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『銀座ママ、北条政子に転生す 〜善人なのに悪女と呼ばれたので、今日も鎌倉を籠絡させます〜』  作者: 双鶴


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112/120

第112話三浦家、裂ける音

義村が沈黙を続けて二日目。


──鎌倉の空気が変わった。


昨日までの“静かな恐怖”は、

今日は“疑念の渦”へと形を変えていた。


「三浦殿は……なぜ沈黙している」

「胤義殿は潔白とされたのに……」

「沈黙こそ、最も危うい……」


(鎌倉は今、

 “三浦が何を考えているか分からない”ことを恐れている)


政所では、御家人たちがざわついていた。


「三浦殿は……京と通じているのでは」

「いや、義村殿はそんな男ではない」

「だが……沈黙は裏切りより重い」


義時は歯を食いしばった。


(義村殿……

 なぜ何も言わないのです……)



──三浦義村の屋敷。


義村は、

暗い部屋の中で膝を抱えていた。


外の怒号は消えた。

だが──

その静けさが、

義村をさらに追い詰めていた。


「……私は……

 鎌倉に……

 必要とされているのか……?」


そこへ、

家臣たちが押し入るように入ってきた。


「殿!

 このままでは三浦家が疑われます!」


「殿が沈黙しているから、

 鎌倉が揺れているのです!」


「殿が決めねば、

 三浦家は滅びます!」


義村の顔が歪んだ。


「……黙れ……

 私は……

 鎌倉を裏切っていない……

 胤義も……

 裏切っていない……!」


しかし──

家臣たちは止まらなかった。


「殿、“裏切っていない”では足りませぬ!」

「“裏切らぬ証”を示さねば、

 鎌倉は三浦を捨てます!」

「殿が動かねば、

 我らが動きます!」


義村の心が、

音を立てて揺れた。


(なぜだ……

 なぜ……

 私の家臣まで……

 私を追い詰める……?)


そこへ、

弟の胤義が駆け込んできた。


「兄上!」


義村は振り返った。


「胤義……

 私は……

 鎌倉に……

 必要とされているのか……?」


胤義は首を振った。


「兄上。

 鎌倉が兄上を疑っているのではありません。

 “京が鎌倉を揺らしている”のです!」


義村の目が揺れた。


「だが……

 民は……

 私を裏切り者と呼ぶ……

 御家人たちも……

 私を疑う……

 私は……

 何を信じれば……

 よい……?」


胤義は義村の手を握った。


「兄上。

 信じるものは一つでいい。

 “兄上は鎌倉を裏切らぬ”という事実です」


義村の目に涙が浮かんだ。


(義村……

 あなたは今、

 “裂ける音の中心”にいる)


そこへ──

義時が現れた。


「やめよ!」


空気が止まった。


義時は家臣たちの前に立った。


「三浦殿を責めるな。

 責めるべきは……

 “京の影”だ!」


家臣たちが息を呑んだ。


義時は続けた。


「三浦殿は裏切っていない。

 胤義殿も裏切っていない。

 疑いは……

 “京が作ったもの”だ!」


家臣たちの空気が揺れた。


義村は震える声で言った。


「義時殿……

 私は……

 どうすれば……

 鎌倉を……

 守れる……?」


義時は静かに言った。


「義村殿。

 あなたが立ち続けること。

 それだけで……

 鎌倉は守られます」


義村の目に涙が浮かんだ。


(義村……

 あなたは今、

 “壊れる寸前”で踏みとどまっている)



──その頃、京。


後鳥羽院は報告を聞き、

静かに笑った。


「三浦家が割れたか。

 良い兆しだ」


侍従が言った。


「しかし……

 義時殿と政子様が支えております」


後鳥羽院は扇を閉じた。


「ならば──

 “支えを折る”」


行成は息を呑んだ。


(政子殿……

 京は本気で“鎌倉の柱”を折りに来る)



──夜。


政子は灯火の揺れを見つめていた。


三浦家は、

ついに内部から割れた。


筆を取る。


「……義村。

 あなたの心は、

 今、最も折れやすい場所にある。

 だが──

 あなたが立ち続ける限り、

 鎌倉はまだ壊れない」


筆を置いた。


静かに、

しかし確かに──

鎌倉の底が、

またひとつ鳴った。


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