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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第71話 京、鎌倉の光を恐れる

行成が京へ戻ったのは、

夕暮れが朱に染まる頃だった。


都の空気は、

鎌倉とは違う静けさをまとっている。

柔らかく、しかしどこか濁っている。


(ああ……

 この空気だ。

 私は……

 この空気に縛られていた)


行成は、

後鳥羽院の御所へ向かった。


侍従が低く告げる。


「行成殿。

 院がお待ちです」



──後鳥羽院の御所。


後鳥羽院は、

文机の前で静かに筆を走らせていた。


その姿は美しく、

しかしどこか鋭い。

光を纏いながら、

影を孕んでいる。


(この方こそ……

 “京の本体”)


行成は深く頭を下げた。


「院……

 鎌倉より戻りました」


後鳥羽院は筆を置き、

行成を見た。


「……で、どうであった」


その声は柔らかいのに、

心の奥を刺すような鋭さがある。


行成は震える息を整えた。


「鎌倉は……

 揺れておりませぬ」


後鳥羽院の眉がわずかに動いた。


「揺れておらぬ……?

 我が文を見せたはずだが」


「はい。

 しかし──

 北条政子が……

 すべてを整えてしまいました」


後鳥羽院の目が細くなる。


「政子……

 あの女か」


行成は続けた。


「院。

 あの女は……

 鎌倉殿を支えております。

 覆い隠すのではなく、

 “隣に立つ者”として」


後鳥羽院の指が止まった。


「隣に……?」


「はい。

 鎌倉殿は……

 政子を選びました」


御所の空気が、

一瞬で冷えた。


後鳥羽院は静かに言った。


「行成。

 そなたは……

 鎌倉に敗れたのだな」


行成は膝をついた。


「はい……

 政子殿は……

 光のような女でした。

 影では勝てませぬ」


後鳥羽院は目を閉じた。


「光……か。

 ならば──

 その光を消さねばならぬ」


行成は息を呑んだ。


(ああ……

 この方は……

 “光を恐れる”のだ)


後鳥羽院は静かに続けた。


「鎌倉は強くなりすぎた。

 頼朝だけではない。

 政子という女が、

 鎌倉を一つにまとめている」


行成は震えた。


「院……

 鎌倉を……

 どうなさるおつもりですか……?」


後鳥羽院は微笑んだ。


その微笑みは美しく、

しかし底に冷たい刃があった。


「行成。

 そなたの役目は終わりだ。

 次は──

 “我が手”で鎌倉を揺らす」


行成の背筋が凍った。


(来る……

 “本当の影”が……)


後鳥羽院は立ち上がり、

夕暮れの空を見上げた。


「鎌倉の光よ。

 我が影で覆ってみせよう」


その声は、

静かで、

しかし確かな“宣戦布告”だった。



──夜。


行成は一人、

京の町を歩いていた。


(政子殿……

 あなたの光は……

 京を動かしてしまった)


空気が変わる。

国が動き始める。


行成は空を見上げた。


「政子殿……

 次に来る影は……

 私では止められませぬ……」


──京が動く。

鎌倉を揺らすために。


そしてこの日、

**後鳥羽院は“鎌倉討伐”の最初の一歩を踏み出した。**


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