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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第53話 京より使者、鎌倉へ

比企能員が敗れた翌朝。


鎌倉は、まるで長い雨が上がった後のように

澄んだ空気に包まれていた。


「政子様が……能員殿を退けた」

「これで鎌倉は安泰だ」

「北条の時代が来る……!」


(……空気が軽い。

 でも、軽さは“嵐の前触れ”でもある)


侍女が駆け込んできた。


「政子様……!

 京より……

 “朝廷の使者”が鎌倉へ向かっているとの報が……!」


私は筆を止めた。


(来たわね。

 “外の影”)


侍女は震えていた。


「政子様……

 使者は……

 “政子様に用がある”と……!」


私は静かに言った。


「ええ、分かっているわ」


侍女は固まった。


「ど、どうして……

 そんなに落ち着いて……?」


私は微笑んだ。


「影はね、

 “光が強くなった時”に必ず動くのよ」



──義時の屋敷。


義時は蒼白な顔で駆け込んできた。


「姉上……!

 京よりの使者が……

 “政子殿の振る舞い、朝廷に聞こえ及ぶ”と……!」


私は静かに言った。


「ええ。

 京は鎌倉の空気に敏感だから」


義時は震えた。


「姉上……

 これは……

 鎌倉殿への圧力では……?」


私は首を振った。


「違うわ。

 “私への圧力”よ」


義時は息を呑んだ。


「政子様……

 朝廷が……

 あなたを……?」


私は微笑んだ。


「ええ。

 “悪女政子”の噂は、

 京にとって都合がいいもの」


義時は震えた。


「姉上……

 どうされます……?」


私は静かに言った。


「迎えるわ。

 “鎌倉の顔”として」


義時は目を見開いた。


「姉上……

 あなたは……

 もう……

 鎌倉殿の隣ではなく……

 “鎌倉そのもの”なのですね……!」


(それは言いすぎよ。

 でも、悪くないわ)



──その頃、鎌倉の外れ。


朝廷の使者一行が、

ゆっくりと鎌倉へ近づいていた。


先頭の男が馬を止めた。


「……ここが鎌倉か。

 噂に聞く“北条政子”の地……」


従者が言う。


「殿……

 政子殿は恐ろしい策士だと……

 京では……」


使者は薄く笑った。


「恐ろしいかどうか……

 この目で確かめる」


(あら、あなた。

 その“上から目線”、後で後悔するわよ)



──政子の屋敷。


私は静かに立ち上がった。


「来たわね。

 “京の影”が」


侍女が震えた声で言う。


「政子様……

 朝廷の使者は……

 どんな方なのでしょう……?」


私は微笑んだ。


「どんな影でも同じよ。

 光を当てれば、形が見える」


侍女は息を呑んだ。


「政子様……

 では……

 どう迎えられます……?」


私は静かに言った。


「“銀座の接客術”でね」


侍女は固まった。


「えっ……?」


私は笑った。


「京の公家なんて、

 銀座の酔客より扱いやすいわ」


(本当にそうなのよ)



──夜。


私は灯りの下で筆を取った。


(能員の影は消えた。

 でも──

 京の影はもっと大きい)


私は静かに笑った。


──悪女は、

鎌倉の影を焼き尽くした後、

京の影へ向かう。


そしてこの日、

**朝廷からの使者が鎌倉へ向かい、

政子は新たな戦場へ足を踏み入れた。**


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