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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第3話 銀座ママ、亀の前と出会う

頼朝との対面から数日が経った。


私は、北条政子としての生活に少しずつ慣れ始めていた。

とはいえ、鎌倉の空気は銀座とはまるで違う。


銀座は、嘘と本音が入り混じる夜の街。

鎌倉は、権力と不安が渦巻く昼の街。


どちらも、人の心が揺れる場所だ。


「政子様、今日は鎌倉殿の御前に参られるとか……」


侍女の声が震えている。

私は微笑んだ。


「そんなに怖がらなくてもいいのよ」


「い、いえ……政子様が怖いのではなく……」


侍女は言い淀んだ。


「……鎌倉殿の“御寵愛の方”が、いらっしゃるとか」


ああ、そういうこと。


銀座でもよくあったわね。

“奥様”と“愛人”の関係。


私は深く息をついた。


「会えばいいじゃない。話せば、きっとわかるわ」


侍女たちは青ざめた。


「政子様……!

 そんな、火に油を注ぐような……!」


(えっ、普通に話すだけなんだけど……?)


どうやらこの世界では、

**“話し合う”=“策略”**

と変換されるらしい。



頼朝の館に向かうと、

そこには一人の若い女性がいた。


白い肌。細い指。

どこか怯えたような、儚い雰囲気。


──亀の前。


歴史で“政子の怒りを買った女”として有名な女性。


だが、目の前の彼女は──

どう見ても、ただの優しい子だ。


「……あなたが、政子様……?」


震える声。

私は思わず、銀座ママの癖で微笑んでしまった。


「ええ。あなたが亀の前さんね」


亀の前は驚いたように目を見開いた。


「怒って……いらっしゃらないのですか……?」


「怒る? どうして?」


「わ、私が……鎌倉殿の……その……」


ああ、そういうこと。


私はそっと彼女の手を取った。


「あなたは悪くないわ」


亀の前は息を呑んだ。


「悪いのは、あなたを孤独にした世界よ」


銀座で何度も言ってきた言葉だった。

泣きそうな女性に、何度も。


亀の前の目に涙が浮かぶ。


「政子様……そんな……優しい……」


その瞬間だった。


背後で侍女たちがざわめいた。


「見ましたか……!

 政子様が、亀の前を“手なずけて”おられる……!」


「なんという……恐ろしい策士……!」


(えっ!?)


私は慌てて手を離したが、もう遅かった。


侍女たちの視線は、

完全に“悪女を見る目”になっていた。


──善意が、悪意に変換される。


銀座でも誤解はあったけれど、

ここまでとは思わなかった。


私は小さく息をついた。


「……まあ、いいわ。誤解されるのは慣れてるもの」


亀の前は涙を拭いながら、

私の手をぎゅっと握った。


「政子様……ありがとうございます……」


その姿を見て、私は決めた。


**この子は、絶対に守る。**


たとえ、後世に“悪女”と呼ばれようとも。


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