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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第56話 政子、京の影を“もてなす”

藤原行成が鎌倉殿に謁見した翌日。


鎌倉の空気は、

昨日とは違う種類の緊張に包まれていた。


「行成殿は……政子様を危険視しているらしい」

「朝廷は……鎌倉を見下しているのか……?」

「政子様はどう動かれる……?」


(空気が揺れている。

 でも──揺れは整えれば“流れ”になる)


侍女が駆け込んできた。


「政子様……!

 行成殿が……

 “政子殿のもてなしを受けたい”と……!」


私は筆を置いた。


(あら、来たわね。

 “接待戦”)


侍女は震えていた。


「政子様……

 これは……

 行成殿が政子様を探るための……」


私は微笑んだ。


「ええ。

 だからこそ──

 “もてなす”のよ」


侍女は固まった。


「も、もてなす……?」


「影には、光を当てるのが一番」



──政子の屋敷。


行成は、

昨日とは違う柔らかい笑みを浮かべていた。


「政子殿。

 昨日は失礼をいたしました。

 今日は……

 鎌倉の“おもてなし”を味わいたく参りました」


(ああ、この“柔らかさ”。

 京の公家が本気で探りを入れる時の空気)


私は静かに言った。


「ようこそ。

 鎌倉の粗野なもてなしでよければ」


行成は笑った。


「粗野などと……

 政子殿はご謙遜を」


(謙遜じゃないわ。

 あなたが勝手に見下しているだけ)


私は席を勧めた。


「どうぞ。

 鎌倉の料理は、

 京のように繊細ではありませんが」


行成は箸を取り、

一口食べた。


そして──

わずかに眉をひそめた。


(あら、正直ね)


行成は言った。


「……なるほど。

 京とは……違いますな」


私は微笑んだ。


「ええ。

 “違い”を楽しんでいただければ」


行成は目を細めた。


「政子殿。

 あなたは……

 “京の空気”を恐れぬのですね」


私は静かに言った。


「恐れる理由がないわ。

 空気は読むものではなく、

 整えるものだから」


行成の表情が揺れた。


(あなた、昨日からずっと“空気”を使ってくる。

 でも──

 空気の戦いなら、私は負けない)


行成は探るように言った。


「政子殿。

 鎌倉殿は……

 あなたを深く信じておられるようだ」


私は微笑んだ。


「ええ。

 頼朝さんは、私を“隣”に置いてくれる」


行成の目が鋭くなった。


「隣……ですか」


(そこがあなたの狙いね)


行成は続けた。


「政子殿。

 鎌倉殿の“隣”に立つということは──

 “鎌倉そのもの”になるということ。

 それは……

 朝廷にとって脅威です」


私は静かに言った。


「脅威かどうかは、

 朝廷が決めることではないわ」


行成は息を呑んだ。


(あなた、京の公家に“言ってはいけない言葉”を

 平然と言うのね)


私は続けた。


「行成殿。

 あなたは“京の影”。

 でも──

 影は光に弱い」


行成は初めて、

わずかに後ずさった。


「政子殿……

 あなたは……

 恐ろしいほど強い」


(それは褒め言葉として受け取るわ)


私は微笑んだ。


「行成殿。

 今日は“もてなし”の場。

 影の話は、また後で」


行成は黙り込んだ。


(ええ。

 あなたは今日、

 “鎌倉の空気”を知ったはず)



──夜。


私は灯りの下で筆を取った。


(行成。

 あなたは京の影。

 でも──

 影は光に慣れていない)


筆が走る。


「……次は“揺らし返す”」


私は静かに笑った。


──悪女は、

もてなしながら敵を読む。


そしてこの日、

**政子は行成を“接待”しながら、

京の影の本質を見抜いた。**


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