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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第88話 京の刃、鎌倉の喪を裂く

頼朝が逝って五日目。

鎌倉はまだ深い喪に沈んでいた。


町の声は小さく、

人々の足取りは重い。


「鎌倉殿が……本当に……」

「政子様は……どうされているのか……」

「北条殿が前に出るのか……?」


(そう……

 光を失った町の空気)


義時が政子の屋敷へ駆け込んできた。


「姉上……!

 京からの使者が……

 “鎌倉殿の死を悼む”と称して

 政所へ向かっています……!」


私は息を吸った。


(来たわね……

 “悼む”という名の刃)


「義時。

 京は弔問などしないわ。

 これは“探り”よ」


義時は顔を強張らせた。


「姉上……

 京は……

 鎌倉の内部を見に来た……?」


「ええ。

 “空白”を確かめに来たのよ」



──政所。


京からの使者が到着した。


その男は、

深い喪服をまとい、

静かに頭を下げた。


「鎌倉殿のご逝去……

 誠に痛惜に存じます」


その声は柔らかい。

だが──

その目は笑っていなかった。


義時が前に出た。


「ご丁寧に……

 しかし、鎌倉は今、

 喪に服しております。

 用件は簡潔に願いたい」


使者は微笑んだ。


「もちろん。

 ただ──

 院よりの御言葉を

 お伝えに参っただけにございます」


私は息を呑んだ。


(“院より”……

 つまり後鳥羽院の直言)


使者は文を取り出した。


「院のお言葉──

 “鎌倉の次の形、

 しかと見届ける”」


政所の空気が凍った。


義村が低く言った。


「……見届ける……?」


義盛が眉をひそめた。


「それは……

 鎌倉の内情を……

 京が“監視する”という意味か……?」


使者は微笑んだまま言った。


「鎌倉が乱れぬよう、

 院は“お心を寄せておられる”のです」


(お心を寄せる……

 つまり“揺らす”ということ)


義時が一歩前に出た。


「京は……

 鎌倉を疑っているのか」


使者は首を振った。


「疑ってなどおりませぬ。

 ただ──

 “北条が力を握りすぎている”

 という声が、

 京にも届いておりますゆえ」


政所がざわめいた。


義時の顔が強張る。


(来た……

 京の“刃”が)


私は前に出た。


「その声は、

 京が流したものよ」


使者の目が細くなった。


「政子様……

 そのような言い方は……」


「事実よ。

 京は“北条を揺らせば鎌倉が揺れる”と

 考えている」


使者は微笑んだ。


「政子様は……

 相変わらず鋭い」


(褒め言葉ではないわね)


私は続けた。


「京に伝えて。

 鎌倉は揺れない。

 北条は揺れない。

 そして──

 私は揺れない」


使者の笑みが消えた。


「……承知いたしました」



──政所を出た後。


義時は深刻な顔で言った。


「姉上……

 京は……

 鎌倉を“敵”と見なした……?」


私は静かに頷いた。


「ええ。

 頼朝さんの死で生まれた“空白”を、

 京は埋めに来たのよ」


義時は拳を握った。


「姉上……

 私は……

 鎌倉を守ります」


私は義時の肩に手を置いた。


「義時。

 これからの鎌倉は、

 あなたと私が作るのよ」


義時の目に、

強い光が宿った。



──夜。


私は灯りの下で筆を取った。


(頼朝さん……

 あなたの死は、

 京を動かし、

 鎌倉を揺らした)


筆が走る。


「……京は“刃”を送った」


私は静かに笑った。


──悪女は、

刃の影を見逃さない。


そしてこの日、

**京は“弔問”を装い、

鎌倉の内部へ刃を送り込んだ。

鎌倉と京の衝突は、もう避けられない。**


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