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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第17話 比企家、“政子包囲網”を密かに整える**

政子が比企能員に“線を引いた”翌日。


鎌倉の空気は、昨日よりさらに重くなっていた。

だが、その重さの中心にいるのは──政子ではなかった。



──比企能員・屋敷。


能員は、静かに文を広げていた。


「……政子殿は侮れぬ」


昨日の政子の言葉が、まだ耳に残っている。


(あれは……怒りではない。

 “覚悟”を持つ者の声だ)


能員は深く息を吐いた。


「……ならば、こちらも覚悟を決めねばなるまい」


比企家の家臣たちが集まる。


「能員様、どう動かれますか」


能員は文を机に置いた。


「政子殿は、正面からは崩れぬ。

 ならば──

 “周囲”から固める」


家臣たちが息を呑む。


「まずは……御家人たちの“恐れ”を利用する」


能員は淡々と指示を出した。


「“政子殿は筋を通す方だ”

 “怒らせれば切り捨てられる”

 “鎌倉殿でさえ気を遣っている”」


家臣が問う。


「……それは事実なので?」


能員は笑った。


「事実かどうかは関係ない。

 “皆がそう思うこと”が大事なのだ」


(ああ、この人……銀座にもいたわね)



──その頃、鎌倉の町。


御家人たちがひそひそと話していた。


「政子様……昨日、比企能員を黙らせたらしいぞ」


「鎌倉殿も政子様の前では慎重だとか……」


「怒らせたら終わりだ……!」


(怒ってないわよ)


噂は、能員が意図した通りに広がっていく。



──義時の屋敷。


義時は、広がる噂を聞きながら、

胸の奥に小さな不安を覚えていた。


「……姉上は、何もしていないのに……

 どうして、こんな……」


(義時、あなたは優しい子ね)


そこへ、北条の家臣が駆け込んできた。


「義時様!

 比企家が御家人たちに“政子様は危険”と……!」


義時は拳を握りしめた。


「……比企家……!」


だが、義時は気づいていなかった。


比企家の狙いは、

政子ではなく──


**“鎌倉殿の心を揺らすこと”**

だということに。



──頼朝の館。


頼朝は、広がる噂に眉をひそめていた。


「政子が……恐れられている……?」


(恐れられてるのは、あなたのせいよ)


頼朝は深く息を吐いた。


「政子は……そんな女ではない。

 だが……皆がそう思えば……

 政子が孤立する……」


(そうね。あなたが動かない限りは)


頼朝は立ち上がった。


「政子に……会わねば」



──そして、政子の屋敷。


私は静かに茶を淹れていた。


(……空気が変わったわね)


侍女が慌てて駆け込んできた。


「政子様!

 比企家が……政子様を……!」


「知っているわ」


侍女は固まった。


「ど、どうして……?」


私は静かに言った。


「比企能員の目を見ればわかるわ。

 あの人は“正面からは来ない”」


侍女は震えた。


「政子様……

 では、どうされるのです……?」


私は茶を置き、

ゆっくりと立ち上がった。


「簡単よ」


「……?」


「“動かない”こと」


侍女は目を丸くした。


「ど、動かない……?」


「ええ。

 比企家は、私が動くのを待っている。

 だから──

 動かないのが一番効くわ」


(銀座でもよくあったわね。

 “相手が仕掛けてくる時ほど、動かない”のが正解)


その瞬間、

廊下の侍女たちがざわめいた。


「見た!?

 政子様……“動かない”と……!」


「やはり……恐ろしい……!」


(いや、ただお茶飲んでただけよ)


私は空を見上げた。


──比企家が動くなら、

私は動かない。


それが、

“相手の策を崩す一番の方法”だと知っているから。


そしてこの日、

**比企家の包囲網は完成した。

だが、政子は一歩も動かなかった。**


その静けさこそが、

比企能員にとって最大の誤算となる。


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