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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第68話 頼朝、光を選ぶ

行成が崩れ落ちた翌朝。

鎌倉の空気は、張り詰めた静けさに包まれていた。


「鎌倉殿は……どう動かれる……」

「行成殿は敗れたが……朝廷の影は消えていない……」


(そう。

 ここからは頼朝さんの心が決める)


侍女が駆け込んできた。


「政子様……!

 鎌倉殿が“政子を呼べ”と……!」


私は静かに立ち上がった。



──頼朝の館。


頼朝は机に置かれた文を見つめていた。

行成が持ってきた、あの“朝廷の影”。


その横顔には、迷いと怒りと、

そして深い孤独が滲んでいた。


「政子……」


私は静かに膝をついた。


「頼朝さん。

 行成殿は、あなたを京へ戻したいだけよ」


頼朝は目を閉じた。


「政子……

 私は京に生まれ、京で育った。

 朝廷の空気が、私の原点だ」


(ああ……

 あなたの最も深い部分)


頼朝は続けた。


「だが京は私を捨てた。

 鎌倉が私を拾った。

 そして──

 お前が隣に立った」


私は静かに言った。


「頼朝さん。

 あなたは孤独じゃないわ」


頼朝の目が揺れた。


「政子……

 行成は言った。

 “政子殿は強すぎる”と。

 “あなたを覆い隠している”と」


私は微笑んだ。


「覆い隠してなんていない。

 私はただ──

 あなたの隣に立っているだけ」


頼朝は深く息を吐いた。


「政子……

 私は……

 お前に依存しているのか……?」


私は首を振った。


「依存じゃない。

 “信頼”よ」


頼朝の目が潤んだ。


「政子……

 私は……

 お前がいなければ鎌倉を守れぬのではないかと……

 恐れていた」


私は静かに言った。


「恐れは弱さじゃない。

 “守りたいものがある証”よ」


頼朝は震える声で言った。


「政子……

 私は……

 お前を選んでいいのか……?」


私は一歩近づいた。


「頼朝さん。

 あなたはもう選んでいるわ。

 ずっと前から」


頼朝の目が大きく開いた。


そして──

頼朝は立ち上がり、

私の手を強く握った。


「政子。

 私は──

 お前を選ぶ」


空気が一瞬で変わった。

迷いが消え、影が消え、

頼朝の瞳に“光”が戻った。


「京の影より、

 政子の光を選ぶ。

 それが……

 私の答えだ」


私は静かに頷いた。


「ええ。

 それでいいのよ」


頼朝は続けた。


「行成には伝えよ。

 “鎌倉は揺れていない”と。

 “政子がいる限り、揺れぬ”とな」


(ああ……

 これがあなたの決断)



──政子の屋敷。


義時が駆け込んできた。


「姉上……!

 鎌倉殿は……

 “政子を選ぶ”と……!」


私は静かに言った。


「ええ。

 頼朝さんは、自分の光を選んだのよ」


義時は震えた。


「姉上……

 これで行成殿は……?」


私は微笑んだ。


「京へ戻るわ。

 “敗北”を抱えて」



──夜。


私は灯りの下で筆を取った。


(行成。

 あなたは頼朝さんを揺らした。

 でも──

 頼朝さんは光を選んだ)


筆が走る。


「……明日、あなたは京へ帰る」


私は静かに笑った。


──悪女は、

光を選ばせる。


そしてこの日、

**頼朝は政子を選んだ。

鎌倉の空気は、揺るぎない光へと変わった。**


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