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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第5話 銀座ママ、義時に“恐れられながら惚れられる”

頼朝との対話から数日後。


私は、鎌倉の空気が少しだけ変わったことに気づいていた。


──視線が増えた。


侍女たちのひそひそ話。

御家人たちの探るような目。

そして、妙に距離を取る者たち。


(……あら。完全に“要注意人物”扱いね)


銀座でもあった。

有能すぎると、周囲は勝手に怖がる。


そんな中、侍女が慌てて駆け込んできた。


「政子様! 北条義時様がお見えです!」


義時。

政子の弟であり、後に“執権”として歴史に名を残す男。


私は姿勢を正した。



義時は、静かに部屋へ入ってきた。


若いが、目が鋭い。

観察力が高く、警戒心も強い。

銀座で言えば──“社長の右腕タイプ”。


「姉上。お加減はいかがですか」


丁寧な言葉だが、声は硬い。

完全に“探り”を入れている。


私は微笑んだ。


「ええ、元気よ。心配してくれてありがとう」


義時の眉がわずかに動いた。


(あら、この子……褒められ慣れてないわね)


銀座ママの観察眼が働く。


義時は続けた。


「……鎌倉殿とのご関係が、最近……変わられたとか」


(あー、噂になってるのね)


私は落ち着いて答えた。


「変わったというより、少し話をしただけよ」


義時の目が細くなる。


「姉上。鎌倉殿を“動かした”と聞きました」


(動かしたって……ただ話しただけなんだけど)


私は苦笑した。


「義時。人は、話せば変わるものよ」


義時は完全に固まった。


「……姉上。

 鎌倉殿を“話しただけで変えられる”など……

 そんなことが、あるはずが……」


(あるのよ、銀座ではね)


私は優しく言った。


「あなたも、話せば変わるわよ?」


義時の顔が一瞬で赤くなった。


「な、なにを……!」


(かわいい)


銀座ママの目には、義時が“素直で不器用な弟”にしか見えない。


だが──

廊下の侍女たちの反応は違った。


「聞いた!? 政子様、義時様まで掌握なさったわ……!」


「なんという……恐ろしい……!」


(いやいやいや!!)


私は心の中で全力で否定した。


義時は咳払いをして、無理に冷静を装った。


「……姉上。

 鎌倉は、今……不安定です。

 鎌倉殿の周囲には、敵も多い」


その声は真剣だった。


私は静かに頷いた。


「だからこそ、あなたが支えてあげて。

 あなたは、頼朝にとって“必要な人”よ」


義時は息を呑んだ。


「……姉上は……どうして……

 そんなふうに……」


「見ればわかるわ」


義時は完全に固まった。


(あら、また褒められ慣れてない反応)


銀座ママの“人を見る目”は、鎌倉でも無双だった。


義時は深く頭を下げた。


「……姉上。

 私は……あなたを侮っていました。

 どうか……これからも鎌倉殿を……」


その瞬間、廊下の侍女たちが震え上がった。


「見た!? 義時様が政子様に頭を下げた……!」


「政子様……鎌倉を動かしておられる……!」


(違うってば!!!)


私は天を仰いだ。


──善意で話しただけで、また“悪女”扱い。


でも、義時の目は変わっていた。


警戒から、信頼へ。

恐れから、尊敬へ。


そして少しだけ──

惹かれ始めている。


銀座でもよくあった。


“有能な女性に惹かれる男”の目だ。


私は小さく息をついた。


「……誤解されるのは慣れてるわ。

 でも、あなたたちを支えるのは、嫌いじゃない」


義時は顔を赤くしたまま、深く頭を下げた。


「姉上……どうか、これからも……」


私は微笑んだ。


「ええ」


こうして私は、

**義時からも“恐れられながら惚れられる”存在**

になってしまった。


誤解されても、嫌われても、

私は今日も誰かの心を救う。


銀座ママ流に。


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