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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第7話 銀座で何度も見た“暴走する男”を止めに行く

亀の前の御殿を壊す──。


その噂は、鎌倉中を一瞬で駆け巡った。


「政子様! 本当に行かれるのですか!?」


義時が必死に腕を掴む。


「行くわ。放っておいたら、もっと拗れるもの」


義時は青ざめた。


「鎌倉殿は今……誰の言葉も聞きません!

 怒りで我を失っておられるのです!」


(ああ、銀座でもいたわね。

 気まずさをごまかすために怒りに逃げるタイプ)


私は静かに義時の手を外した。


「だからこそ、行くのよ」


義時は震えた。


「姉上……あなたは……

 鎌倉殿を止められると、本気で……?」


「止めるわよ。

 あの人、今はただ“寂しい”だけだもの」


義時は完全に固まった。


(あら、この子また驚いてる)


だが、廊下の侍女たちの反応は違った。


「聞きました!? 政子様、鎌倉殿の心まで読んでおられる……!」


「なんという……恐ろしい……!」


(いや、ただの観察よ……)


私はため息をつき、外へ向かった。



亀の前の御殿の前は、すでに騒然としていた。


御家人たちが慌てて走り回り、

侍女たちは泣き、

馬のいななきが響く。


そして、その中心に──

怒りで顔を紅潮させた頼朝がいた。


「この御殿を壊せ!!

 すぐにだ!!」


御家人たちは震え上がっている。


(あー……完全に“感情で動いてる男”の顔ね)


私はゆっくりと歩み寄った。


「頼朝さん」


その一言で、場の空気が変わった。


御家人たちが一斉に振り返り、

侍女たちは息を呑み、

義時は頭を抱えた。


頼朝は振り向き、目を見開いた。


「政子……なぜここに……」


「あなたが壊そうとしているものを、見に来たの」


頼朝の眉が跳ね上がる。


「……政子。

 これは、お前には関係のない──」


「関係あるわ」


私は静かに言った。


「あなたが後悔する顔、見たくないもの」


頼朝は完全に固まった。


御家人たちがざわめく。


「見たか……政子様、鎌倉殿を黙らせた……!」


「なんという……恐ろしい……!」


(いや、黙らせたんじゃなくて、驚かせただけよ)


頼朝はしばらく黙っていたが、

やがて、低く呟いた。


「……政子。

 私は……どうすればいい……?」


その声は、怒りではなく、迷いだった。


(やっぱりね。

 この人、怒ってるんじゃなくて“どうしていいかわからない”だけ)


私は一歩近づいた。


「まずは、壊す前に話しましょう。

 亀の前さんも、あなたも、誰も悪くないわ」


頼朝は息を呑んだ。


「……政子。

 お前は……本当に……」


「何?」


「……不思議な女だ」


(褒め言葉として受け取っておくわ)


その瞬間、義時が小声で呟いた。


「姉上……あなたは……

 本当に鎌倉を動かしてしまうお方なのですね……」


(動かしてないわよ。

 ただ、暴走する男を止めただけ)


だが、周囲の誤解は止まらない。


「政子様が鎌倉殿を制した……!」


「やはり……恐ろしい……!」


(もう好きに言って……)


私は頼朝に向き直った。


「さあ、行きましょう。

 壊す前に、話すべき人がいるわ」


頼朝はゆっくりと頷いた。


そして私は、

**頼朝を連れて亀の前の御殿へ向かった。**


歴史が大きく動く瞬間が、

静かに始まろうとしていた。


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