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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第84話 鎌倉、空白の朝

頼朝が逝った翌朝。

鎌倉の空気は、

まるで色を失ったように沈んでいた。


「鎌倉殿が……亡くなられた……」

「本当に……?」

「これから……どうなる……?」


町の声は震え、

人々の足取りは重かった。


(そう……

 光を失った町の空気)


義時が政子の屋敷へ現れた。


その顔は、

昨夜よりもさらに強張っていた。


「姉上……

 御家人たちが……

 政所に集まり始めています」


私は静かに頷いた。


「行きましょう。

 鎌倉は……

 今日から“新しい空気”を必要とするわ」



──政所。


御家人たちが集まっていた。

その空気は、

悲しみよりも“恐れ”が勝っていた。


「鎌倉殿がいない鎌倉など……」

「朝廷はどう動く……?」

「北条は……どうする……?」

「政子様は……?」


義時が前に出た。


「皆……

 落ち着いて聞いてほしい」


しかし声は震えていた。


(義時……

 あなたも揺れているのね)


私は義時の隣に立ち、

静かに言った。


「頼朝さんは亡くなりました。

 でも──

 鎌倉は終わらない」


御家人たちの視線が集まる。


私は続けた。


「頼朝さんの光は消えた。

 でも……

 光は“受け継ぐもの”よ」


義村が低く言った。


「政子様……

 では、これからの鎌倉は……?」


私は静かに答えた。


「私と義時が守るわ」


御家人たちの表情が変わった。


「政子様が……?」

「北条が……鎌倉を……?」

「政子様が光になるのか……?」


空気が、

わずかに動いた。


(そう……

 光は“誰かが灯す”もの)


しかし──

その空気を切り裂くように、

一人の御家人が声を上げた。


「だが……

 北条が力を握りすぎているのではないか……?」


空気が凍った。


義時の顔が強張る。


「何を……!」


別の御家人が続けた。


「朝廷からの密書……

 “北条義時、朝廷に背く”と……

 あれは本当なのか……?」


義時は息を呑んだ。


(来た……

 京の影が、ここで形を持った)


私は一歩前に出た。


「その文は“影”よ。

 京が鎌倉を揺らすために送ったもの」


御家人たちがざわめく。


「影……?」

「京が……?」

「では……北条殿は……?」


私は静かに言った。


「義時は潔白よ。

 疑う必要はないわ」


義時が震える声で言った。


「姉上……」


私は続けた。


「京は、

 “北条を揺らせば鎌倉が揺れる”と考えている。

 だから──

 義時を狙ったのよ」


御家人たちの表情が変わった。


「京が……?」

「鎌倉を揺らすために……?」

「北条殿を……?」


義時は深く頭を下げた。


「皆……

 私は鎌倉のために働いてきた。

 これからも……

 鎌倉のために働く」


その声は震えていたが、

確かな覚悟があった。


私は義時の肩に手を置いた。


「義時。

 あなたは一人じゃないわ」


御家人たちの空気が、

少しずつ落ち着いていく。


(そう……

 光は“空気を整える力”)



──政所を出た後。


義時は深く息を吐いた。


「姉上……

 私は……

 まだ頼朝様の代わりには……」


私は首を振った。


「義時。

 あなたは頼朝さんの代わりじゃない。

 “あなた自身の光”を持てばいいのよ」


義時は目を閉じた。


「……姉上……

 私は……

 覚悟を決めます」


私は静かに頷いた。


「ええ。

 これからの鎌倉は、

 あなたと私が作るのよ」



──夜。


私は灯りの下で筆を取った。


(頼朝さん……

 あなたの光は消えた。

 でも──

 鎌倉はまだ終わらない)


筆が走る。


「……京が次の手を打つ」


私は静かに笑った。


──悪女は、

光の空白を恐れず、

新しい光を灯す。


そしてこの日、

**鎌倉は“光を失った朝”を迎え、

北条政子と義時の時代が静かに始まった。**


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