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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第14話 鎌倉殿、思わず“本音”をこぼす

比企能員が去った翌日。


鎌倉の空気は、どこか落ち着かない。

風向きが変わったような、そんな気配があった。


「政子様……鎌倉殿が、朝から落ち着かないご様子で……」


侍女が怯えた声で告げる。


(また何かあったのね)


私は静かに頷いた。



頼朝は、庭を歩きながら何度もため息をついていた。


「政子」


呼ばれて近づくと、頼朝は妙に真剣な顔をしていた。


「昨日の比企能員のことだが……

 お前に、嫌な思いをさせたのではないか」


(あら、気にしてたのね)


「大丈夫よ。

 あの方は、鎌倉を支えてきた人。

 誇りがあるのは当然だわ」


頼朝は驚いたように目を見開いた。


「……政子。

 お前は……本当に、強いな」


(強いというより、慣れてるだけよ)


頼朝はしばらく黙っていたが、

やがて、ぽつりと呟いた。


「……私は、お前がいてくれて……助かっている」


(あら、珍しく素直)


私は静かに言った。


「頼朝さん。

 私は、あなたの力になりたいだけよ」


頼朝は完全に固まった。


「……政子。

 お前は……私の……」


(ん?)


頼朝は言いかけて、慌てて口を閉じた。


「……いや、何でもない」


(何でもなくはないわね)


その瞬間、廊下の侍女たちがざわめいた。


「聞いた!?

 鎌倉殿が政子様に“助かっている”と……!」


「やはり……政子様は恐ろしい……!」


(いや、普通の会話よ)



その日の昼。


義時が、妙に落ち着かない様子でやってきた。


「姉上……鎌倉殿が……

 “政子の意見を聞け”と……

 御家人たちに言い回っておられます……!」


(あら、また余計なことを)


義時は続けた。


「そのせいで……

 御家人たちが皆、姉上を避けております……!」


(避けられる理由がまた増えたわね)


義時は深刻な顔で言った。


「姉上……

 鎌倉殿は……

 姉上を“特別に扱っている”ように見えます」


(まあ、そうでしょうね)


私は静かに言った。


「義時。

 頼朝さんは、ただ……

 誰かに頼りたいだけよ」


義時は息を呑んだ。


「……姉上……

 あなたは……どうしてそこまで……」


「顔を見ればわかるわ」


義時はまた固まった。


(この子、毎回驚いてる気がする)



夕方。


頼朝が、妙に落ち着かない様子で部屋に入ってきた。


「政子。

 その……今日は……

 一緒に夕餉をどうかと思ってな」


(あら、珍しい)


「ええ、構いませんよ」


頼朝は一瞬で顔を赤くした。


「……っ……!」


(かわいいところあるじゃない)


その瞬間、廊下の侍女たちが震え上がった。


「見た!?

 政子様が鎌倉殿を“誘いに乗せた”……!」


「やはり……恐ろしい……!」


(いや、誘われたのは私よ)


頼朝は、侍女たちのざわめきに気づき、

少しだけ眉をひそめた。


「政子……

 お前は……どうしてそんなに落ち着いていられる」


私は静かに答えた。


「あなたが、落ち着いてほしいと思っているからよ」


頼朝は息を呑んだ。


「……政子。

 お前は……私の……」


また言いかけて、口を閉じた。


(またそれ)


私は微笑んだ。


「続きは、いつでも聞くわ」


頼朝は完全に固まった。


廊下の侍女たちは震え上がった。


「聞いた!?

 政子様が鎌倉殿の“本音”を引き出そうとしている……!」


「やはり……恐ろしい……!」


(もう好きに言って……)


私は空を見上げた。


──誤解されても、恐れられても、

私は今日も誰かの心を整える。


それが、私の生き方だから。


そしてこの日、

**頼朝の“本音”が初めて漏れた。

鎌倉の空気が、静かに変わり始めていた。**


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