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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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第117話 義村、怒りの声

和田の若者たちが北条家の門前で暴れた翌朝。


──鎌倉の空気が変わった。


昨日までの“火種の匂い”は、

今日は“炎の気配”へと形を変えていた。


「和田の若者たちが……三浦の名を叫んだらしい」

「三浦殿は本当に関わっていないのか」

「北条殿は……どう動くのだ」


(鎌倉は今、

 “誰が火をつけたのか”を探している)


政子は政所の縁側で、

静かに空気を吸い込んだ。


──この匂い、知っている。


銀座の店で、

スタッフ同士の不満が爆発する直前の、

あの独特の湿った空気。


「……嫌な方向に転がってるわね」


義時が振り返る。


「姉上?」


政子は低く言った。


「このままでは、

 三浦と和田が“本当に”ぶつかるわ」


義時の顔が険しくなる。


(政子殿……

 何を感じているのです……?)



──三浦義村の屋敷。


義村は、

昨夜の乱闘の報せを聞いたまま、

まだ立ち尽くしていた。


そこへ、

若い家臣たちが怒鳴り込んできた。


「殿!

 和田の若者たちが、

 三浦の名を騙って暴れました!」


「これは……

 我らを陥れる罠です!」


「殿が沈黙しているから、

 三浦が利用されるのです!」


義村の胸に、

何かが突き刺さった。


(また……

 私の沈黙が……

 鎌倉を揺らしているのか……?)


家臣たちは止まらない。


「殿!

 北条につくと宣言すべきです!」

「いや、京につくべきです!」

「殿が決めねば、三浦家は滅びます!」


義村の手が震えた。


(私は……

 何を選べば……

 誰を守れば……

 正しいのだ……?)


その瞬間──

胤義が怒鳴った。


「黙れ!!」


家臣たちが息を呑む。


胤義は兄の前に立ち、

家臣たちを睨みつけた。


「兄上を追い詰めるな!

 兄上は……

 誰よりも三浦を思っている!」


家臣たちがざわつく。


「だが……」

「殿が決めねば……」


胤義は叫んだ。


「兄上は……

 “揺れている”のだ!

 それを支えるのが我らの役目だろう!」


義村の胸が熱くなった。


(胤義……

 お前は……

 私を……

 まだ信じてくれるのか……)


だが──

その時だった。


外から怒号が響いた。


「三浦を出せ!!」

「裏切り者を討て!!」


義村の顔が青ざめた。


「……誰だ……?」


家臣が駆け込む。


「殿!

 和田の若者たちが……

 三浦家の門前に押し寄せています!」


空気が凍った。


義村の胸に、

初めて“怒り”が湧いた。


「……ふざけるな……」


家臣たちが息を呑む。


義村は立ち上がった。


「三浦を……

 私を……

 勝手に利用するな!!」


その声は、

これまでで最も強かった。


(義村……

 あなたは今、

 初めて“怒り”で立ち上がった)



──政所。


政子は報せを聞き、

静かに目を閉じた。


(来た……

 義村が“怒った”)


銀座の店で、

普段は穏やかな常連が、

理不尽な誤解で怒りを爆発させる瞬間。


その怒りは、

時に“状況を動かす力”になる。


「義時。

 三浦義村が……

 ようやく立ち上がったわ」


義時は息を呑んだ。


「姉上……

 では……

 鎌倉は……?」


政子は静かに言った。


「まだ燃え尽きてはいない。

 でも──

 ここからが本当の火事よ」


義時の顔が険しくなる。


(政子殿……

 あなたは……

 何を見ているのです……?)


政子は灯火を見つめながら呟いた。


「……銀座の修羅場より、

 ずっと厄介ね」



──夜。


三浦家の門前で、

怒号と火の粉が舞っていた。


義村は刀を抜き、

和田の若者たちの前に立った。


「三浦を……

 勝手に名乗るな!!」


その声は、

鎌倉の夜を震わせた。


静かに、

しかし確かに──

鎌倉の底が、

またひとつ鳴った。


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