第41話 畠山重忠、“政子の正義”に心を折られる
三浦義村、和田義盛が政子側についた翌朝。
鎌倉の空気は、
昨日までのざわつきが嘘のように静まりつつあった。
「義村殿が政子様に従ったらしい……」
「和田殿も“政子様のために力を使う”と……」
「では……政子様抜き評定は……?」
(……空気が変わり始めている。
でも、まだ“中心”が残っている)
侍女が駆け込んできた。
「政子様……!
畠山重忠様が……
“政子様を尊敬しているが、
御家人たちの声も大切にすべきだ”と……!」
私は静かに言った。
「ええ、知っているわ」
侍女は固まった。
「ど、どうして……
そんなに落ち着いて……?」
私は微笑んだ。
「重忠は“正義”で動く男。
だからこそ──
最後に会うべき相手なの」
*
──畠山重忠・屋敷。
重忠は、静かに家臣たちと話していた。
「政子様は……
確かに鎌倉殿に必要なお方だ。
だが……
御家人たちの声もまた、
鎌倉を支える柱である」
家臣が言う。
「重忠様……
では政子様抜き評定に……?」
重忠は首を振った。
「政子様を排除するつもりはない。
ただ……
“正しさ”を示したいだけだ」
(ああ、重忠。
あなたは本当に誠実ね)
その時──
侍女が駆け込んできた。
「畠山様……!
政子様がお呼びです……!」
重忠は静かに頷いた。
「……参る」
(やっぱり来るわね)
*
──政子の屋敷・庭。
重忠は静かに頭を下げた。
「政子様。
お呼びと伺い、参上いたしました」
私は微笑んだ。
「重忠。
あなたは“正義”で動く男ね」
重忠は驚いた。
「……政子様……?」
「義村は揺れ。
義盛は力。
でも──
あなたは“正しさ”を求めている」
重忠は息を呑んだ。
「政子様……
私は……
ただ……
鎌倉のために……」
私は静かに言った。
「ええ。
だからこそ、あなたに聞きたいの」
重忠は姿勢を正した。
「……何を、でございましょう」
私は一歩近づいた。
「“政子抜き評定”は──
本当に正しいの?」
重忠の目が揺れた。
「……!」
私は続けた。
「御家人たちの声を聞くことは大切よ。
でも──
“政子を排除する”という形で示すのは、
正義ではないわ」
重忠は拳を握りしめた。
「政子様……
私は……
御家人たちの声を……
無視したくは……ない……!」
「無視しなくていいの。
でも──
“空気に流される声”と
“本当に必要な声”は違う」
重忠は息を呑んだ。
「……!」
私は静かに言った。
「重忠。
あなたは“正しい者”よ。
だからこそ──
空気に流されてはいけない」
重忠は震えた。
「政子様……
私は……
どうすれば……?」
私は微笑んだ。
「簡単よ。
“あなた自身の正義”で判断すればいい」
重忠は目を閉じた。
そして──
深く頭を下げた。
「政子様……
私は……
あなたの言葉に従います。
政子様抜き評定には……
加わりませぬ」
(よし、三人目)
私は静かに言った。
「ありがとう、重忠。
あなたの正義は、
鎌倉を救うわ」
重忠は震えた声で言った。
「政子様……
あなたこそ……
鎌倉の正義でございます……!」
(それは言いすぎよ。でも嬉しいわ)
*
──義時の屋敷。
義時が駆け込んできた。
「姉上……!
畠山重忠が……
“政子様の正義に従う”と……!」
私は静かに言った。
「ええ。
これで御家人連合は崩れたわ」
義時は震えた。
「姉上……
あなたは……
空気を……
完全に支配しているのですね……!」
(支配じゃないわ。
“整えている”だけ)
私は空を見上げた。
──次は、評定そのものを動かす。
そしてこの日、
**政子は畠山重忠の“正義”を突き、
御家人連合を完全に崩壊させた。**
鎌倉は、
決着へ向けて動き出す。




