影の論理”)


私は前に出た。


「皆。

 京の言葉に惑わされないで」


御家人たちの視線が集まる。


私は続けた。


「京は“北条を揺らせば鎌倉が揺れる”と

 考えている。

 だから──

 義時を狙ったのよ」


義村が息を呑んだ。


「つまり……

 京は鎌倉を割ろうとしている……?」


「ええ。

 “内部崩壊”こそ、

 京の狙いよ」


御家人たちの表情が変わった。


義時は震える声で言った。


「姉上……

 私は……

 どうすれば……?」


私は義時の手を握った。


「義時。

 あなたは揺れないこと。

 揺れなければ、

 鎌倉は揺れない」


義時の目に、

強い光が宿った。


「……はい」



──その頃、京。


後鳥羽院は、

鎌倉の動きを聞きながら微笑んでいた。


「北条義時……

 揺れ始めたか」


侍従が言った。


「院……

 鎌倉はまだ喪に沈んでおります」


後鳥羽院は扇を閉じた。


「喪こそ……

 揺らすには最適の時だ」


(来た……

 京の“本気の攻勢”)


後鳥羽院は静かに言った。


「行成。

 そなたの役目は……

 これからが本番だ」


行成は目を閉じた。


「……承知いたしました」


(政子殿……

 あなたの光は、

 京を刺激しすぎた)



──夜。鎌倉。


私は灯りの下で筆を取った。


(頼朝さん……

 あなたの死は、

 京を動かし、

 鎌倉を揺らした)


筆が走る。


「……京は“内部崩壊”を狙う」


私は静かに笑った。


──悪女は、

揺らぎの種が落ちる瞬間を見逃さない。


そしてこの日、

**京の密命は鎌倉の土に落ち、

御家人たちの心に“揺らぎの種”を植えつけた。

戦の影は、確実に近づいている。**


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