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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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118/120

第118話 火の前に立つ者

三浦家の門前で、

和田の若者たちが怒号を上げた夜。


──鎌倉の空気が変わった。


昨日までの“炎の気配”は、

今日は“火事場の匂い”へと形を変えていた。


「三浦殿が怒鳴ったらしい」

「和田の若者たちは引かぬと聞く」

「これは……戦の前触れでは……?」


(鎌倉は今、

 “誰が火を止めるか”を見ている)



──三浦家の門前。


和田の若者たちが叫んでいた。


「三浦を出せ!!」

「北条を討つべし!!」

「院宣が出たのだ!!」


その前に、

義村が立ちはだかった。


刀を抜いたまま、

静かに、しかし確かに怒りを宿して。


「……三浦を……

 勝手に名乗るな」


若者たちがざわつく。


「殿……?」

「三浦殿が……出てきた……?」


義村は一歩、前へ出た。


「お前たちの暴れは……

 誰のためだ?」


若者たちが口ごもる。


「京のためか?」

「和田のためか?」

「それとも……

 “誰かに焚きつけられた”だけか?」


若者たちの顔が揺れた。


(義村……

 あなたは今、

 “怒り”でなく“見抜き”で立っている)


一人の若者が叫んだ。


「三浦殿!

 京の密使が……

 “北条を討てば恩賞を与える”と……!」


空気が凍った。


義村の目が細くなる。


「……京の密使……?」


若者は震えながら続けた。


「三浦殿が動けば……

 鎌倉は割れる……

 そう言われました……!」


義村の胸に、

冷たいものが落ちた。


(やはり……

 京は……

 私を“駒”として使うつもりか)


義村は刀を下ろし、

静かに言った。


「帰れ」


若者たちが息を呑む。


「三浦は……

 京の駒にはならぬ」


その声は、

夜の空気を震わせた。



──政所。


政子は報せを聞き、

深く息を吐いた。


(やっぱり……

 京の影が動いている)


銀座の店で、

外商が裏で客を焚きつけ、

店を揺らそうとする時の、

あの独特の“匂い”。


「義時。

 これは……

 “仕掛けられた火事”よ」


義時は息を呑んだ。


「姉上……

 では……

 和田の若者たちは……?」


政子は静かに言った。


「彼らは……

 “火をつけられた側”よ。

 問題は──

 誰が火をつけたか」


義時の顔が険しくなる。


(京……

 お前たちか)


政子は続けた。


「義時。

 この火事は……

 まだ序の口よ。

 でも──

 ここで三浦を失えば、

 鎌倉は本当に燃え尽きる」


義時は深く頷いた。


「三浦殿を……

 守らねばならぬ」


政子は灯火を見つめながら呟いた。


「……銀座の修羅場より、

 ずっと厄介ね」



──三浦義村の屋敷。


義村は刀を置き、

静かに座り込んだ。


胤義がそっと寄り添う。


「兄上……

 よく……

 怒りを抑えましたね」


義村は小さく笑った。


「抑えたのではない……

 見えたのだ」


胤義が息を呑む。


「見えた……?」


義村は静かに言った。


「京の影が……

 鎌倉を割ろうとしている。

 そして……

 私を使おうとしている」


胤義は拳を握った。


「兄上……

 どうされますか……?」


義村は目を閉じた。


「……まだ決められぬ。

 だが──

 京の駒にはならぬ」


その言葉は、

三浦家の空気を変えた。


静かに、

しかし確かに──

鎌倉の底が、

またひとつ鳴った。


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