表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/120

第48話 比企能員、沈黙を破る

比企宗員が評定で自滅した翌朝。


鎌倉は、まるで嵐の後のように静かだった。


「宗員殿が……政子様に敗れたらしい」

「頼朝様の前で……完全に崩れたとか……」

「比企家は……どう動く……?」


(……空気が“次の揺れ”を待っている)


侍女が駆け込んできた。


「政子様……!

 比企能員様が……

 “評定に参る”と……!」


私は静かに言った。


「ええ、来るわね」


侍女は震えた。


「政子様……

 能員様は……

 宗員様とは違います……

 お気をつけませぬと……!」


私は微笑んだ。


「分かっているわ。

 能員は“影の本体”。

 宗員とは格が違う」



──評定の間。


御家人たちは緊張で固まっていた。


「能員殿が来る……」

「比企家の長老……」

「政子様とどうぶつかる……?」


その時──

評定の扉が静かに開いた。


比企能員が現れた。


宗員とは違う。

怒りも焦りも見せない。

ただ、静かに、重く、空気を変える。


(ああ……これが“本物の影”)


能員はゆっくりと歩み出た。


「政子殿。

 昨日は……

 我が甥が無礼を働いたようで」


私は静かに言った。


「ええ。

 あなたの“影”としてね」


御家人たちがざわつく。


能員は微笑んだ。


「影……?

 政子殿。

 あなたは誤解している」


私は一歩近づいた。


「誤解しているのはあなたよ。

 宗員は“あなたの命”で動いた」


能員は首を振った。


「宗員は……

 私の甥である前に、

 ひとりの御家人。

 自分の意思で動いたのでしょう」


(ああ、この“逃げ方”。

 老獪ね)


私は静かに言った。


「能員。

 あなたは宗員を切り捨てるつもり?」


能員は微笑んだ。


「政子殿。

 政治とは“切り捨てること”です」


評定の空気が凍りついた。


(……この男。

 やっぱり“影の本体”)


能員は続けた。


「政子殿。

 あなたは柱となった。

 それは素晴らしい。

 だが──

 柱が高くなればなるほど、

 影は濃くなる」


私は目を細めた。


「つまり……

 あなたは“影として動く”と?」


能員は微笑んだ。


「影は光を恐れぬ。

 光が強ければ強いほど、

 影は形を持つ」


御家人たちが息を呑んだ。


(ああ……

 この男は“正面から戦う気はない”。

 影として、空気の裏側で揺らすつもり)


私は静かに言った。


「能員。

 あなたは宗員とは違う。

 あなたは“影の本体”。

 でも──

 影は光に勝てない」


能員は笑った。


「政子殿。

 光が強すぎると、

 人は眩んで転ぶものですよ」


(……挑発ね。

 でも、乗らない)


私は背を向けた。


「能員。

 あなたの影は、

 ここで終わるわ」


能員は静かに言った。


「終わるかどうかは……

 空気が決める」


(ああ、やっぱり“空気の戦い”を理解している)



──夜。政子の屋敷。


私は灯りの下で筆を取った。


(能員は宗員とは違う。

 彼は“空気の裏側”を読む男)


筆が走る。


「……次は“公開戦”」


私は静かに笑った。


──悪女は、

影の本体を逃がさない。


そしてこの日、

**比企能員が沈黙を破り、

政子との“公開戦”が始まった。**


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ