第22話 鎌倉、政子の“悪女文書”で揺れる
翌朝。
鎌倉は、まるで嵐の前触れのようにざわついていた。
「見たか……あの文……!」
「政子様が……自ら“悪女”と……?」
「いや、あれは……
本当に政子様が書いたのか……?」
(ええ、書いたのよ。私がね)
侍女が駆け込んできた。
「政子様……!
御家人たちが……屋敷の前に集まっています……!」
(あら、早いわね)
*
──屋敷の前。
御家人たちがざわめいていた。
「政子様……本当に……?」
「“逆らえば切り捨てる”と……文に……」
「いや、あれは……
比企家の文よりも……ずっと冷たい……」
(冷たい? 褒め言葉ね)
私はゆっくりと姿を見せた。
ざわめきが止まる。
「政子様……!」
「本当に……悪女なのですか……?」
私は微笑んだ。
「ええ。
“鎌倉を守るためなら”ね」
御家人たちは息を呑んだ。
(この一言で十分よ。
“悪女”は、理由がある方が強い)
*
──比企能員・屋敷。
能員は文を握りしめていた。
「政子殿……
自ら“悪女”を名乗るとは……!」
家臣が震えた声で言う。
「能員様……
これは……政子殿の策では……?」
「策に決まっておろう!」
能員は机を叩いた。
「“悪女”を自称することで、
鎌倉殿を守るつもりだ……!」
家臣たちは息を呑んだ。
「……政子殿は……
自分が嫌われることで……
鎌倉殿を守ろうとしている……?」
能員は歯噛みした。
「そうだ。
あの女……
“嫌われ役”を自ら引き受けた……!」
(気づいたわね、能員さん。
でも、もう遅いわ)
*
──義時の屋敷。
義時は文を読み、震えていた。
「姉上……
これは……!」
北条の家臣が言う。
「政子様は……
自ら悪女を名乗り……
鎌倉殿を守ろうとしておられる……!」
義時は拳を握りしめた。
「姉上……
あなたは……
本当に……強い……!」
(義時、あなたは優しい子ね)
*
──頼朝の館。
頼朝は文を見つめていた。
「政子が……
自ら悪女を名乗った……?」
(あなたのためよ)
頼朝は文を握りしめた。
「政子……
お前は……
なぜ……そこまで……」
私は静かに言った。
「頼朝さん。
あなたが孤立しないように。
それだけよ」
頼朝は息を呑んだ。
「政子……
お前は……
私を守るために……
自分を悪女にしたのか……」
私は微笑んだ。
「悪女なんて、呼ばれ慣れているわ」
頼朝は言葉を失った。
(銀座でもそうだった。
“嫌われ役”は、私の得意分野よ)
*
──夜。
鎌倉中がざわつく中、
私は静かに灯りを消した。
(比企家は混乱している。
御家人たちは揺れている。
頼朝さんは迷っている。
義時は震えている)
私は目を閉じた。
──でも、私は迷わない。
守るべきものがあるから。
そしてこの日、
**政子の“悪女文書”は鎌倉を揺らし、
比企家の策を一気に狂わせた。**
鎌倉の空気は、
政子の一手で完全に塗り替えられた。




