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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第76話 静けさの底に、死の影

京の影を二度焼き払った翌朝。

鎌倉は、奇妙なほど静かだった。


「政子様……

 今日は、町がやけに静かです」


侍女の言葉に、私は耳を澄ませた。


(そう……

 これは“影が潜った時”の静けさ)


義時が屋敷へ駆け込んできた。


「姉上……!

 鎌倉殿の具合が……

 優れぬとの報せが……!」


私は息を呑んだ。


「頼朝さんが……?」


義時は頷いた。


「昨夜から床に伏しておられると……

 医師が呼ばれました」


胸の奥が冷たくなる。


(京の影……

 その直後に頼朝さんの病……

 偶然ではない)


私は立ち上がった。


「行きましょう」



──頼朝の館。


部屋に入ると、

頼朝は枕元に身を起こし、

苦しげに息をしていた。


その姿は、

いつもの威厳とは違う。

光が弱まりつつあるように見えた。


「政子……

 来てくれたか……」


私はそばに座った。


「頼朝さん。

 どうしたの……?」


頼朝は微笑んだ。


「大したことはない……

 ただ……

 少し胸が苦しいだけだ」


(その“少し”が一番危ないのよ)


医師が控えめに言った。


「政子様……

 鎌倉殿は……

 しばらく静養が必要です」


義時が眉をひそめた。


「医師殿……

 鎌倉殿の病は……

 重いのですか……?」


医師は言葉を濁した。


「……今は断言できませぬ」


(断言できない=悪い兆し)


頼朝は私の手を握った。


「政子……

 私は……

 まだやることがある……

 鎌倉を……

 お前と共に……」


私は静かに言った。


「頼朝さん。

 今は休んで。

 鎌倉は……

 私と義時が守るわ」


頼朝は目を閉じた。


「政子……

 お前が……

 光だ……」


その声は弱かった。



──館を出た後。


義時は深刻な顔で言った。


「姉上……

 鎌倉殿の病……

 ただの病ではない気がします」


私は頷いた。


「ええ。

 “空気”が変わったわ」


義時は息を呑んだ。


「京の影……

 鎌倉殿にまで……?」


「影は人の心にも、体にも落ちるものよ」


義時は震えた。


「姉上……

 もし……

 鎌倉殿に何かあれば……

 鎌倉は……!」


私は義時の肩に手を置いた。


「義時。

 あなたがいる。

 私がいる。

 鎌倉は揺れないわ」


義時は深く頷いた。


「姉上……

 私は……

 必ず鎌倉を守ります」


(義時……

 あなたの覚悟が、

 これからの鎌倉を支える)



──夜。


私は灯りの下で筆を取った。


(頼朝さん……

 あなたの光が弱まりつつある。

 でも──

 光が弱まる時、

 影は必ず動く)


筆が走る。


「……京が次の手を打つ」


私は静かに笑った。


──悪女は、

光の揺らぎを見逃さない。


そしてこの日、

**鎌倉に“死の影”が落ち始め、

京と鎌倉の均衡が静かに崩れ始めた。**


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