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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第45話 偽文書、夜明け前に置かれる

夜明け前の鎌倉。


まだ薄暗い頼朝の館に、

ひとりの侍が駆け込んだ。


「鎌倉殿……!

 た、大変でございます……!」


頼朝は眠気を振り払いながら顔を上げた。


「……何事だ」


侍は震える手で、一通の文を差し出した。


「これが……

 鎌倉殿の枕元に……

 置かれておりました……!」


頼朝の目が鋭くなる。


「誰が置いた」


「わ、分かりませぬ……

 ただ……

 内容が……」


頼朝は文を開いた。


──“北条政子は、鎌倉殿を操り、

 鎌倉を北条のものにしようとしている”──


──“御家人たちの声を封じ、

 鎌倉殿を孤立させている”──


──“政子を柱とするのは、

 鎌倉の破滅である”──


頼朝の手が震えた。


「……政子が……

 私を操っている……?」


侍は息を呑んだ。


「鎌倉殿……

 これは明らかに……

 政子様を貶める偽文書かと……!」


頼朝は立ち上がった。


「政子を呼べ。

 今すぐだ」


(ああ……これは“影の策”ね)



──政子の屋敷。


侍女が駆け込んできた。


「政子様……!

 鎌倉殿が……

 “至急来い”と……!」


私は静かに立ち上がった。


(来たわね。

 影が動いた時の“匂い”がする)


侍女は震えていた。


「政子様……

 鎌倉殿が怒っておられるようで……!」


私は微笑んだ。


「怒りは“空気の乱れ”。

 乱れは、整えればいいのよ」



──頼朝の館。


私は静かに座した。


頼朝は文を握りしめ、

私を睨んでいた。


「政子……

 これは……

 本当なのか」


私は文を受け取り、

一読した。


(筆跡……癖……

 ああ、これは比企宗員ね)


私は静かに言った。


「頼朝さん。

 これは“影の文”よ」


頼朝は眉をひそめた。


「影……?」


「ええ。

 “光が強くなると、影は濃くなる”。

 あなたが私を柱にしたから、

 影が動いたの」


頼朝は息を呑んだ。


「政子……

 私は……

 操られているのかと……

 一瞬……」


私は一歩近づいた。


「頼朝さん。

 あなたを操れる人間なんて、

 この世にいないわ」


頼朝の目が揺れた。


「……政子……」


「あなたは自分の意思で決めた。

 私を柱にしたのも、

 あなた自身の言葉よ」


頼朝は文を握りつぶした。


「……誰が……

 こんなものを……!」


私は静かに言った。


「比企宗員よ。

 能員の“影”として動いている」


頼朝の表情が変わった。


「宗員……

 比企の……!」


私は頷いた。


「ええ。

 でも──

 怒るのはまだ早いわ」


頼朝は驚いた。


「まだ……早い……?」


私は微笑んだ。


「影はね、

 “光の前に出た瞬間”に消えるの」


頼朝は息を呑んだ。


「政子……

 お前は……

 どう動くつもりだ」


私は静かに言った。


「影を切るわ。

 宗員を、表に引きずり出す」


頼朝は震えた。


「政子……

 お前は……

 恐ろしいほど冷静だな……」


私は微笑んだ。


「冷静じゃないと、

 空気は動かせないもの」



──夜。


私は灯りの下で筆を取った。


(宗員。

 あなたは“影の中心”。

 でも──

 影は光に弱い)


筆が走る。


「……明日、影を表へ」


私は静かに笑った。


──悪女は、

影の動きも逃さない。


そしてこの日、

**比企宗員の偽文書が鎌倉を揺らし、

政子と頼朝の衝突が始まった。**


鎌倉は、

第二章の“動”へと突入する。


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