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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第19話 政子、比企家の“次の一手”を逆手に取る

比企家が包囲網を整えてから二日後。


鎌倉の空気は、もはや“静か”ではなかった。

重い。

張りつめている。

まるで、誰かが息を潜めているような──そんな空気。


(……動くわね、比企)


侍女が駆け込んできた。


「政子様……!

 比企家が……“政子様は鎌倉殿を操っている”と……

 正式な文を作り、御家人たちに配っております!」


(正式な文……本気ね)


侍女は震えた声で続けた。


「しかも……

 “政子様は北条を使って比企家を排除しようとしている”と……!」


(使ってないわよ)


私は静かに息を吐いた。



義時が駆け込んできた。


「姉上!

 比企家が……“政子様は危険”と……

 鎌倉殿に直接訴えようとしています!」


(あら、ついに頼朝さんに行くのね)


義時は拳を握りしめた。


「姉上……

 私が止めます。

 比企家を……!」


「義時」


私は静かに言った。


「止めなくていいわ」


義時は固まった。


「……え?」


「比企家が頼朝さんに訴えるなら、

 私は“頼朝さんの前で”動くべきよ」


義時は息を呑んだ。


「姉上……

 まさか……

 比企家と鎌倉殿の前で……?」


「ええ。

 “誤解を解く”のではなく──

 “誤解を利用する”の」


義時は完全に固まった。


(この子、毎回驚いてる気がする)



その日の昼。


頼朝の館に呼ばれた。


比企能員がすでに座っていた。

その顔には、勝利を確信したような笑みが浮かんでいる。


(あら、嬉しそうね)


頼朝は険しい顔で言った。


「政子。

 比企能員が……

 “政子殿は鎌倉を乱している”と訴えている」


能員が口を開いた。


「鎌倉殿。

 政子殿は、御家人たちを恐れさせ、

 鎌倉殿の御心を乱しております。

 このままでは鎌倉が危うい」


(危うくしてるのはあなたよ)


私は静かに言った。


「頼朝さん。

 私は鎌倉を乱すつもりはないわ」


能員がすかさず言う。


「では、なぜ御家人たちは政子殿を恐れているのです!」


(恐れてるのはあなたの噂のせいよ)


私は能員を見た。


「比企殿。

 あなたは“私が鎌倉殿を操っている”と言うけれど──」


能員の目が細くなる。


「……?」


「もし本当に操っているなら、

 あなたは今ここに座っていないわ」


能員の顔が一瞬で固まった。


(あら、効いたわね)


頼朝は目を見開いた。


「……政子……」


私は続けた。


「比企殿。

 あなたは“私が鎌倉殿を動かしている”と言う。

 でも──

 私は一度も頼朝さんに“命じた”ことはないわ」


能員は言葉を失った。


私は頼朝を見た。


「頼朝さん。

 あなたは、私の言葉で動いたことがある?」


頼朝はしばらく黙っていたが、

やがて静かに首を振った。


「……ない。

 私は……政子の言葉を“聞いている”だけだ」


(そう、それでいいのよ)


能員の顔色が変わった。


「鎌倉殿……!

 しかし……!」


頼朝は能員を見た。


「能員。

 政子は……私を操ってなどいない。

 私は……政子を信じているだけだ」


能員は完全に固まった。


(あなた、頼朝さんを甘く見すぎよ)



その夜。


義時が駆け込んできた。


「姉上!

 比企能員が……

 “政子殿に敗れた”と……

 屋敷で荒れております!」


(荒れてるのね)


義時は続けた。


「姉上……

 今日のあれは……

 “比企家の策を逆手に取った”のですか……?」


「ええ。

 比企家が“私が頼朝さんを操っている”と言うなら──

 “頼朝さん自身に否定してもらう”のが一番よ」


義時は息を呑んだ。


「……姉上……

 あなたは……本当に……」


「何?」


「……鎌倉の“頭脳”です……!」


(また大げさね)


廊下の侍女たちは震え上がった。


「聞いた!?

 政子様が比企家を“言葉だけで”退けた……!」


「やはり……恐ろしい……!」


(もう好きに言って……)


私は空を見上げた。


──比企家が動くなら、

私は“その動きを利用する”。


それが、

銀座で学んだ“勝ち方”。


そしてこの日、

**政子は初めて“比企家の策を逆手に取った”。

鎌倉の盤面は、静かに政子の側へ傾き始めた。**


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