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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第59話 行成、鎌倉殿の心を揺らす

藤原行成が鎌倉の町を見て回った翌朝。


鎌倉殿・頼朝の館には、

いつもとは違う種類の緊張が漂っていた。


「行成殿が……鎌倉殿に再び謁見を求めている」

「政子様ではなく……鎌倉殿に……?」

「これは……揺さぶりか……?」


(そう。

 行成は“政子を揺らせない”と悟った。

 だから次は──頼朝さん)


侍女が駆け込んできた。


「政子様……!

 行成殿が……

 “鎌倉殿と二人で話したい”と……!」


私は静かに息を吸った。


(来たわね。

 “心の戦い”)


「ええ。

 行かせてあげて」


侍女は震えた。


「政子様……

 危険では……?」


私は微笑んだ。


「頼朝さんは揺れやすい。

 でも──折れないわ」



──頼朝の館。


行成は、昨日までとは違う“静かな威圧”をまとっていた。


「鎌倉殿。

 昨日は町を拝見いたしました。

 政子殿の力……

 まことに見事でございます」


頼朝は無表情で言った。


「政子は……

 鎌倉の柱だ」


行成は微笑んだ。


「ええ。

 しかし──

 柱が強すぎると、

 家は歪むものです」


頼朝の目が揺れた。


(ああ……

 頼朝さんの“弱点”を突いたわね)


行成は続けた。


「鎌倉殿。

 政子殿は賢く、強く、

 そして……

 恐ろしいほどの影響力をお持ちです」


頼朝は黙って聞いている。


行成はさらに踏み込んだ。


「政子殿は……

 あなたを守っているのか。

 それとも──

 あなたを“囲っている”のか」


空気が凍りついた。


(行成……

 あなた、本気ね)


頼朝は低く言った。


「政子は……

 私を囲わぬ」


行成は首を振った。


「鎌倉殿。

 あなたは……

 政子殿に依存しておられる」


頼朝の目が鋭くなった。


「依存……?」


行成は静かに言った。


「ええ。

 政子殿がいなければ、

 鎌倉は揺れる。

 政子殿がいなければ、

 御家人たちはまとまらぬ。

 政子殿がいなければ、

 あなたは……

 “孤独”になる」


頼朝の表情がわずかに揺れた。


(そう。

 頼朝さんは“孤独”という言葉に弱い)


行成はさらに追い打ちをかけた。


「鎌倉殿。

 あなたは……

 政子殿に“支えられている”のではなく、

 “支配されている”のでは?」


頼朝の拳が震えた。


「行成……

 その言葉、

 許されると思うか」


行成は微笑んだ。


「京では……

 そう見ております」


頼朝は立ち上がった。


「京の目など……

 知ったことか」


行成は静かに言った。


「しかし──

 “朝廷の目”は、

 あなたを見ている」


頼朝の呼吸が止まった。


(ああ……

 行成は“朝廷”という言葉を使った。

 頼朝さんの最大の弱点)


行成は最後に言った。


「鎌倉殿。

 政子殿は強い。

 強すぎる。

 その強さは……

 いずれあなたを孤立させる」


頼朝は黙り込んだ。


(揺れたわね……

 でも、折れてはいない)



──政子の屋敷。


義時が駆け込んできた。


「姉上……!

 行成殿が……

 鎌倉殿に“政子殿は危険”と……!」


私は静かに言った。


「ええ。

 そう言うと思っていたわ」


義時は震えた。


「姉上……

 鎌倉殿は……

 揺れておられるのでは……?」


私は微笑んだ。


「揺れているわ。

 でも──

 折れない」


義時は息を呑んだ。


「姉上……

 では……

 どうされます……?」


私は静かに言った。


「頼朝さんの“孤独”を埋めるわ」


義時は震えた。


「姉上……

 あなたは……

 京の影すら……

 超えている……!」


(影を超えるのは簡単よ。

 “心”を見ればいい)



──夜。


私は灯りの下で筆を取った。


(行成。

 あなたは頼朝さんを揺らした。

 でも──

 揺れは整えれば“流れ”になる)


筆が走る。


「……次は“頼朝の心”」


私は静かに笑った。


──悪女は、

影が揺らした心を、

静かに取り戻す。


そしてこの日、

**行成は頼朝の心を揺らし、

政子はその揺れを見抜いた。**


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